車椅子のおじさんの小説563 | 車椅子のおじさんのブログ

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 そして母親が安置されている場所を聴きに希美女の車椅子を押して、受付の所に向かった。

 受付の所に着いたら、そこにいた女の人にこう聞かれた。

受付の女の人 すみません。あなたたちは花さん親子ですか?

父親 そうですよ。

その女の人 受付の東です。裕三郎先生に「花さん親子をお母さまが安置されている所に案内してください」と言われましたから、ご案内します。

父親 それじゃ、お願いします。

希美女 お願いします。

 父親と希美女は、母親がいる病院の奥にある小さい霊安室に案内された。

東 ここにお母さまがいます。お邪魔になりますから、私はここで失礼します。

 東はそう言って、霊安室のドアを開けた。

父親 東さん、ここまで案内していただいて、ありがとうございました。

希美女 ありがとうございました。

 希美女と父親は東にそうお礼をして、霊安室に入っていった。

東 先ほど言い忘れてしまいましたけど、後で裕三郎先生が来ます。失礼します。

 東はそう言って、霊安室のドアを閉めた。

 霊安室は異体が1体しか入らない広さで、夕焼け空に輝く月が天窓から見えていた。

 母親の顔に白い布をかけられていた。

 ママの顔を見る?

 うん、

 希美女は、悲しそうな声でそううなずいた、

 父親は、かけられていた白い布を取って、希美女に母親の死に顔を見せてあげた。

 ママは死んでも。きれいだね。

 だけど、ママは生きてくれていた方がいいわ。

 パパも、そう思うわ。

 パパ、ママをできたら今夜家に帰らせてあげてもらいたいわ。

 たぶん大丈夫だろうけど、裕三郎くんが来たら、聞こうな。

 父親はそう言いながら、霊安室の隅にあった折りたたみ椅子を広げて希美女のとなりに座って、希美女の背中に手を回してやさしくなぜていた。

 希美女と父親がそう話していると、勤務が終わった裕三郎が来た。

 このたび、こんな事になってしまって、心から希美女さんのお母さまの冥福を祈ります。

父親 そう言っていただいてありがとうございます。さっきの電話ではワイフが倒れるのを目撃した人がいてこの病院まで運んでいただいた人がいたと聞いたけど、ワイフが死んだ状況をその人が言っていた?

希美女 ママが死んだ時の様子をできたら聞きたいわ。

裕三郎 俺が直接聞いたわけではないけど、受付の人に言ったみたいです。

希美女 その人が言ってくれて、よかったね。

父親 よかったね。

裕三郎 その人の話によると、中村雅俊の歌を歌いながら歩いていたお母さんは突然歩道に倒れ込んでしまったみたいだから、たぶん痛みや苦しみはあまりなくて、すんなりと行かれたと推測しますよ。

希美女 痛みや苦しみがそんなになくて、スッと行ったみたいだからよかったけど、やっぱりママが生きてもらいたかったなあ。

父親 できたらお礼をしたいから、どなたがワイフを運んできてくれたかをわかる?

希美女 私も、一言お礼を言いたいわ。

裕三郎 受付の人が名前を聞いてくれたけど、その人は道に倒れ込んだ人をここまで運んできただけです。人として当たり前の事をしただけだから、名乗らないですと言って、どっかに立ち去ったそうです。

希美女 お礼は言えないけど、その人は人としてものすごくかっこいいね。

父親 かっこいいね。

希美女 ゆうちゃん、今夜ママを家に連れて帰ってもらいたいけど、そうもらってもいいいかなあ?

裕三郎 いいよ。

希美女 パパ、いいだって。

父親 2シーターのコスモスポーツではママと希美女をいっしょに乗せらないから、2往復するか。

裕三郎 希美女さんを歩きで家に送っていきましょうか。

父親 それりゃ、助かるなあ。

希美女 そうだったら、早くママを連れて帰りましょう。

父親 ママ、帰るか。

裕三郎 それじゃ、お母さんをコスモスポーツまで乗せる車椅子を用意します。

 裕三郎はそう言って、霊安室から出ていった。

 その3分後、どっかからか車椅子を持って、戻ってきた。

父親 裕三郎車椅子を準備してくれてありがとう。

裕三郎 どういたしまして。

 父親は霊安室の別途に寝ていた母親を抱きかかえて、車椅子に乗せた。

父親 駐車場への近道を案内してくれる。

裕三郎 案内します。

 裕三郎はそう言って、希美女の車椅子を押して先に霊安室から出ていった。

 父親は母親を乗せた車椅子を押して、霊安室から出た。

 そして裕三郎の案内で、父親は裏口からコスモスポーツを止めてある駐車場に出た。

 コスモスポーツの助手席側に来た父親は、母親を抱きかかえて助手席に乗せた。

父親 それじゃ、行くよ。希美女を頼むよ。

裕三郎 希美女さんを家に送り届けます。

希美女 ママを私の部屋に寝かせてくれる。

父親 ママに添い寝してあげるのか?

希美女 そうだよ。いっぱい話しかけるの。

父親 いいなあ。パパも希美女の部屋に寝ようかなあ。

希美女 部屋の外から様子を見ていてもいいけど、部屋の中では2人っきりにしてくれる。

父親 なんだかママを希美女に取られたような気がするなあ。明日の夜。添い寝してあげよう。

裕三郎 これで親子の会話は終わりですか?

父親 話に夢中で、裕三郎くんの存在を忘れてしまったなあ。すまん。それじゃ、家に行くよ。

 父親はそう言って、コスモスポーツのエンジンをかけて、家に向かっていった。

 裕三郎は、母親が乗っていた車椅子を引きながら希美女の車椅子を押して、裏口に向かった。

 そして元あった所に空の車椅子を戻して、玄関から出ていって希美女の家に向かった。