「『カミサマ』開発者ルートヴィッヒ・バイルシュミット博士、自らの手で作り上げた機械により、自殺……」


ルートヴィッヒの自殺から、一ヶ月。菊とフェリシアーノは、彼のライバルであった科学者-ローデリヒの元にいた。


「……それで、働き口がなくて私に泣きついてきた……そういうわけですか?二人とも。」


「そんな理由じゃないんです!ただ、ローデリヒさんなら信用できるから……ローデリヒさんのところで働きたいと思っただけなんです!」


「……」


ローデリヒはくるりと椅子の向きを返ると、二人に一言吐き捨てた。


「なら、話はつきました。早くお帰りなさい。」


「なんでっ……」


「同じような手口で、もし私が失敗した際に裏切られてはたまりませんからね。今回のことで、科学者の助手とはいかに大変なものか学んだはずです。……それに、私にはエリザがいます。助手は一人で充分です。」


「っ……」


フェリシアーノは黙って菊を連れると、研究室を後にした。


「ローデリヒさん……」


「……」


心配して声をかけたエリザベータに、ローデリヒはぼそりと呟いた。


「……エリザ。本当の平和とは、一体なんなのでしょうね……」


それから彼がひとつの機械を発明したことは、また別のお話……




















END.
数分後。判決を聞いた二人が研究所に戻ってきた。


「あーあ、めんどくさっ……なんで俺らがこんな役務めなきゃいけないわけ?菊もそう思うよね?」


「っ……」


「……まあいいや。さっさと伝えてさっさと帰ろう……あとは警察がなんとかしてくれるよ。」


「……はい。」


そう言いながら、フェリシアーノが扉を開けたその時-


「っ……!」


「菊?」


「ルー、ト……さんっ……!」


「え?……っ!!」


二人が目にしたもの。それは、凶器を手にした『カミサマ』を前に佇むルートヴィッヒ-


「ばっ……なにしてんの!?」


「ルートさん!!やめてください!!!」


しかしルートヴィッヒは虚ろな目で二人を見、にたりと笑った。


「ああ……丁度良いところへ来たな。刑はなんだ……?終身刑か?死刑か?まあ、どちらにせよ俺は……今、この場でこいつに殺されるのだからな。」


「!?」


「る、ルートさっ……」


「……甘い汁はほどほどにな。それではさよなら……」


-マタ、イツカ-

























-グチャッ-
判決が出るまでの三日間、ルートヴィッヒは何かしら抵抗することもなくただひたすらぼんやりとしていた。


三日目-研究所のドアが閉まる音で、ルートヴィッヒは顔を上げた。


「……いよいよ……制裁の、時……」


きっと判決は、一番重いものだろう。ルートヴィッヒはそう考えると、目線を机の上に移した。


机の上には、自分の作った機械-小さなネジマキを付けたかわいいニセモノ神様が、自分を見ていた。


「お前もきっと、こんな開発者<マスター>の手にいつまでもいるのは嫌だろう……」


ルートヴィッヒはやつれきった顔で『カミサマ』を手に取ると、ゆっくりと背中に付いたネジマキを回した。


ギイギイと音をたてて、ネジが巻かれる。やがて、限界までネジが巻かれきった。


ルートヴィッヒはそっと『カミサマ』を机に置くと、口を開いた。


「『カミサマ』。お願いだ……」


このまま世界の餌となるのなら。


法廷で裁かれ、殺されると言うのなら。


それなら、機械仕掛けのその手で-


「俺を、殺してくれ。」