「中和法」で作った大量生産の石けんは、よくないの?
こんにちは。橋本です。
昔ながらの石けんの作り方。
「 窯焚き(かまだき)法 」、「 炊き込み(たきこみ)法 」といった石けんの製造方法では、原料に「油脂」を使います。
「油脂」というのは、カンタンにいえば、「動物や植物からとった油」ですね。
しかし、石けんの製造方法は、原料に「油脂」を使う方法ばかりではありません。
「脂肪酸」を使う製造方法もあります。そのひとつが、「中和法」です。
じつは、大量生産されるのに向いているのは、この「中和法」のほうなんですね。
ここでざっくりと、石けんの製造方法のひとつ、「中和法」の流れと、特徴をみていきたいと思います。
脂肪酸が原料
「中和法」に使う原料は、「脂肪酸」です。
まず最初に、「脂肪酸とは何ぞや」という話ですが。
脂肪酸は、食品、化粧品の成分にも、よく使われる原料です。
動物や植物からとれる油、「油脂」はもともと、「グリセリン」と「脂肪酸」が結びついている化合物です。
なので、中和法の原料に使う「脂肪酸」は、油脂を「脂肪酸」と「グリセリン」に分解、精製することでえられます。
実際には、「ヤシ油」「パーム油」「パーム核油」「牛脂」などに高温高圧、水を加えることで分解され、脂肪酸を取り出すことができます。
取り出される脂肪酸は、おもに
・ ラウリン酸
・ ミスチリン酸
・ パルミチン酸
・ ステアリン酸
・ オレイン酸
などがあります。なんとなく名前だけは、聞き覚えがあるかもしれませんね。
酸とアルカリを中和させる
脂肪酸(酸性)と水酸化ナトリウム(アルカリ性)を反応させる。
そうすると、石けんができます。
「酸」と「アルカリ」という正反対の性質のものを中和させて、石けんを作る。だから、中和法というネーミングなんですね。
石けんは、「脂肪酸ナトリム」ともよばれます。
原料の脂肪酸が、ラウリン酸なら、「ラウリン酸ナトリウム」。
ステアリン酸なら、「ステアリン酸ナトリウム」という具合ですね。
固形石けんでない場合は、アルカリに「水酸化カリウム」を使うこともあります。
ボディーソープに配合される石けん分も、この中和法が使われることがほとんど。
「ボディーソープは、合成界面活性剤だから肌によくない」
そう思っている人も多いですが、これは誤解です。
「ボディーソープ=合成界面活性剤」ではありません。
中和法で作った石けんを洗浄成分として、いわゆる合成界面活性剤を使っていない、というボディーソープも、じつは多いんですね。
できあがりの石けんの特徴を調節できる
一般的に、ラウリン酸ナトリウムは、泡立ちが良く、ステアリン酸ナトリウムは、泡立ちが弱いという傾向があります。
この性質を利用して、中和法で作られる石けんは、脂肪酸の組み合わせを工夫して、泡立ちや洗浄力、肌への刺激などを調節しています。
こういうことって、油脂から作る「窯焚き法」や「炊き込み法」では、なかなかできない調節なんですよね。
脂肪酸を自由に組み合わせることができる。
そのことで、できあがりの石けんの特徴を調節できるのは、中和法の大きなメリットです。
大量生産だから品質が悪いのか?
さらに中和法は、しっかり反応しきることができれば、純度99%以上など、純度の高い石けんを作ることができます。
逆に、中和しきれないと、石けんの純度は低くなり、アルカリが製品に残ってしまうと、肌を刺激してしまいます。
ここらへんのサジ加減は、メーカーにとってノウハウのいちばん重要なところで、できあがりの石けんの品質を大きく左右します。
そして、中和法は、原料の脂肪酸を精製できるところもメリットで、原料の段階で不純物を減らすことができます。
つまり、中和をしっかりコントロールできれば、窯焚き法で作られるような純度の高い、良質な石けんにせまることも可能です。
石けんの場合、「大量生産だから悪かろう」とも言い切れないわけなんですね。