どのような職業について自分の人生を表現するかという準備の大切なスタートの時を迎えました。
その記念すべき瞬間において、多くのご来賓の皆様、保護者の方々をお迎えし、平成二十四年度入学式を挙行できますことを感謝申し上げます。
ただいま、理学療法学科昼間コース83名、同じく夜間コース37名、作業療法学科42名、計162名の皆様に入学を許可をいたしました。
今日まで、そしてこれからを物心両面で、皆さんを側面から支えて行かれる方々のご恩に報いるために、本日、4月4日は、セラピストに成りたいという願望を、ならなければならないという意志を確認する大切な日です。
与えられた時間は、皆さんに平等に与えられています。
「いたずらに時を過ごさないように」と若者を諭したのは明治維新に大きく関わった吉田松陰でした。
次の舞台への誰にも平等に与えられた時間を、深く使ってください。
今年の選抜高校野球選手権は、本日この時間に決勝戦が重なっていますが、選手宣誓は「東日本大震災から1年、日本は復興の真っ最中です。被災された方々の中には苦しくて心の整理が付かず、今も当時のことや亡くなられた方を忘れられず、悲しみに暮れている方がたくさんいます。人は、誰でも答えのない悲しみを受け容れることは苦しくて、つらいことです。しかし、日本が一つになり、その苦難を乗り越えることが出来れば、その先に必ずや大きな幸せが待っていると信じています。だからこそ、日本中に届けます。感動、勇気、そして、笑顔。見せましょう、日本の底力、絆を。われわれ高校球児ができること、それは全力で戦い抜き、最後まであきらめないことです。今野球が出来ることに感謝し、全身全霊で正々堂々プレーすることを誓います。」という宣誓でした。
その言葉に重ねますと、今、この舞台に立っていることに感謝し、全力で学び抜き、国家試験合格まであきらめないで頑張ることを心の中で誓い、全身全霊で学業に全うすることを誓ってください。みせましょう、皆さんの中に目覚めようとしている底力、絆を。
理学療法士、作業療法士の国家試験に叶う力に変化させることは並大抵ではないことは十分認識されていると思います。
専門学校だから何とか資格を取って就職も何とかなるだろうと、努力しないで打算的な考えでは医療系の専門学校では通用しません。
全国の医療系の専門学校でどれほど多くの学生が、甘えと努力不足で挫折しているかを思いますと相当の覚悟が必要です。
幸いなことは、競争試験と違って資格試験です。競争試験は相当頑張っても、それ以上の人がいれば選ばれませんが、資格試験は自分との闘いです。
「努力したからといって成功するとは限らない。しかし、成功した人は間違いなく努力している」という言葉がありますが、私どもにとって力強いのは、理学療法士、作業療法士の国家試験への準備については、努力した人は間違いなく資格を取っているという現実です。
皆さんの人生において学院での3年間、夜間コースにおいては4年間ほど厳しい努力をしたことはなかったと、自分をほめてあげるような実績を作らない限り、進むべき道が遠のいてしまいます。
自分の人生のドラマの主人公は自分自身、その主人公を演ずるための経済的な支えを得るための学びでもありますから、その頑張りで半世紀ほどを生きる資格を得なければ成りません。
自分で頑張りきれなかったり、努力不足を他人の責任にして心を癒すのでは、いつまでも壁は乗り切れません。自分の努力不足として、自分の責任として受けとめるからこそ、エネルギーが湧いてきます。
『努力する者は希望を語り、怠ける者は不満を語る』~私の恩師の口癖でしたが、全国の津々浦々で一隅を照らす存在をライフワークとして取材しながら、その人たちに共通なことは、夢、目標を持っているという生き方、他人の責任にしない、いいわけをしない自分の責任として受け止める強い心を持った姿勢、どんな厳しさにも自分を成長させてくれる優しさだと感謝する姿勢でした。
フィリピンから来日して、日本の看護士の国家試験の合格者エバー・ガメッド・ラリンさんは、全く初めての日本語の勉強から初めて、書き上げたノートは1年足らずで百冊にも及びました。「スーパーへ行く以外はすべて勉強でした」と涙ながらに語られました。母国に残してきた子供に日本のすばらしい教育を受けさせたい、何が何でもの思いでした。
東京、山谷で看取りの仕事をされる山本雅基、美恵子ご夫妻は、現代のマザーテレサと称讃されていますが、最初の頃は、年寄りをだまして金儲けをしていると誹謗中傷を浴びます。私の気持ちが本物かどうか試しているのでしょうと語られるた言葉に畏敬の念を抱きました。心の決定者は自分自身です。
世界理美容選手権で、技術、芸術など史上初の四冠に輝かれた田中トシオさんは、勤務が終わった後からの特訓は深夜にも及ぶこと数年、何度も挫折しかけた体験から紡ぎ出された言葉は『夢は逃げない、自分が夢から逃げるだけ』『言い訳なんてすぐに用意できる』。
芥川龍之介の侏儒の言葉のなかに『運命はその人の性格の中にあり』という、実に的を得た言葉がありますが、私は、変え難い性格に加えて、その人が生きる中で培った人間力、正義感、倫理観、他者への寛容、そして自己研鑽の鍛錬から形成された人格に運命はありと確信しています。人は試練を経て力強く成長していくように仕組まれています。
今を力一杯目標に向かって生きる。私が生きているのは、今のこの一瞬しかない。この積み重ねがそれぞれの人生となっていきます。
医療系の学校で学ぶことは困難を伴いますが、国家試験の合格は大学を卒業するのと異なり将来が約束されています。物作りと違って、人の人生に関わる尊い天職への準備です。
経済的には大変だけれども、あんなに頑張っているから応援してあげようという雰囲気を生みだし、自分が多くの人に支えられ、応援されていることを受けとめ、感謝する気持ちが、自分の力をより引き出させると思います。
私ども教職員は、かくも、この学院で学ぶことは、人間を成長させるのかという形で、ご臨席の保護者の方々と卒業式を共にしたいという思いで一杯です。
失敗とはあきらめること、成功とは意志を持ち続けることだと言いますが、成功とは意志を行動に移して続けることです。
一生懸命な姿に、人は優しく手をさしのべたくなるものです。私ども教職員一同熱い思いを持って皆さんの理学療法士、作業療法士を天職として社会に貢献されることへの関わり、飛び立つ環境作りを、精一杯させていただきます。
ノーベル賞に最も近いと言われる村上和雄先生も取材したお一人ですが『こころと遺伝子』(実業之日本社)によれば、こころの働きは遺伝子の働きであり、良い遺伝子を鍛え、悪い遺伝子を抑えることが大切であることが述べられています。良い遺伝子を働かせることは時間と忍耐を要しますが、悪い遺伝子は実に容易に成長します。
世界的に著名な細胞生物学者ブルース・リプトン博士の『思考のすごい力』(PHP出版)では、この遺伝子を動かすのは、環境と教育であると結んでいます。
福岡保健学院の教育理念である『手に高い技術、頭に高度な知識、人には温かい愛を』を心して、最高の環境を持った本学院と熱い思いの教職員の指導をしっかり受けとめて頑張ってください。
教職員一同、皆さんがこの学院を選んで良かったという思いを抱いていただくために、時にはかわいそうだという気持ちを振り切って、厳しい言葉もかけますが、何事もプラス思考で受けとめて、強い人間力を育んでください。素直に受けとめ、頑張ることで、この学院を選んで良かったという感激に浸ります。
結びに、京セラ創業者稲盛和夫さんが色紙に好んで書かれる「良いことをすれば良い結果が出る、悪いことをすれば悪い結果が出る~人生の因果の法則」という言葉を贈ります。
終わりになりましたが、保護者の方々におかれましては、くれぐれも健康にご留意され、ご子息の理学療法士、作業療法士資格取得の最大の応援者として関わっていただきたくお願いして式辞といたします。