え? もう4話なの? なんか、終わる気がしないんだけど…
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
「やられた!」
俺は頭に手をやりぼりぼりと掻いた。
目の前にひろがるのは閑静な住宅地。綺麗に舗装された道の両脇には延々と続く壁。
どう考えても貴族の屋敷だ。
俺は少女の服装を思い浮かべた。
はっきり見たわけではないが、彼女が履いていた靴は覚えている。
ボロボロのすりきれた革靴。
「貴族の令嬢ってのは絶対にあり得んな」
はぁっと大きくため息をつく。
「とすると、まかれたな、こりゃ」
まったくなんてガキだ。
足の速さに関しては多少自信があった俺は、少し鼻白んだ気分であたりを見回した。
行商人や商人が声を張り上げて商売をし、負けずと漁師や船員が大声で怒鳴り合う。
そんな喧騒とここは無縁だった。
時折大きな影が俺の頭上を横切り、かすかなつむじ風が巻き起こる以外はしんと静まり返っている。
今しがたもいきなり辺りが暗くなったので上を見上げると、このアヴィオン半島の名物である竜が悠々と空を飛んでいた。
「さすがに、迫力あるなぁ」
俺はせっかくだからと、どこかの貴族の家へと降り立つ竜を見物した。
アヴィオン半島へ初めて来た日は驚いたが、今ではこの景色も日常茶飯事となっている。
とはいえ、竜を持つことができるのは基本貴族だけらしいので、下町で眺める姿はかなり遠い。
だが、貴族の家が立ち並ぶこの界隈では、竜はかなり近くを飛んでいた。
たとえば竜上の人物の顔を確認できるぐらいに。
先ほどの竜の上にいた人物もちらりと俺に視線を移したが、一般人である俺からすぐさま興味を失ったと見えて、すぐに視線を戻した。
そんな一挙手一投足を見ることができるぐらい、ここでの竜は近い存在だった。
俺は再度頭をかいた。
「帰るか」
くるりと方向転換をした途端、見知った顔を見て目を見張った。
「ジョシュア!」
「アルヴァか!?」
ジョシュアは俺の顔を見た瞬間、ちょっと気まずそうな顔をした。
その顔で俺は少しピンときた。
「何や? この先の屋敷にでも用があるんか?」
「あ、ああ。まあな」
ジョシュアはわずかに俺から視線を外して答える。
それから俺へと視線を戻した奴はすでにいつものジョシュアに戻っていた。
「アルヴァは何をしているんだ?」
「ガキを追っていたんや」
「子供を?」
目を丸くして聞いた後、ジョシュアはにっこりと笑った。
「レイチェルがかんかんになって怒っていたぞ。早く帰った方がいい」
「あん? なんでレイチェルがおこらなあかんのや」
「逃げたとか、腰ぬけとか言っていたが?」
「あ~」
俺はまいったなと言うように視線をさまよわせた。その様子にジョシュアはくすくすと面白そうに笑った。
「あまり、女性を怒らせるな」
そう言うと流行歌を口ずさみながら俺の脇を通り抜けて行った。
そんなジョシュアを俺は目の端で追いながら、頭の中でレイチェルへの言い訳を考えた。
だが、どんなに良い言い訳を思いついても、レイチェルにはかなわないことに思い至り、軽く肩をすくめると宿の方へ足を向けた。
俺が宿に帰ると、レイチェルの姿は影も形もなく、ジャガイモの皮むきを手伝っているアンジェラとクラレンスがいるのみだった。
カウンターでは宿の主人がグラスを磨いている。
俺がコインを投げると主人は器用にそれを受け取り、エールをジョッキに注いでカウンターに置いた。
そして、黙々とジャガイモの皮をむき続けている二人を眺めた。
「なんだい? しけた面をしてるね」
そう声を掛けられて振り返ると、ジーンがいた。
ジーンは俺の隣に座ると、主人に葡萄酒の水割りを頼んだ。
ジーンの声に気付いたアンジェラが顔を上げて俺を見た。
「つかまった?」
「逃げられてもた」
「うん? なんだい? 泥棒でも入ったのかい?」
俺とアンジェラの会話にジーンは不思議そうに聞いてきた。
「いや、ちょっとな」
俺は首筋に手をやって、どう説明したものかなと悩んだ。どうにも説明しづらい。
「うちが洗濯物を取り込んでいるときにな、見知らぬ女の子がおったんや」
悩んでいるうちにアンジェラが代わりに答えた。
「アルヴァはなんか知り合いみたいで、『今度はにがさへん』とか言って追いかけて行ったんや。そやな?」
「あ~、まぁ、そういうことやけど……」
俺は困ったように天井を仰いだ。
「知り合いやないねん。知らん子やねん」
「え?」
アンジェラは驚いたように俺を見ると、エプロンで手をふきふき俺のところへ来た。
「でも、なんか知り合いみたいに……」
「いや、全然知らん」
俺はアンジェラの言葉をきっぱり否定してから、訳が分からないという顔をしているアンジェラとジーンを交互に見た。ちなみにクラレンスは我関せずとばかりに黙々とジャガイモを向いている。
「俺がな、踊りの練習していると決まって現れる子やねん。で、俺のまねをする。それが、俺よりうまいからちょっと気になっていてな」
「はぁん?」
ジーンはなるほどと言うばかりに相槌を打った。
それからしげしげと俺の顔を覗き込んだ。
「ピクシーに出会ったね」
「ピクシー!?」
俺はぎょっとしてジーンの顔をまじまじと見つめた。
「ああ。その踊りを見れば、一生踊り続けなければいけないと言われている妖精のことさ」
「ウソやろ?」
「ウソじゃないさ。ただし、ときには踊りの天啓を与えてくれるとも言われるけどね」
ジーンはそう言ってにやにやと俺を見た。
俺はその顔をうろんじたように見つめた。
「ジーン?」
「なんだい?」
「俺をかつぐつもりやったら、そんな子供だましの話はやめてんか。信じるわけないやろ」
「ちょっとは信じただろ」
ジャガイモをむきながらクラレンスがポソリと鋭いことを言う。俺が奴に鋭く眼光を飛ばすと、人の悪い笑みを浮かべて俺を見返す奴の瞳があった。
まったく、相変わらず性質の悪い奴だ。
「ちょっとは信じた」だと?
違う。
「信じた」んじゃない。
――そうであってくれたら――
と期待してしまったんだ。
俺は内心で舌打ちをしながら、ジーンを振り返った。
「ピクシー云々がジーンの作り話だか何だか知らへんけど、あれは間違いなく人間の女の子の足やで」
俺の言葉に、ジーンはくつくつと笑った。
「私が言った意味は違うのだけどね」
ジーンは「まぁいいさ」とつぶやくと、ワインを飲み干し席を立った。
「アルヴァ、あんた、今日の稽古はいいよ」
「え? それどういうことなん? ジーンさん」
俺は自分の心臓がキュッと縮みあがったのを感じた。冷汗がどっと出る。
とうとう俺の下手さ加減に諦められてしまったのだろうか。
ジーンはそんな俺の額をぺチリと叩いた。
「あんた、まだ、踊りの方も完成させてないだろう? それに、あんただけじゃなくて他の子も練習しないといけないしね」
「つまり、あなたはそれだけ周りに迷惑をかけているってことなのよ!」
ジーンの言葉にかぶさるようにレイチェルの言葉が食堂に響き渡った。
その剣幕に、俺は思わず首をすくめた。
レイチェルはつかつかと俺の横へやってくると、主人にワインを頼み、それを一気飲みした。
それからじろりと俺を睨んだ。
「まぁ、逃げずに戻ってきたことだけは評価してあげるわ」
「いや、俺は、逃げたわけや……」
俺が口を尖らせると、レイチェルは苛立たしげにカウンターを叩いた。
「女を追いかけるという段階で逃げているのでしょ! やる気があるならもっとまじめに練習しなさいよ!」
「女を追いかけるって……アンジェラ、どないな説明したんや!」
「え、うちは、あったことをそのままに……」
「追いかけたことに変わりはない」
クラレンスがまたもや鋭い突っ込みをぼそりと言う。気分がいいなら奴の言葉にノリツッコミでもなんでもするが、あいにくそんな気分じゃない。
ましてやレイチェルは烈火のごとく怒りまくっていた。
「女だろうが男だろうが、そういうことに気が取られているという段階でまじめじゃないと言っているのよ! ジョシュアも今夜は稽古に参加しないと言っているし、あんたたち、本当に、何考えているのよ!」
「あ、やっぱり、ジョシュアは稽古休むんか」
俺の言葉にレイチェルは不機嫌そうな視線を俺に向けた。
「何? 彼に会ったの?」
「貴族の屋敷の前でな」
俺の言葉にレイチェルの眉がピクリと動いた。彼女は急に押し黙って不機嫌そうに俺を睨み続けると、
「明日の稽古までにはちょっとは上手くなっていなさいよ」
そう俺に告げて、自分の部屋へと上がって行った。
何とかレイチェルの剣幕から逃れられたとため息をつく俺の顔を、何か言いたそうな顔でアンジェラが見つめていた。
「アルヴァ……」
アンジェラが何かを言いかけた途端、ジャガイモの皮をむき終わったクラレンスがアンジェラの肩に手をかけてそれを止めた。
「自分で気づくべきだ」
アンジェラはしばらくクラレンスの顔を見つめていたが、こくりとうなずくと何も言わずクラレンスからむき終わったジャガイモの桶を受け取り、台所へと出て行った。
後には無口のクラレンスと俺の顔を心配そうにのぞきこんでいる宿の主人だけが残っていた。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
「やられた!」
俺は頭に手をやりぼりぼりと掻いた。
目の前にひろがるのは閑静な住宅地。綺麗に舗装された道の両脇には延々と続く壁。
どう考えても貴族の屋敷だ。
俺は少女の服装を思い浮かべた。
はっきり見たわけではないが、彼女が履いていた靴は覚えている。
ボロボロのすりきれた革靴。
「貴族の令嬢ってのは絶対にあり得んな」
はぁっと大きくため息をつく。
「とすると、まかれたな、こりゃ」
まったくなんてガキだ。
足の速さに関しては多少自信があった俺は、少し鼻白んだ気分であたりを見回した。
行商人や商人が声を張り上げて商売をし、負けずと漁師や船員が大声で怒鳴り合う。
そんな喧騒とここは無縁だった。
時折大きな影が俺の頭上を横切り、かすかなつむじ風が巻き起こる以外はしんと静まり返っている。
今しがたもいきなり辺りが暗くなったので上を見上げると、このアヴィオン半島の名物である竜が悠々と空を飛んでいた。
「さすがに、迫力あるなぁ」
俺はせっかくだからと、どこかの貴族の家へと降り立つ竜を見物した。
アヴィオン半島へ初めて来た日は驚いたが、今ではこの景色も日常茶飯事となっている。
とはいえ、竜を持つことができるのは基本貴族だけらしいので、下町で眺める姿はかなり遠い。
だが、貴族の家が立ち並ぶこの界隈では、竜はかなり近くを飛んでいた。
たとえば竜上の人物の顔を確認できるぐらいに。
先ほどの竜の上にいた人物もちらりと俺に視線を移したが、一般人である俺からすぐさま興味を失ったと見えて、すぐに視線を戻した。
そんな一挙手一投足を見ることができるぐらい、ここでの竜は近い存在だった。
俺は再度頭をかいた。
「帰るか」
くるりと方向転換をした途端、見知った顔を見て目を見張った。
「ジョシュア!」
「アルヴァか!?」
ジョシュアは俺の顔を見た瞬間、ちょっと気まずそうな顔をした。
その顔で俺は少しピンときた。
「何や? この先の屋敷にでも用があるんか?」
「あ、ああ。まあな」
ジョシュアはわずかに俺から視線を外して答える。
それから俺へと視線を戻した奴はすでにいつものジョシュアに戻っていた。
「アルヴァは何をしているんだ?」
「ガキを追っていたんや」
「子供を?」
目を丸くして聞いた後、ジョシュアはにっこりと笑った。
「レイチェルがかんかんになって怒っていたぞ。早く帰った方がいい」
「あん? なんでレイチェルがおこらなあかんのや」
「逃げたとか、腰ぬけとか言っていたが?」
「あ~」
俺はまいったなと言うように視線をさまよわせた。その様子にジョシュアはくすくすと面白そうに笑った。
「あまり、女性を怒らせるな」
そう言うと流行歌を口ずさみながら俺の脇を通り抜けて行った。
そんなジョシュアを俺は目の端で追いながら、頭の中でレイチェルへの言い訳を考えた。
だが、どんなに良い言い訳を思いついても、レイチェルにはかなわないことに思い至り、軽く肩をすくめると宿の方へ足を向けた。
俺が宿に帰ると、レイチェルの姿は影も形もなく、ジャガイモの皮むきを手伝っているアンジェラとクラレンスがいるのみだった。
カウンターでは宿の主人がグラスを磨いている。
俺がコインを投げると主人は器用にそれを受け取り、エールをジョッキに注いでカウンターに置いた。
そして、黙々とジャガイモの皮をむき続けている二人を眺めた。
「なんだい? しけた面をしてるね」
そう声を掛けられて振り返ると、ジーンがいた。
ジーンは俺の隣に座ると、主人に葡萄酒の水割りを頼んだ。
ジーンの声に気付いたアンジェラが顔を上げて俺を見た。
「つかまった?」
「逃げられてもた」
「うん? なんだい? 泥棒でも入ったのかい?」
俺とアンジェラの会話にジーンは不思議そうに聞いてきた。
「いや、ちょっとな」
俺は首筋に手をやって、どう説明したものかなと悩んだ。どうにも説明しづらい。
「うちが洗濯物を取り込んでいるときにな、見知らぬ女の子がおったんや」
悩んでいるうちにアンジェラが代わりに答えた。
「アルヴァはなんか知り合いみたいで、『今度はにがさへん』とか言って追いかけて行ったんや。そやな?」
「あ~、まぁ、そういうことやけど……」
俺は困ったように天井を仰いだ。
「知り合いやないねん。知らん子やねん」
「え?」
アンジェラは驚いたように俺を見ると、エプロンで手をふきふき俺のところへ来た。
「でも、なんか知り合いみたいに……」
「いや、全然知らん」
俺はアンジェラの言葉をきっぱり否定してから、訳が分からないという顔をしているアンジェラとジーンを交互に見た。ちなみにクラレンスは我関せずとばかりに黙々とジャガイモを向いている。
「俺がな、踊りの練習していると決まって現れる子やねん。で、俺のまねをする。それが、俺よりうまいからちょっと気になっていてな」
「はぁん?」
ジーンはなるほどと言うばかりに相槌を打った。
それからしげしげと俺の顔を覗き込んだ。
「ピクシーに出会ったね」
「ピクシー!?」
俺はぎょっとしてジーンの顔をまじまじと見つめた。
「ああ。その踊りを見れば、一生踊り続けなければいけないと言われている妖精のことさ」
「ウソやろ?」
「ウソじゃないさ。ただし、ときには踊りの天啓を与えてくれるとも言われるけどね」
ジーンはそう言ってにやにやと俺を見た。
俺はその顔をうろんじたように見つめた。
「ジーン?」
「なんだい?」
「俺をかつぐつもりやったら、そんな子供だましの話はやめてんか。信じるわけないやろ」
「ちょっとは信じただろ」
ジャガイモをむきながらクラレンスがポソリと鋭いことを言う。俺が奴に鋭く眼光を飛ばすと、人の悪い笑みを浮かべて俺を見返す奴の瞳があった。
まったく、相変わらず性質の悪い奴だ。
「ちょっとは信じた」だと?
違う。
「信じた」んじゃない。
――そうであってくれたら――
と期待してしまったんだ。
俺は内心で舌打ちをしながら、ジーンを振り返った。
「ピクシー云々がジーンの作り話だか何だか知らへんけど、あれは間違いなく人間の女の子の足やで」
俺の言葉に、ジーンはくつくつと笑った。
「私が言った意味は違うのだけどね」
ジーンは「まぁいいさ」とつぶやくと、ワインを飲み干し席を立った。
「アルヴァ、あんた、今日の稽古はいいよ」
「え? それどういうことなん? ジーンさん」
俺は自分の心臓がキュッと縮みあがったのを感じた。冷汗がどっと出る。
とうとう俺の下手さ加減に諦められてしまったのだろうか。
ジーンはそんな俺の額をぺチリと叩いた。
「あんた、まだ、踊りの方も完成させてないだろう? それに、あんただけじゃなくて他の子も練習しないといけないしね」
「つまり、あなたはそれだけ周りに迷惑をかけているってことなのよ!」
ジーンの言葉にかぶさるようにレイチェルの言葉が食堂に響き渡った。
その剣幕に、俺は思わず首をすくめた。
レイチェルはつかつかと俺の横へやってくると、主人にワインを頼み、それを一気飲みした。
それからじろりと俺を睨んだ。
「まぁ、逃げずに戻ってきたことだけは評価してあげるわ」
「いや、俺は、逃げたわけや……」
俺が口を尖らせると、レイチェルは苛立たしげにカウンターを叩いた。
「女を追いかけるという段階で逃げているのでしょ! やる気があるならもっとまじめに練習しなさいよ!」
「女を追いかけるって……アンジェラ、どないな説明したんや!」
「え、うちは、あったことをそのままに……」
「追いかけたことに変わりはない」
クラレンスがまたもや鋭い突っ込みをぼそりと言う。気分がいいなら奴の言葉にノリツッコミでもなんでもするが、あいにくそんな気分じゃない。
ましてやレイチェルは烈火のごとく怒りまくっていた。
「女だろうが男だろうが、そういうことに気が取られているという段階でまじめじゃないと言っているのよ! ジョシュアも今夜は稽古に参加しないと言っているし、あんたたち、本当に、何考えているのよ!」
「あ、やっぱり、ジョシュアは稽古休むんか」
俺の言葉にレイチェルは不機嫌そうな視線を俺に向けた。
「何? 彼に会ったの?」
「貴族の屋敷の前でな」
俺の言葉にレイチェルの眉がピクリと動いた。彼女は急に押し黙って不機嫌そうに俺を睨み続けると、
「明日の稽古までにはちょっとは上手くなっていなさいよ」
そう俺に告げて、自分の部屋へと上がって行った。
何とかレイチェルの剣幕から逃れられたとため息をつく俺の顔を、何か言いたそうな顔でアンジェラが見つめていた。
「アルヴァ……」
アンジェラが何かを言いかけた途端、ジャガイモの皮をむき終わったクラレンスがアンジェラの肩に手をかけてそれを止めた。
「自分で気づくべきだ」
アンジェラはしばらくクラレンスの顔を見つめていたが、こくりとうなずくと何も言わずクラレンスからむき終わったジャガイモの桶を受け取り、台所へと出て行った。
後には無口のクラレンスと俺の顔を心配そうにのぞきこんでいる宿の主人だけが残っていた。