夢オチなのに、学園パロディにはまりそうです。
PoDはさすがにネタ切れですが、学園パロディでもう少し書けるかな?

目次
プライベート・リアクション

怒りの矛先
 記念すべき初プラリアはレーナさん&まじまさんとのコラボです。
 必ず
 1.ウェインの悪戯(竜の翼に憧れて/レーナさん)
 2.将を射んとすれば馬を射よ(PoD Notes/間島さん)
 を読み、さらに
 4.夜の帳がおりて・・・(竜の翼に憧れて/レーナさん)
 5.虎穴に入らずんば虎児を得ず(PoD Notes/まじまさん)
 6.雨降って地固まらない(PoD Notes/まじまさん)
 も読んで下さい。

ラケルタ
 ブレンダのワイヴァーンがなぜ「ラケルタ」という名前かのエピソード。

ジェットコースター
 人の「死」について悩むブレンダ

無題
 ブレンダが圭さんを好きになる経緯

ガルシア家の事情1
 ブレンダの勲章を喜ぶブレンダの父と兄たち

お風呂の事情
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア(敬称略・順不同)
 三教の風呂事情を色々考察しながらのプラリアです。そしてアルノーさんの受難その一。

鎧の事情
 登場PC:ブレンダ、ウェイン、シェーン、シンシア、エルシトリン(敬称略・順不同)
 鎧を着るのって大変だよねという話。

部屋の事情
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、キキ、アニス(敬称略・順不同)
 読書が趣味のアルノーさんをネタにした話。なぜかちょっぴり続いちゃいました。アルノーさんの受難その二、序章。

5.12事件
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア、キキ、アニス(敬称略・順不同)
 「部屋の事情の」の続きです。アルノーさんの受難その二、本編。題名はアルノーさんの最後のセリフから。

ラドラフォーン裁き
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア、キキ、アニス(敬称略・順不同)
 登場NPC:ベアトリス
 「部屋の事情」「5.12事件」の後日譚です。

小ネタ
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア(敬称略・順不同)
 「部屋の事情」「5.12事件」「ラドラフォーン裁き」の後日譚です。

娯楽について
 ブレンダの過去話。旅芸人アルヴァとの悲しい話です。

郵便について1
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア、キキ、アニス、ティアナ(敬称略・順不同)
 「部屋の事情」「5.12事件」「ラドラフォーン裁き」からちょっとつながった話。

衝動的に
 「郵便について」の後日譚。NPCのベアトリスとフロルヴァーナの会話だけというプラリア?なプラリアです。

ゆうれいみたり(前編)1 
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン、シンシア、キキ、カカンバー(敬称略・順不同)
 登場NPC:一也、(シュテファン公爵)
 NPCを積極的に登場させた意欲的(?)な作品。カカンバーさんが初登場です。

焼き芋
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、シェーン(敬称略・順不同)
 まじまさんの絵から発想した妄想プラリアです。なんかふざけている話だけでなく、こういう日常業務的な話も書きたいなぁと思う今日この頃。

バレンタイン狂想曲15(前編)5(後編)エピローグ NEW
 登場PC:ブレンダ、アニス、アルサリーズ、アルノー、ウェイン、エルシトリン、カカンバー、キキ、シェーン、シンシア、ティアナ、マイネ(敬称略・順不同)
 登場NPC:一也、シュテファン公爵、真里亜、グランダル、リリア
 女の子総出演プラリアです。おかげで捏造200%状態。本当は1日目から毎週UPして、バレンタインで「完」とするつもりだったのですが、グダグダ展開に。チョコレートの歴史や製造方法を調べるのに意外と手間取りました。何かと参考になった「お菓子・パン全集」に感謝。参考サイトや文献は機会がありました折に、お勧めチョコレート専門店の紹介とともに行いたいと思います。

エイプリルフール NEW
 登場PC:ブレンダ、アルノー、ウェイン、キキ、シーユイ、シェーン、シンシア(敬称略・順不同)
 登場NPC:ベアトリス
 本当はエイプリルフールにUPするつもりでしたが、ぎりぎりで間に合わず時間操作しました。
 まさかの学園パロです。PoD自体学園物なのでかなりすんなりと書けましたが、竜だけはどうしたらいいか分からなくて強引に「夢オチ」にしました。一応、地理・世界史教師=公爵、生物・物理教師=リリア、事務員=エミリィ、食堂のおじさん=親方という設定もあったのですが出せずじまいでした。ベアトリスは、私は何となくのイメージで英語教師と考えているのですが、体育教師や数学教師も捨てがたくて悩んでいます。いい案があれば教えてください。

おひつじ座おうし座ふたご座かに座しし座おとめ座てんびん座さそり座いて座やぎ座みずがめ座うお座

オリジナル小説
アーシャの冒険1
「遅刻遅刻~!!」
 首元に揺れる赤いスカーフと同じ色の赤い髪をたなびかせて、少女は駆けていた。
 そんな少女の周りを薄紅色の花吹雪が舞う。
 それはさながら、春のつむじ風の化身のようであり、道行く人は思わず振り返っていたが、少女には全く自覚はない。とりあえず目の前の門が閉まっていくことのみが少女の関心ごとだ。
「うひゃぁ~、待って待って待って~!!」
 待ってと言われて待ってもらえるわけではないが、少女は何とかぎりぎり閉まっていく校門の脇をすり抜けた。
「ふぅ、ギリギリセーフ!」
 大きく安堵のため息を付いた時だった。
「もうちょっとだったのにぃ」
 少女の後ろで気の抜けた声がした。
 少女が振り返るとブラウンのツインテールが校門の向こうで揺れていた。
「シーユイくん、あとちょっと、あとちょっとだったのだからおまけしてよぉ」
 ツインテールを傾げて少々子供っぽい言葉で頼み込んでいる少女に風紀委員はにべもなく言い放つ。
「だめだめ。早くそっちへ並んで」
「え~、シンシアちゃんは胸が大きいから走るのに邪魔になるんだよぉ。その分だけおまけしてくれてもイイじゃない?」
 ムギュと豊満な胸を制服ごしに寄せる。が、セーラー服ではどうも効果は半減らしい。
「シンシア・オレンジフィールド、これで遅刻10回ですね。ペナルティがあるので職員室へ行って下さい」
 シーユイは事務的にシンシアに告げた。
「うそぉ!」
 そう叫んだ後、シンシアは目の前の赤い髪の少女を見た。
「いいなぁ、ブレンダは」
「堪忍な!」
 右手を拝むようにシンシアへ立てた後、ブレンダは一目散に教室へと向かった。
 校門をクリアしてもまだ教室の関門がある。ホームルームの先生が来る前に教室にたどり着いていないと、そこでも遅刻を取られるのだ。
 ブレンダはまさしく飛ぶように教室へと駆けた。


 靴からスリッパへと履き替えるのもそこそこにブレンダが教室へ飛び込むと、
「セーフ!」
 ブレンダと同じく赤い髪の少女が両手を床と平行に開いて、セーフのポーズをとった。
「シェーン!」
「先生、渡り廊下を通ったところだよ。ぎりぎりセーフだね」
「ホンマ!」
 シェーンの言葉に目を輝かせたブレンダだが、すぐに瞳を曇らせた。
「そのためには尊い犠牲が……」
「犠牲?」
「シンシア」
 アーメンと十字を切るブレンダの後ろで苦笑が聞こえた。
「シンシアは確か通算10回目だよね。こりゃ、職員室行きかな?」
 人事のようにのんきに言う声に振り返れば、短く切りそろえた金髪が映った。
「ウェイン、人事ちゃうで。あんたもかなりやばかったんとちゃう?」
 ブレンダの言葉にウェインはちっちっちっちと人差し指を横に振った。
「ところが、私はもう大丈夫なのです」
 なぜか余裕綽々でそう宣言するウェインにブレンダは首を傾げる。そんなブレンダにシェーンが少し恨めしげに報告した。
「どこかに抜け道を見つけたみたいなの。なのに、ぜんっぜん教えてくれないんだよ」
「ふ~ん」
 シェーンの言葉にブレンダは片眉を上げてウェインを見た。
 その瞳の奥に悪戯っぽそうな光が輝く。
「う、なんか嫌な予感が……」
 ウェインが思わず後ずさりをした時である。
「お三方、そろそろ席に着いたほうがいいよ。先生来たよ」
 つんつんと髪が立つぐらい短く金髪を刈った少女がブレンダの制服を軽く引っ張った。
 ハッと廊下を見ると長身の影が廊下の窓に映っている。
「やば!」
 慌てて席に付いた後、ブレンダは後ろの少女にお礼を言った。
「サンキュな! キキ!」
「どういたしまして」
 小さくキキが答えるのとガラリと教室のドアが開くのは同時だった。
「起立!」
 学級委員のアルノーの声が教室に響く。
 がたがたと椅子を引きずる音をBGMに蒼い髪の長身の女性は、真っ直ぐに教壇へと向かった。
「礼!」
 キリリと引き締まった口元は意志の強さをピンと伸びた背筋は律された姿勢を表す。
「着席!」
 生徒を見つめる瞳は鋭く、そしてどこか温かだった。
「先週から新学期が始まったが、気がたるんでいるものが少々いるようだな」
 蒼髪の女性ベアトリスは厳しい瞳をブレンダたちに向けた。ブレンダは慌てて首をすくめた。
「お前達は今年受験生だ。夏まではあっという間だし、受験はすぐそこだ。一瞬の気の緩みも許されんぞ」
 厳しくそう言ってから、ベアトリスは頬を緩めた。
「とは言えだ、多少の羽目ははずした方がいい。ということで、来週行われる球技大会について作戦会議始めるぞ!」
「おう!」
 ベアトリスの声にみな歓声を上げる。がたがたと机を会議用に並べなおす様は手馴れたもの。ベアトリスのクラスはこの団結力とノリの良さが売りだった。

「ふああああ」
「大きなあくび」
 ブレンダのあくびに隣を歩くシェーンがふふふと笑った。
「やって、ウェインが貸してくれたゲーム夜中までやってて、ほとんど寝てないんやもん」
「あ、あれ、面白かっただろ。何面までクリアした?」
「6面」
「うわぁ、進んだなぁ」
 感心したように言ったウェインにブレンダは得意げに笑った。
「睡眠時間は犠牲になったけどな」
「まったく、君たちは受験生の自覚があるのか」
 大きくため息を付くアルノーをブレンダは軽く睨んだ。
「球技大会の作戦をウキウキと立てている人に言われたくないんやけど」
「あ、あれは……」
 慌てて言い訳を言おうとしたアルノーの言葉をシェーンがさえぎった。
「あ、一也君だ!」
 そう言ってグランドで陸上部の練習をしている一也に手を振るシェーン。
「一也くーん! 頑張ってねー!」
「陸上部は夏に最後のインターハイがあるから、大変やね」
 シェーンと一緒に一也に手を振ったブレンダは「あっ」と運動場の端っこを見て声を上げた。
「圭さんや。あの人、あそこで何してるんや」
 飄々とした風体の圭がぶらぶらと運動場を歩いていた。
「球技大会の下見とか?」
「そんな人間ちゃうやろ。よし、ちょっと聞いてみよ」
 そう言ったが最後、一目散に圭へと走っていくブレンダをアルノーとウェインは苦笑しながら見送った。
「春だねぇ」
 ウェインは運動場を取り囲む金網に張り付いて一也を応援しているシェーンと圭に邪険にされながらもまとわり付いているブレンダを眺めながらのんびりと言った。
「人事だな。ウェインに春はないのか?」
「そういうアルノーこそ」
 二人けん制しあうように目を交し合う。
 それから互いに苦笑しあった。
「今年1年もアルノーの顔を見て暮らすのかぁ」
「それはこっちのセリフだよ。とはいえ、今年は受験生だからな。楽しみは大学へ行ってからかな」
「とか言っていると、大学の4年間も彼女無しで過ごすことになるぞぉ。アルノーは『いい人』タイプだから、のんきに構えていると一生できないね」
「そういうウェインは、『悪友』で終わるタイプだな」
「そうかなぁ、ウェインくんは好みを変えるともてると思うよぉ」
 ズシッと何か重たいものがアルノーの背中にもたれかかる。ぎょっとして振り返ると、シンシアの顔が肩にあった。
「シ、シンシア!?」
「あと、アルノーくんは『いい人』じゃなくて『おくて』だね」
「だ、誰だって、こういう状態になれば動揺するって」
 真っ赤になって口ごもるアルノーをシンシアは面白そうに、ウェインはちょっとうらやましそうに見た。
「シンシア、私にはしないの?」
「うーん、フロルヴァーナ理事長がタイプだっていう男の人にはしないのぉ」
「ちぇ!」
 舌打ちしてからウェインは何かに気付いたように視線を上に上げてからニヤリと笑った。
「ま、アルノーの場合はどっちかというとコレが最大の原因かな」
 そう言ってから上を指差す。
 ウェインの指先をなんとなくたどるアルノー。
 とたんにさぁっと顔から血の気が失せた。
 そこにはなぜか巨大な爬虫類の顔があった。
「オ、オルタァ!」
「さ、逃げるよ、シンシア!」
「りょうかあ~い!」
 一目散に逃げるウェインとシンシア。
 そんな中、アルノーの悲痛な声が風に乗って流れた。
 「何で、現代日本に竜がいるんだぁ~!!」 


「・・・・・・ていう夢を見たんやけど」
「ブレンダ、一也君の話に影響されすぎ」
「言っていいか、アルノー」
「どうぞ、ウェイン」
「さぁ、皆さんもご一緒に」

 「夢オチかい!!」 
取り急ぎ、言い訳を

最後の3つ(5-1、5-2、EP)は大慌てで書いて、大慌てでUPしたので
まったく校正をしていません。 
誤字脱字や、表現の不備、会話の表現の不備などは後日あらためて直します。
文章やストーリーが変わるということはないですが、気になる方はもう少しお待ちください。
(完成したら、お知らせします)

あと、EPでブレンダが歌っている歌はロッシーニの『セビリアの理髪師』で冒頭部に歌われる歌です。
本当は男性が女性に向けて歌っている歌なので、
イタリア語の方はわたしが男性名詞、あなたが女性名詞となっています。
けど、一応ブレンダが歌う歌ということで、
日本語訳の方はその辺をちょっとぼかし、語尾を女性っぽくしています。
どういう情景で歌われるのかは、ちょっと恥ずかしくて言えませんが、
初めて聞いた時 「甘!」 と思ったぐらいあま~いメロディです。
よっしゃ! ぎりぎり!
とりあえず、取り急ぎ

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆

当日

「なんだぁ、そんなことならリリアさんに言ってくれれば何とかできたかもしれないのに~」
「公爵さんのチョコレート見て、そない思いました」
 ブレンダはそう言ってふぅっと大きくため息を付いた。
「だね」
 リリアはうふふと笑いながら、目の前のチョコレートケーキの固まりにフォークを入れる。それから大口を開けてほおばると、幸せそうに微笑んだ。
「おいし~い。親方の新作ケーキ、さいっこうに美味しいね」
「天上の食べ物か、思う味やろ」
「うん」
 大きくうなずいてから、リリアは次の固まりへとフォークを進める。それからふと気づいたようにブレンダを見た。
「ブレンダたちももらった?」
 リリアの問いにブレンダはうなずいた。
「公爵さんのおかげでチョコレートが一杯手に入ったからね。まぁ、訓練生は大きなケーキを切り分けて……やけど。一人用のケーキは隊長さんとリリアさんとエミリィさん、それから女王さんの分だけや」
「シュテファン公爵はもらえなかったの?」
 リリアの問いにブレンダは小さく吹き出した。
「アニスさんが気い使ってあげてたけど、ま、しばらくは落ち込んではるやろな」
「あははは」
 ブレンダにつられるようにリリアは笑う。
「でも、そのシュテファン公爵のおかげで助かったよね。そっかぁ、じゃあ、ベティさんも今頃これ食べているかな?」
「それはアルノーさん次第やな。ま、あの人は真面目やからもう渡してはると思うけど……」
 そう言ってブレンダはハッとしたように立ち上がった。
「そや、忘れるとこやった。リリアさん、すんまへん。うち、あげなあかん人がまだおったんや」
「う~ん? 好きな人~?」
 リリアはにんまり笑ってブレンダが持っているかごを指差した。
 だが、ブレンダは右手を横に振った。
「ちゃうちゃう。これは義理チョコ」
「義理……え? なんて?」
「義・理・チョコ。真里亜ちゃんから聞いたんやけど、ニホンでは好きな人にあげるチョコレートは『本命』、好き言うわけではないけどちょっと仲良い人にあげるチョコレートを『義理』というらしいねん。うちが初め言った、『お世話になった人に感謝の意味を込めて』言うのは『義理』の方らしいねん」
「へぇ~」
 ブレンダの説明をリリアは目を丸くして聞いていた。
「でや、今回のバレンタインには男性たちに大変お世話になったから、三教の女性全員のお礼を込めて『義理チョコ』を配ることにしたんや」
「ふ~ん、じゃあ、これも『義理』かなぁ?」
 ブレンダの説明にリリアは懐から別のチョコレートを取り出した。
「リリアさん、それ! 誰から!?」
「うふふ。秘密」
 にっこりと謎めいた笑みを浮かべ、リリアはケーキをほおばった。
 そんなリリアを少しの間ブレンダは見つめていたが、どうにも名前を明かしてくれなさそうなことを気づき、
「ほな。うちはそろそろ行くな」
 とリリアに言った。
「うん。ブレンダも頑張って!」
 親指を立ててエールを送るリリアにブレンダも同じく親指を立てて応えた。

 リリアと分かれてすぐ、ブレンダは茶色の髪の男性を見つけた。
「アルノーさんやん。どやった? 隊長さん」
「ああ、ブレンダ。喜んでいたよ。もう、目を輝かせて子供みたいな顔で」
「へぇ~、喜んではったんや~、ふ~ん」
「………ブレンダ? 妙に引っかかる言い方だな?」
「べっつに~。 あ、そや、アルノーさん」
 ブレンダはごそごそと腕に引っ掛けた籠から可愛らしくラッピングされたチョコレートを取り出した。
「はい。チョコレート。アルノーさん、まだやろ?」
「えっと、確かにまだだけど……これは、一体……?」
 ブレンダに渡されたチョコレートを見つめて何度も目を瞬かせているアルノーの前でブレンダは人差し指を立てて横に振った。
「ちゃうちゃう、勘違いせんといて。これは『好きや』いうチョコレートやなくて、『ありがとう』の方や。一応、三教の女性全員からやで」
「ああ、そう」
 アルノーは若干ホッとしたような、少しガッカリしたような複雑な表情をして受け取った。
「だけど、僕は味見だとか何だとか色々もらっているんだけどな。いいの?」
「かまへんかまへん。材料は一杯あるんやから」
 ブレンダの言葉にアルノーは苦笑した。
「シュテファン公爵は大丈夫なかな」
「大丈夫やろ。あの人意外と打たれ強そうやで」
 あっけらかんと言うブレンダにアルノーは再度苦笑した。
「あ、もし、いらんのやったら、誰かにあげたらどうや?」
「え?」
 キョトンとしたアルノーにブレンダはにんまりと笑った。
「いるやろ。アルノーさんにも一人ぐらい。日ごろの感謝を言いたい人が」
「えっと、そりゃ……」
 言いよどむアルノーににや~とチャシャ猫のような笑みを残してブレンダは去って行った。

「あ、ウェインさ~ん」
 角を曲がってすぐにブレンダは綺麗に切りそろえられた金色の髪を見つけた。
 だがウェインの方はブレンダに声をかけられても手元を見つめてさかんに首を傾げていた。
「ウェインさん!」
「え? あ、ブレンダ」
 バンとブレンダに背中を叩かれてハッと気付く始末だ。
 そんなウェインの様子にブレンダは首をかしげてウェインの手元を見た。
 そこにはブレンダがアルノーにあげたのと同じ包みのチョコレートがあった。
「うわ! ウェインさんも隅に置けへんなぁ。誰にもろたん?」
 興味しんしんに訊くブレンダにウェインは困惑しきった顔で答えた。
「エルマー?」
「え!?」
 ズザッとブレンダはウェインから身を引き離した。
「ウェインさんとエルマー君って……」
「ち、違う!」
 ブレンダの疑いをウェインは慌てて打ち消す。
「余ったんだそうだ。エルマーはほとんどの女性からチョコレートをもらってさすがに食べきれないからって、私にくれたんです」
「なるほど」
 ブレンダは一応納得してから、不思議そうに首を傾げた。
「それなら、なんでじっとそれ見つめていたん?」
「え? いや……」
 ウェインは一瞬言いよどみ、またもや困惑したような表情で手元のチョコレートを見た。
「それ以上の意味って……無いですよね?」
「え!?」
 またもやズザッとウェインから身を引き離すブレンダ。
「ウェインさんてエルマー君のことを……」
「ち、違います!」
 またもや大慌てでブレンダの誤解を打ち消すウェイン。
「彼がもし、私への感謝の意味を込めてくれたとしたら、感謝されるようなことがあったかなと悩んでいたんです」
「ああ」
 ブレンダは再度納得し直した。
「エルマー君、結構義理堅い人やからなぁ。ウェインさん的に大したことや無くても、本人はむっちゃ感謝していることがあるかもしれへんな」
「ですよね~。何だろうな、一体?」
 ブレンダの言葉にウェインは再度悩み始めた。
 そんなウェインをおいて、ブレンダそっとそこから離れた。
 離れ際に振り返り、まだ悩んでいるウェインを見て首を傾げる。
「まさか、ホンマにエルマー君が?」
 それからぶんぶんと首を振った。
「ないない。ただの感謝や感謝。それしか考えられへんわ」

「ヤッホー、ブレンダ。首尾はどう?」
「ヤッホー、シェーン。ぼちぼちやな」
 中庭でシェーンとばったり出会い、お互いエール交換をする。
「どうなん? シェーンは? 『本命』までたどり着けたか?」
「えへへへ。次のチョコレートは『本命』なんだよ。ブレンダは?」
「うちはまだまだや。ちょっとリリアさんのところで居座りすぎたわ。そもそもその『本命』すら見あたらへんのやけどな」
「う~ん、そういえばさっきから見当たらないね。どこに隠れているんだろ?」
「ま、義理チョコ配りながら探すわ。そんならね」
「うん。またね。お互い、がんばろ!」
「うん。がんばろ」
 そう言って手を振り合い分かれていく。

「う~ん、おらへんなぁ」
 ブレンダは竜の厩舎をのぞいてから首を傾げた。
 目当ての人物がぜんぜん見当たらないのだ。
「おやぁ、ブレンダじゃない。どうしたのぉ?」
 声をかけられて振り向くと、三教の中で女王に次ぐスタイルを持つシンシアがいた。
「シンシアさん。もうチョコレートは配り終わったん?」
「とっくに。今、隊長から夜の見回りを指示されたとこ。ブレンダはまだなのぉ?」
「う~ん、最後の一人が……なぁ」
 困ったように首を傾げるブレンダを見て、シンシアはふふふと笑った。
「こういう騒がしいのは嫌いみたいだもんねぇ」
「そやから、こういうへんぴなトコ、探していたんやけどな。シンシアさん、見かけへんかった?」
「そうねぇ、かなり前の話だけど、宿舎の方をぶらぶらしているのは見かけたけどぉ?」
「そうなん? ありがと!」
 シンシアの言葉を聞いてもうダッシュするブレンダ。その背にシンシアが声をかけた。
「かなり前よぉ!」
 その言葉が聞こえているのかいないのか。ブレンダの背はあっという間に見えなくなった。

「こんなトコにおったんかぁ」
 バルコニーの手すりに悠然と腰掛けている男性を見て、ブレンダははぁと大きなため息を付いた。
「遅かったな」
 バルコニーの男性はまるでブレンダが来ることを知っていたかのようにそう言った。
「誰かさんがどこかに雲隠れせんかったら、もっと早く来てるって」
 恨めしげに男性を睨みながらブレンダは彼に近づいて行った。
「言っとくが、俺は甘いものは苦手だ。あと、こういうイベントごともな」
「そやろなと思った」
 ブレンダはそう言うと脇に抱えているマンドリンを取り出した。
「やから、甘くないもんにした」
 ブレンダが取り出したマンドリンを見つめて男性は片眉を上げた。
「それは食べれんぞ」
「あははは。圭さん、冗談きついわー」
 ブレンダは楽しそうに笑うと圭の横へ腰掛けた。そして足を組み、マンドリンを構える。軽く音合わせをすると、コホンと咳払いした。
「一曲、歌わせてな」
 そう断って、小さく圭にウィンクするとブレンダはマンドリンを弾き始めた。

「Ecco, ridente in cielo
 spunta la bella aurora,
 e tu non sorgi ancora
 e puoi dormir cosi?
 Sorgi, mia dolce speme,
 vieni, bell'idol mio;
 rendi men crudo, oh Dio,
 lo stral che mi feri.
 Lo stral che mi feri.
 Lo stral....」

 歌い終わると、ぴょこんとバルコニーの手すりから下り、ブレンダはニカッと圭に笑いかけた。
「外国の歌やから何言っているかわからへんやろけど、メロディはええやろ?」
「ああ」
「これ、一応バレンタインのプレゼントな」
 にっこり笑うと、ブレンダはくるりと身を翻し風のように去って行った。
 ブレンダが去った後には呆然としている圭だけが取り残された。
「あいつ、俺らが外国語も解るって覚えているのか?」
 首を傾げたあと、圭は苦笑した。
「俺は、甘いものは苦手だと言っただろ……」

「ほら 空が微笑むように
 美しい夜明けを迎えたわ
 でもまだ あなたは目覚めずに
 安らかに眠っているの?
 現れてちょうだい 甘い希望
 おいで わたしの愛しい人よ
 冷たくしないで
 わたしの心は 愛の矢に射抜かれた」



おまけのおまけ
後日

「なぁ、アルノー知っているか?」
 バレンタインの翌日、ウェインはこそこそとアルノーに耳打ちした。
「何が?」
「一也君から聞いたんだけど、バレンタインデーの翌月にホワイトデーがあるそうですよ」
「へぇ。それで?」
「それで、この日はバレンタインにチョコレートをもらった男性が女性にお返しをする日だそうです」
「へぇ。便利だね」
 ウェインの質問にアルノーはうなずいた。確かに、もらってばかりでは目覚めが悪いなと思っていたところだったのだ。だが、お返しする日が決まっているのならば、もらうことに気兼ねしなくてすむなとそう思った時だった。
 ウェインがチチチと人指し指を立ててアルノーの目の前で振った。
「便利じゃないですよ! 一也君から聞くところによると……」
 ウェインは言葉を切り、次の言葉を強調するためにじっくりとためた。
「お礼は三倍返しだそうですよ」
「え!?」
 ギョッと目を見開くアルノー。
 そんなアルノーにウェインはうなずき返した。
「え、えっと……それは……」
「内緒にしておきましょう」
 困ったように視線を泳がすアルノーにウェインはきっぱりと告げた。すでに一也には口止めをしているらしい。
 ウェインの言葉に慌ててアルノーがうなずいた時だった。
「へぇ」
「いいこと聞いちゃった」
「三倍返しかぁ」
 振り向くと、にんまりと笑っているブレンダたちがいた。
 ブレンダはアルノーとウェインの顔を見ると、にま~と笑って言った。
「ホワイトデー、楽しみにしてるで」

To be Continued... 
 当社比1.5倍になった部分
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5日目(後編)  

 そして数時間後、またもや厨房から出てきた三人はかなり複雑そうな表情をしていた。
「できた事は出来たのですが……」
 アニスがおずおずと差し出したものは、丸い泥の玉をこねたものだった。
「これ?」
 ブレンダたちは首を傾げてそれを眺めてから、一也の方を振り向く。
 みなの視線に押されるようにして一也はそのチョコレートを見つめた。
「えっと、こんな感じであってるけど……真里亜ちゃん……その」
 困ったように真里亜を見る一也。チョコレートは一応固まってはいるが、触るとべたべたしていてぐにゃぐにゃと形を変えた。
「ごめんなさい!」
 真里亜は慌てて頭を下げた。
「私、これ以上、どうしたらいいか分からないんです。本当は、チョコレートを作ったことも無いし。テレビで聞きかじった知識しかないんです。だから……だから……」
 瞳を涙で潤ませながら謝る真里亜の肩を優しくエルシトリンが抱いた。
「十分助かったよ。液体のチョコレートがここまで固まったんだ。真里亜の知識は十分役に立ったよ。ありがとう」
 うつむいたままぶんぶんと首を振る真里亜に、ブレンダたちは順番に声をかけていった。
「そやで。チョコレートは飲むもんや思っていたけど、こうやって固まるんやって分かったし」
「そうそう。真里亜ちゃんがいなかったらココアがチョコレートだと思っていたもの」
「あるいは冷凍チョコレートがね」
「これから研究を重ねるとあるいは固まるかもしれないしね」
「そうだな、試してみる余地はあるな」
「まぁ、それには時間も材料もないが、なんとかなるさ」
「みなさん……」
 真里亜の瞳から今度は別の涙があふれようとしていた。
「とまぁ、そういうわけで、こんなものを作ってみたんだが、どうだ?」
 親方がずいとチョコレート色のケーキをみんなの目の前に出した。
 いや、それはそのままチョコレートケーキだった。
「カカオをスポンジに混ぜてみたら、なかなか面白い味になったのでな。ただし、このままでは苦すぎるのでアプリコットジャムを間に挟んでこのチョコレートソースをかけてみたんだが」
 そう言いながらケーキを切り分け、みなに配る。
 みな、一口食べて目を丸くした。
「お、美味しい~!!」
「な、何これ? 神業!?」
「アプリコットの甘さとチョコレートの苦味が程よく混じって」
「女王に献上してもええ位の一品やで」
「親方、これ、もう一回作れる?」
「ああ。だが、もう材料が無い。あとケーキ一つ分だな」
 親方の言葉にみな顔を見合わせた。
「ケーキ一つぶんかぁ」
「誰に渡すか、というかどうやって分けるか、だな」
 普段、甘いものは苦手だという顔をしている男性陣もこのときばかりは微妙な表情をした。
 チョコレートはそもそもめったに口に入らない代物である。これを機会に食べたいところだ。
 そして、親方が作った新作ケーキはイスファルドはもとよりアヴィオン半島、さらには大陸にすらまだ存在していないお菓子だろう。女の子達が絶賛する『女王に献上してもいい一品』のご相伴には預かりたい。
 だが、そもそもチョコレートは何のために必要だったかというと、ブレンダたちが提唱した『新しいルペルカリア祭=バレンタイン』のためだ。女の子が男の子に『愛の告白』をするアイテムとしてチョコレートが必要だったのだ。
 とすると、声を大にして『欲しい』と言うのはなんとなく気恥ずかしくて言い出せない。なんだかそれは、『女の子に愛を告白されたい』と言っているように見えるからだ。
「もらえる人ともらえない人がいるということだよね」
 ウェインの言葉がなんとなく男性陣たちの脳へじんわりと染みとおった。
 なんとな~く、気まずい空気を漂わせている男性陣たちとは逆に女性陣たちはキャワキャワと相談をしていた。
「うん。やっぱりそれが一番だよね」
「そうだね。一番喜ぶと思うし」
「とすると、誰が渡すぅ?」
「それは、やっぱり……」
「ええ~、それは無いわよ!」
「ああ~、でも適任と言えば適任やで」
「そうそう」
「そんなことない! 絶対嫌よ!」
「多数決取るか?」
「賛成の人~! は~い! はい、決定」
「うううううう。許せない~」
 そしてくるりと振り返った女性達はまっすぐにアルノーを見つめた。
「というわけで、全会一致でアルノーさんに決定しました!」
「はい!?」
 自分を指差し驚くアルノーとピキッと空気にわずかに緊張を走らせる残りの男性たち。
「僕って、何が?」
「隊長にケーキを渡す係」
「え?」
 思いもかけない言葉に目を白黒させるアルノーに女性たちはにっこりと笑った。約1名、にらんでいる女性もいるが。
「隊長、甘いもん好きやろ?」
「隊長にはいつもお世話になっていますから」
「親方の新作ケーキは」
「全会一致で隊長さんに渡すことが決まったの!」
「えと、いいの? 親方のケーキ、あと一つしか作る余裕ないんだろ?」
 とりあえず確認のためにそう聞いてみたが、ティアナにものすごい形相でにらまれただけだった。
「あなた、お姉さまに渡すのが嫌だとでも!」
「え、いや、そうではないけど……」
「隊長は甘いものが好きですからね」
 戸惑っているアルノーにウェインが助け舟を出す。
「『おすそ分け』……なんてしないと思いますよ」
 ウェインの言葉に女性たちは顔を見合わせた。
「う~ん、それはありうるかもしれんけど……なぁ?」
「ええ。みなさんに配っても全員にいきわたるほどにはできないのです」
「不公平になるくらいなら、一番喜んでくれる人にあげるほうがいいでしょ」
「隊長には一番お世話になっているしぃ」
「お姉さまにあげるのが一番いいとみんなで決めたのです。……それを」
 ぎりぎりとティアナは歯軋りした。
「嫌なら私が渡したいのに!」
 そんなに渡したいなら何も僕でなくても、と思ったアルノーはキキの次の言葉で考えを改めた。
「ティアナが渡したら、三教の総意ってことにならないだろ」
「訓練生の代表ということになったら、やっぱりアルノーだろということになったのだ」
「そういうわけか。だけど、なおさら僕でいいのかい?」
「嫌なら私が……」
 恨めしそうにアルノーをにらむティアナの口をふさいで、ブレンダたちは大きくうなずいた。
「もちろん!」
「だけど、バレンタインは……」
「仕方ありませんよね。当初の予定通り、ケーキかクッキーを焼くことにしましょう」
「あ、それなら、私いい案がある!」
 アニスの言葉にはいは~いとシェーンが手を上げた。
「フラッペ (筆者注:イタリアの揚げ菓子) にあまったチョコレートソースをつけたら美味しいんじゃないかな?」
「あ、それ、あたしも思った」
「でしょ~」
「まったく、公爵さんがもっとカカオをどばーとくれたらよかったのに」
 ブレンダがそう悪態づいた時だった。
「我輩がどうしたというのだ」
「うげ!」
 ひょっこりとカイザル髭もりりしいシュテファン公爵が顔をのぞかせた。すでに親方は万能包丁を構え臨戦態勢だ。
「何しに来た、変態」
「何しに来たは無いだろう、マイ・スイートハニー」
「消えるか?」
 すちゃと万能包丁を公爵の鼻面に突きつける親方。
「待て待て、我輩はプレゼントを持ってきたのだぞ」
 そう言って公爵は親方にウィンクをした。
「帰れ」
「なんという冷たい言葉だ、マイ・ラバー」
「帰れ」
 重ねて冷たく突き放す親方。そんな親方の態度にも負けず、公爵は空間転移の魔法を唱えた。
「これを見ても、まだそのようなことを言うかな?」
 公爵が空間転移で取り寄せたものは、高さが公爵の身長ほどもある大きな箱だった。
「何だ、これは?」
 さすがに毒気が抜かれたように箱をしげしげと見つめる親方に公爵はにやりと笑った。
「私の愛の証だ」
 そう言って箱の包装を解くように公爵はうながした。
 親方は渋面を顔一杯に作りながらも、何となく興味をそそられたのだろう。万能包丁を一閃。箱を包みごと切り裂いた。
 切り裂かれた箱ははらはらと落ち、それに合わせて箱の中身がゆっくりと露になった。
「…………。」
「え~と……」
「うん、なんやね」
「いい趣味……」
「して……る……よね?」
 箱から出てきたのは全身チョコレートでできた公爵の等身大の裸身像だった。
「バレンタインは愛の告白のお祭りだと聞いたのでな、我輩も参加させてもらった」
 そう言ってブレンダたちにウィンクする公爵。
 全身に寒気が走り、「やっぱりカカオを隠し持ってたんや無いの!」と突っ込めないブレンダ。
 そしてひたすら無口の親方。
 なんだか、どこから突っ込んでいいのか分からなくて声を上げることもできず固まっているアルノーたち。
 そんな中、シンシアだけ興味を惹かれたようにそのチョコレートの裸身像を見つめた。
「チョコレート、固まっているね」
「え? あ、ホントだ」
 その言葉にわずかに呪縛が解けるブレンダたち。
「これ、どうやってつくらはったの?」
 ブレンダの質問に公爵は得意げに笑った。
「苦労したぞ~。何せ、君たちの話では異国にチョコレートを固める技術があるらしい、しか分からなかったのだからな。とにかく、チョコレートに含まれる脂肪分がチョコレートを渋くしている要因だと気づき、魔法で脂肪分を取り除いてみたのだ。それから、今度はその脂肪を取り除いたチョコレートに砂糖ともう一度脂肪を溶かしてみたところ、これが見事に固まってな。しかも、カカオ独特の苦味や渋みも消えていたので、我輩の型を作らせてそこに溶かしたチョコレートを入れて固めたのだ」
「へぇ~、苦労したんだ~」
 公爵の説明にシェーンが感心したようにうなずいたが、シンシアは真剣な瞳でチョコレートの裸身像を見つめ続けた。
「苦労したって言うレベルじゃないと思うよぉ。かんなり、大変だったんじゃないかなぁ?」
 シンシアの言葉に、「お、分かるのか?」という目で公爵は彼女を見た。
 「脂肪分を取り除く」と公爵は簡単に言っているが、それを魔法でやろうと思えばかなりの集中力と、長く魔力を保つ業が必要になる。それに、自分たちは真里亜や一也の知識でここまでできたが、公爵は自分の知識だけでこの像を作ったのだ。そこには綿密な理論構築の頭脳と豊富な知識、そして高度な魔力を必要としただろう。
 決してただの変態公爵ではないのである。
「それで、どうなのだ、マイ・スイート」
 公爵はいつまでも黙っている親方の顔を覗き込んだ。親方はシンシア以上に熱心な表情で公爵の裸身像を見つめていた。
「気に入ってくれたかな?」
「一つきく。これは俺へのプレゼントか?」
「もちろんだとも」
「俺がもらっていいんだな」
「もらってくれるのか!?」
 親方の言葉にぱっと顔を輝かせる公爵。そんな公爵に親方は一つうなずいた。
「ああ、ありがたくいただく」
 ――ええ!?――
 ズザッと身を引いたのはブレンダたちだった。
 親方に一生懸命粉をかけていた公爵だったが、その努力はまったく報われず、いつも冷たい仕打ちを受けていたのだ。
 公爵と違い、親方にその気が無いことなどが大きな原因だが。
 ――ぶっちゃけ、公爵のアプローチの仕方が問題だと思う――
 というのがブレンダたちの意見だった。
 何せ、普通一般の人間なら引いてしまうようなくどいアプローチなのだ。しかも、その言葉のどこまでが本気か分からない告白に、嫌がらせとしか思えないような変態的趣味。
 どこをどう取ってみても、親方が公爵になびくとは思えないブレンダたちだった。
 ――親方、意外とこういうの好きやったんやろか――
 ――バレンタインの奇跡じゃないの?――
 ――悪夢の間違いじゃ――
 こそこそと話し合うブレンダたち。
 そんなことお構い無しに公爵は嬉しそうに親方の手を握り締めた。
「やっと我輩の気持ちが分かってくれたのか」
 涙を流さんばかりに喜んでいる公爵に親方は冷たい一瞥をくれると、その手をぞんざいに振り払った。
「アニス!」
「はひゃい!」
 親方に突然呼ばれてアニスはピンと背筋を伸ばす。
「鍋とお湯の用意をしろ」
「は、はい!」
 慌てて厨房に駆け込むアニス。
 その動きを目で追ったあと、親方はまたもやチョコレートの裸身像を見つめなおす。
「本当にいいものをくれた。感謝する」
 短くそう言ったあと、親方は万能包丁を思いっきり振りかぶった。
「へ?」
 ポカンとする公爵。
「あ!!」
 短く叫ぶブレンダたち。
 ガッコーン!! 
 鈍い音と共に粉々に砕け散り始めるチョコレートの裸身像。
 すべてはあっという間に終わり、気づくとアニスが用意した鍋にうず高くチョコレートの残骸が積まれていた。
「テンパリング、だったな」
 親方は珍しく口元をほころばせて真里亜を見る。
「あ、はい」
 真里亜は呆然とうなずいた。
「よし、お前たち喜べ。チョコレートが手に入ったぞ」
「え、えと……」
「や、やったー……かな?」
 みな、呆然と顔を見合わせたあと、おそるおそる公爵の顔を覗き込んだ。
 そこには……。

 真っ白に燃え尽きた王党派の重鎮にしてイスファルド有数の高位魔術者たるシュテファン・ハイネ公爵がいた。

  (完) 

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「バレンタイン狂想曲」というよりは「バレンタインまでの狂想曲」ですね。
公爵は、ブレンダは嫌いみたいですが、私は好きですよ。ホントに。
次は、ちょっとおまけというか、ブレンダのバレンタインの模様と+αです。
明日中に書き上げるぞ!

あ、ちなみに、親方が作った新作ケーキは「ザッハトルテ(もどき)」です。