整列、そして挨拶。
で、でかすぎやろ・・・
安井は目の前の赤いユニフォームの男たちを見上げた。
それになんでこんなに外人混ざってんねん・・・
外国人は、大きいだけでなく、分厚い。
テレビではわかりにくいが、相対するとその厚みも含めた体の大きさを実感する。
コイントスの後、選手がピッチに散る。
真夏の昼間、まぶしい光の中、ホイッスルが吹かれた。
名古屋はこれまでどおり4-1-2-3。
大阪は4-4-2、互いにベストメンバーだ。
二海のキックオフを倉木が近藤に戻し、大阪の選手がゆっくりと前に進む。
近藤は横、後ろと短くパスを回し、何度も受け直す。
名古屋は前から当たらず、バイタルでブロックを作る意図のようだ。
近藤は、名古屋の攻撃的MFの緩いプレッシャーを横パスで交わしながら、ゆっくりと右サイドへ流れていく。
近藤が少しずつ右へ、そして前へ進むにつれ、右SBの加井がタッチ沿いにするする上がってくる。
同時に、二海がペナルティエリア沿いに中へ動く。
FW大代も右バイタルに落ちてきて、板東も中央付近に落ちてくる。
さらに、左SHの倉木までも中へはいり、名古屋陣のバイタル手前右半分に、大阪の選手6名が入ってしまった。
対して、名古屋はCBとSB、ボランチのダニー、ハーフとウィングが対応するが、足りない。
足りないので、大阪の短いパスがポンポンと練習のように繋がる。
横へ、縦へ。
くるくるとポジションを変えながら、大阪が短いパスを少ないタッチで回す。
これ、飛び込んだらやられちまうぞ
対応する名古屋の、全員が同じ危険を感じた。
大阪のボール回しに、規則性がない。
大阪の選手のポジションもめまぐるしく変わり、次がどこに、誰にわたるのか読めない。
練習のようにボールが動く。
そうしている間にも、サイド、真ん中、至る所で常に誰かが裏を狙ってる。
取りようがねーぞ、これ
それを見ていた名古屋の右MFが、するすると逆サイドへ動く。
大阪の選手は、名古屋の左サイドに固まってる。
こっちには誰もいないし、逆サイドがなんだかヤバそうだ。
直感で、危険を感じた彼が密集に近づいた瞬間。
右サイドの深い位置にいた近藤から、ペナルティエリアに沿うように、平行のパスが走る。
これまでとは違う早い球足。
これが大阪のスイッチだった。
近藤の早いパスに反応したCBは、二海をブロックするために一歩前に、左に出た。
縦に少し走り込み、CBとボランチの間でボールに追いついた二海は、ダイレクトでボールを擦る。
二海が右足のインフロントで柔らかく擦りあげたボールは、巻いて、そして落ちながら、2人のCBを超えた。
二海の三次元の柔らかいパスの落下点は、中央やや左のペナルティエリアのライン上。
そこに走り込んでいるのは、左SBの安井だった。
ダイレクトでボレーの体制の安井。
ブロックにとぶ名古屋右SB。
安井は、右足甲で柔らかくボールを左前方に流す。
反対側に滑っていく名古屋SB。
ペナルティ内で完全フリーになった安井は、さらにひとつ、前に、中に、ボールを送る。
角度がない分、近いとこから・・・
ゴールエリア手前で再度シュート体制に入ったところで、GK奈良沢が安井の目の前に現れた。
至近距離で奈良沢にブロックされたシュートは、タッチラインを割った。
「はよ打たんかい!!」
板東の罵声が響く。
ひとつ多かったわ・・・ドフリーやったのに~
頭を抱える安井を、名古屋守備陣が呆然と見ていた。
攻撃力があることはわかっていた。
しかし、こんなに守れないとは思ってなかった。
この試合、守り切ることは不可能だ。
名古屋の全員が、そう考えていた。