小説K,氷 -19ページ目

SleepingBeauti

山下の目的はこの工場で1番可愛い河内百合(こうち ゆり)だった。

河内百合はある意味、理解不能な存在でもある。

別に言動がおかしいわけでも性格がひねくれているわけでもない。

むしろ、その逆だった。

清楚な感じで、礼儀正しく、そしてなによりも美人だった。

この工場に似つかわしくない存在とぼくはとらえていた。

SleepingBeauti

作業主任の山下がぼくの前にやってきてこう言った。

「白川君、今日はやけにペース遅かったね、体調でもよくないのかな?」

ただの嫌みなのは、表情をみればすぐにわかる。

「いえ」

「そう、なら来週は頑張って」

そう言うと、山下はお目当ての人物の元へ向かった。

威厳があるんだと、彼女に見せつけて。

SleepingBeauti

その日の仕事は、いつもより、はかどらなかった。

原因はわかっていた。

簡単な流れ作業。

ただ携帯電話を箱に入れて、コンピューターに出荷設定をし、ダンボールに詰めるだけの仕事。

ノルマの数量が決めれらている。

いつもなら、一時間の残業でノルマを難無くこなして、明日の前倒しをやっているはずなのに………二時間の作業でやっとノルマをこなしていた。

ようは集中力の問題だった。

何度もパソコン操作を間違った。

彼女の笑顔が生々しくぼくの脳にフラッシュのようにちらついて、仕事に集中出来なかったからだった。