ロブチェからカラパタールを往復すると6時間くらいかかると予想し、朝8時に宿を出る。宿の主人に連泊することを伝え、この日はカラ身で歩く。
やっぱり荷物が無いのは楽だ。
関空を発つ時の計量でバックパックの重量は9.8kg。水を入れて12kg。なかなか良いパッキングだったと思う。道中いろんな人に「荷物少ないね」と言われる。日本で歩くときよりもテントと調理具と食糧のぶんだけ軽いから、実感する重さもだいぶ軽い。それでも歩を重ね標高を上げていくうちに、肩と腰にザックが負担をかけてゆく。2、3日前から肩こりがひどい。これまでいろんな所に一緒に行ったM社のザックだが、背負い心地は、悪い。はっきりと、悪い。帰ったらO社のザックを買おう。
とにもかくにも、カラ身に勝るファスト&ライトは無い。
右手にヌプツェを見ながら北北東に進む。行く手にはプモリと、その手前の目的地カラパタールが見えてくる。

綺麗な円錐形をしたプモリは、「大人になった蓼科山」と命名しよう。7000m超えてるからね。
えっちらおっちら2時間歩いて、標高約5100mゴラクシェプの町に到着。
ロッジでブラックティーを飲んでいると、昨日ロブチェで出会った日本人のおじさんを連れたガイドさんに出会う。その日本人のおじさんは67歳らしく、見るからに体調が悪そう。ガイドさんもかなり心配していて、まだ午前中だけどその日はもう動かないことに決めていた。
俺の格好を見てガイドさんは、「たぶん上は寒いですよ」と上手な日本語で教えてくれた。でもそのまま行くしかない。カラ身だから。この時の格好は、機能素材の長そでベースレイヤー、フリースのベスト、弱めのソフトシェル。ゴーキョピークもチョラパスもこの格好だったから大丈夫だろうと予想していた。
ゆるやかな上りを歩く。やっぱり息苦しいけど、荷物が無いからだいぶ楽。
途中、右側から大きな重低音が。ヘリかな?と思って振り向くと、ヌプツェの裾で雪崩。

すごい。幅1キロくらいある。クライミングルートではなさそうだから人はいないと思われる。あんなのに飲まれたら生きてるとか死んでるとかいう問題は通り越してしまうだろう。
斜度はだんだんきつくなり、もう諦めて帰ろうかな・・・と思ったころカラパタール登頂。

だいぶ前から見えてたけど、改めて世界最高峰とご対面。

どんなに周到な準備をしても死の可能性を拭えないエベレスト。そこはもう神様の手の届く場所。

プモリ、ヌプツェ、ロブチェピーク・・・いつまでも眺めていたくなるような景色。

しかし寒さと強風のため10分もいられず。
隣にいたイタリアンが温度計を見て「マイナスフィフティーン」と言っていた。寒いわけだ。
指が痺れてきたところで下る。腕組みして両手を両脇にはさんで、転がるように下る。
ゴラクまで下りてさっきのロッジでブラックティーで暖まる。例のガイドさんに、「寒かったでしょ」と迎えられる。体を温めがてら小一時間そのガイドさんと話し込む。
以前はクライミングガイドをしていたが、年齢と酒とタバコのためトレッキングガイド専門に転向したというナンガライライさん。メラピークやロブチェピーク、アイランドピークなどの比較的難しくない(全部6000m超えてるが)ピーククライミングに、日本人を何人も連れていったらしい。やっぱり日本人は高所に弱いらしく、それでいてアタックするのは高齢の方が多いから敗退例が多いとのこと。「兄さんがアイランドピーク登りたいならうんと安くできるぞ。ポーターが少なくてすむ。飯もなんでも大丈夫だろ?間違いなく成功させるよ」と連絡先を教えてくれた。うーん登りたい・・・。
夕暮れ前の暖かな日差しを浴びながら、ロブチェの宿へ帰る。
この日の宿は満室。遅くに来た人が何人も断られてた。それでもロブチェは宿が多いからテント泊になった人はいないだろうけど。