小説K,氷 -3ページ目

続ホストの憂鬱

ホストとして、おれがお客にどんな会話をしていたかということを知りたい人もいるかもしれない。

一体全体、どうやって女の子を口説きおとしていたのと、おおもいかもしれない。

けれどもおれは、ドラマなどで、言うような気障なセリフは、言ったこともない。また、言っている先輩達もみたことがない。

またおれは、サプライズで急に踊り出したりするタイプでは、ない。フラッシュモブを否定しているわけではないけれど、そんなに器用な人間ではない。

それではどんな会話するのかと聞かれれば、普通の会話、友達と話すこととなんらかわることがないのである。

ただし、ひとつだけ、女の子にたいしては、絶対にけなすことはしないということが友達との違いかもしれない。

結局のところ、女の子を口説きたいときは、普通の会話して、普通にデートを重ねて、定期的に連絡する。いたって普通にせっしているのである。

ただし、ホストという職業に一定のブランド力があるのも、一定の人には影響があるのも、事実である。

るみの話しを続けていくまえに、リサの話を少し、しようとおもう。

リサと会ったのは営業終わりに飲みに行った他店の同業種だった。その日、キャッチ中によく会う、キャバ嬢と営業終わりに飲みにいったのだった。正直、このキャバ嬢のことをよくは、しらないのだけれど、向こうのほうはよく知っているようだった。

仲のいいキャバ嬢の友達なのかもしれないが、まったくもって、謎の女の子だった。彼女と飲みに行ったいきさつはこうだった。

営業終わりに、突然よびかけられたのである

「キョンじゃん。おわったの?」そういって彼女はおれの腕を掴んだ。両手でもたれるようにして。

正直、何度かみたことはあったけれど、しらない女の子だと思った。そこまで会話したことのない女の子だった。

「一緒に飲みに行こうよ」と、彼女が言ったので、おれは、すんなり受け入れた。キャバ嬢やホステスは、お客になりやすいからだった。

行き着けのボーイズバーにいき、二人で飲んでいるところに、直人がリエと、きたのだった。

「あ、妹がいる」リエが奥の席を見て言った。

リサもそれに気づいて挨拶にきたのである。それから少しすると、リサはおれに携帯番号を紙に書いてわたしてきたのである。しばらくすると、リサは、隣に座っていた。

いつの間にか直人とリエと、一緒にきたはずの彼女は、一緒に帰っており、リサはおれの膝の上に座っていた。

そのまま、おれとリサはラブホテルに直行していた。すごく胸の大きなこでHカップ以上あるといっていたけれど、なによりも驚いたのは、下着姿だった。

SM嬢がはいている黒い拘束具だった。こんな勝負下着をみたのは、初めてで、顔に出ていたのだと思う。

「脱ぐの難しいから自分でぬぐね」そういってリサはすぐに脱いだ。

「色恋でも、いいから付き合って」っと、リサが言ったので、おれは、拒む理由もないとおもい付き合うことにしたのだった。

リサは、SMショーをやる、ラウンジで働いていた。SMクラブではないと、何度もいっていた。ショーとして、やっているということを強調したかったのだと思う。

次の日、行き着けのマスターからちょっとした、クレームがはいったがたいしたもんだいにはならなかった。

この頃のおれは、今の店に不満をかかえていて、次の店を紹介してもらうように同業種の友達にたのでいた。るみを固定客としてもらえないことや、仲のいいまさの移動や、店をやめた先輩達の営業の邪魔に嫌気がさしていた。

それに、ちなみの浮気の告白で、病んでいたこともある。親友との浮気は、さすがに忘れることはできなかった。

しかしながら、リサと付き合うことになったのだけれども、ちなみとは、わかれなかった。

続ホストの憂鬱P8

春先の話しである。いつものように、るみはあやと来店した。その席には、決まっておれと、直人が接客する。たとえ、ちなみがきていてもだ。ちなみとの関係は、正直いって、春先に破綻していたし、恋人では、あったのだけれども、お酒が入るとおれも、あの日の出来事を聞いてしまいそうで、るみとかぶって来た日には、るみの席に着くようにしていたし、るみに、ちょっとした、失敗をしてしまっていた。

先にのべたように、るみは携帯を持っていない。なぜ持っていないのかきいたら、支払いをしなかったために借りれなくなったということだった。

その事を深く追求しなかった。人それぞれ、いろんな事があったのだろう。それに、るみは、地元の人間ではなくて、他県からきていた。

だからだろう。ワオなんて口癖をよくつかうのは。

るみにたいしての失敗とは、電話である。

まだ冬の日に、キャッチ中に公衆電話から掛かってきたことがあった。
 
「だれかわかる?」と、女性の声。おれは、思案して、数人の名前をのべた。ちなみもその中に含まれている。

「るみだけど、いっぱい女の子に心あたりあるのね。ほんとワオひいた」

その失敗でおれは、るみがきたら必ずるみの席に着くようにしたのである。そんなに心あたりはないと行動で示そうとした悪あがきでもあった。

その日、直人は、あやにからみはじめたのである。酒乱がキレるタイミングとは、ほんとうに、地震のように予知できにくいもにので、しかもその日に限って店には先輩がみな休みであったために、止められる人間が誰もいなかったのである。

直人は、酔ってしまえば女だろうと手を上げてしまう。直人があやの頬をぶつのに、躊躇は、なかった。一緒に暮らしていたので、普段から暴力があったのかもしれないけれど、店の中で、お客をぶつのは、どんな関係であれ、あってはいけないことだ。

ぶたれたあやは、店を飛び出して、それを直人が追っていったのだった。これから先、何度か同じ光景を目にすることになる。

おれと、るみは、目の当たりにしすぎてしまったために、数秒ほど、時がとまってしまっていた。事実上の責任者が、あろうことか店内からいなくなってしまい、後輩達と、どうするか相談し、おれと、るみで捜索することにしたのである。

エレベーターをおりると、直人とあやは抱き合っていた。

「ワオ」るみがいい。続けて「戻ろ」と。呆れたようにいった。

店に戻る途中に、るみは、初めて、おれの腕に腕をからませてきたのである。直人とあやがうらやしかったのかもしれない。

続ホストの憂鬱

まずお店の先輩で、直人とについてはなそうとおもう。直人は、先輩ではあるが同じ歳ということもあり、先輩が発する威圧感といったオーラは、皆無で、本人も先輩風をふかせるようなことはなかった。

ただし、酒癖が非常に悪い。酒乱の中でも、からみざけで、突然暴力的になることもしばしばあった。直人と揉めて、後輩のまさは、チェーン店に移動した。

いきさつを説明するならば、まさと大が接客中に、直人が絡んで、邪魔をしたことにまさが文句をつけた。その文句に逆上した直人が暴れだしたのである。

そういったことは、たびたびあったが、オーナー達役職についている先輩たちは、おれたち新人の肩を持つことはなかった。オーナーは、まさにチェーン店に移動するかと提案し、まさは、チェーン店に移動する。即答で。

正直に言えば、直人のせいで、新人のおれたちに固定客がなかなか着かないといっても過言では、なかった。

毎回のように新規の客を呼んでも、なぜかしら、直人は、絡んでくるのである。新人に抜かされる焦りがあったにしても、やり過ぎなほど、絡んで、席をぶち壊すのである。けれども、お酒の入っていない直人は、優しい先輩でもあった。

あやは、毎回のようにるみとくるわけでもなくて、一人でくることもおおかった。あやは、ほぼ毎日通うのだから当然ではあったのだけれど。

毎日にきていれば、誰が誰の固定客なのか、当然知ることができる。俺について言えば、ちなみが俺の固定客だと知ることになる。挨拶程度の会話をする事もあった。

普通なら、るみにそのことを、告げてもおかしくないのだけど、るみに告げたような感じもなかった。当然、告げてしまえば、るみは、店に来なくなるので、店としては、マイナスなのだけれども、おれとしては、正直、それは、仕方ないことだと思っていた。

実際に、おれならば、友達の好きな女の子に本命の彼氏がいたならば、そのことをつげるだろう。それでもいいというならば、無理に引き止めはしない。諦めがつかないばあいだってあるのもわかるからだ。

いうならば、恋は盲目というやつだ。盲目と言ってもなにも見えていないとは、おもえない。見えていても見えないふりをしているだけだとおもう。

るみも実際は、どうだったのかはしらない。もしかしたら、聞いていたのかもしれないけれど、あやがおれに、こんなことを言ったことがある。

「キョンに、ちなみちゃんがいるのは知ってるし、私もちなみちゃんと知らない中じゃないから邪魔するきもないよ。だからるみには内緒にしてるよ。それにるみはキョンが好きなんだからつかまえとかないとね」

まるで店側の人間みたいだった。

だからとでも言うわけでもないのだけれど、お客に彼女はいるの?っと聞かれれば当然いないとこたえる。恋人からみたら最低な人間だとおもう。

たとえ、ちなみが近くにいたとしても、こたえはかわらない。ホストという職業は、そういうものなのかもしれないけれど、すべてのホストがそうこたえるとは、思わない。ただし、彼女がいると知っている客にたいしては、正直にいうのも事実である。

嘘を平気でつくけれども、ウソツキにされてはいけないのだから。


続く