怪獣 より
この数か月、地獄の気分だった。言うに及ばず、あの人からの連絡がなかったからだ。このブログでは常日頃から「あの人と残り2年でお付き合いできなかったらその先の人生は要らない」と書いてきた。別にこれは覚悟のようなものでもなければ自暴自棄の結果として厭世的な気分に至った証左でもない。単純な事実だ。恋愛って本当に疲れるし、私にとってはダメージの大きいものだ。誰かを大切にするって、自分自身を大切にしないとできないし、同時に自分の嫌な部分に向き合う作業でもある。私は自分という生き物がとても大好きで同時に大嫌いだから、この向き合いが本当に苦しくて辛い。直さないといけない欠点、受け入れてもらえるように削った短所、それらを再点検する作業に付きまとう「ここまでやったら私が私でいられなくなるのではないか」という不安。ともすると「自由」を失うことになりかねないけど、それが人間の世の中だよなあと思う。ただ、それだけの苦悩を飲み込める相手だからこそ好きになる。話した経験が少ない人でも第六感的に好きになることもあるけど、根底にはこのフィーリングが横たわっている。この人のためなら飲み込めそうだな、というとっかかりだ。それだけのダメージを受け入れる営みが私にとっての恋愛だ。だから一度誰かを好きになると簡単に諦めがつかなくなるし、連戦で恋愛なんてできない。実は今回は、前にお付き合いしていた人と別れてからあまり日の立たないうちにあの人を好きになった。というか、前の人の話を相談していたりしてたな。さっき言った「とっかかり」があったから深い相談もしていたのかな、と今更ながら思う。まあつまりは連戦で、これだけ重い性質の恋愛だと、なんというか、精魂尽き果ててしまう。正直もう何も続ける気力が残らない状態になってしまうというのが正解だ。…それだけでは説明がつかないところもあるけどね。これだけ好きになったのは、本当に経験があっただろうか。……全部が重い恋愛だからなー、なんともいえないな。というわけでそれだけ体重を乗せて生きていると、こうも連絡取れない時期が2-3か月続くともうメンタルはボロボロになるわけで、正直「2年間は仕事で必要とされているから意地でも生きる」という制限を設けてなかったらちょっと危うかったかもしれない。自分よわいな、よわよわだ。こういうとき、どうすればいいか分からない。しつこく連絡するのは絶対にダメだし、かといって時の過ぎゆくままに放置することも良くない。そしてなんて連絡するべきか。ライトな感じ?重めの感じ?言いたいこと、伝えたいこと、いっぱいあるな。けど、急に重いこと言っても、気持ち悪いよな。ああ、どうすればいいんだ。こういうとアレだけど、その場で会った人の心をつかむことにはかなりの自信がある。話題の中身、テンポ、会話のトーン。どういう思考のクセがあって、話すときの「目線」が何に根差しているか。けっこう読み取るの得意なんだ。そんなとき、話すべき言葉なんていくらでも思いつく。おべっかを使ったり心にもないことを言っているわけではない。心の底から思ったことを、相手に聞き取りやすい言葉で伝えるだけ。だからウソは一切ないし、ゆえに相手の笑顔にそのまま合わせていける。私はきっと、本質的には夜の仕事が向いているのだろう。だけど、あの人を前にすると何も出てこない。私の心が全てあけすけにされて、私はそれに慌てるばかり。向こうは何も探ってこないのに、私はドキドキとあの人の視線を追っている。ああもう困ったな。そんなとき、最近聴いてるこの歌を思い出したんだ。============何度でも 何度でも叫ぶこの暗い夜の怪獣になってもここに残しておきたいんだよ この秘密を(『怪獣』 作詞:山口一郎 作曲:サカナクション)============アニメ『チ。 地球の運動について』のテーマソングとしても使われている今作はまさにこのアニメの内容を描いたようなストーリーになっているけれど、誰かが持っている熱い想い、魂の欲する情熱というのは、全てのことに通じる人間の一番根っこの部分じゃないか。私の想いなんぞ人類がこの世の真理を知ろうとする世紀を超えた営みからすればおもちゃみたいなものだけど、同じように勇気づけられたことはここに残しておきたい。私はどんな人間なんだと考えたとき、本質的には決して器用な人間ではないと思い至った。じゃあもうストレートに行こう。そのかわり、相手を責めるつもりはないからそこだけは間違えないように。送信ボタンはあっけなく押されてしまった。これだけ思いを込めた文章も、いっさい読んでもらえないかもしれない。それでも伝えたい想いは、暴発しないだけの量を、ちゃんと乗せられたはずだ。日曜の夜。1日経って、2日経って。別に無視される覚悟も決めたんだ、もういいやっ、あとはままよと祝前日をいいことにゴールデン街で飲み明かし、ほうほうの体で帰宅した午前3時。泥のように布団に倒れ込む。携帯だけは充電しないと、とフラフラになった頭でなんとか携帯に目をやると、通知が1件。1か月ぶりの、あの人のアイコン。「不安にさせてごめん。今本当に忙しくて、ちゃんと返すからちょっとだけ待って」って、ずるい、ずるいよ。本当に……ずるいなあ。