「秀吉の弟」の正体③[部下の横領事件] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 世間もまた、秀吉でさえ気づかう秀長の実力を知ってか、彼が「関白になる」という風聞まで流れています。

 

 ところが、秀長は天正17年(1589)に湯治先の有馬温泉から京へ帰って重い病に伏せ、同19年(1591)正月に病死してしまいます。

 

 彼が永く生きていたら豊臣政権の命運も変わったといわれますが、そんな秀長の意外な一面を紹介しておきましょう。

 

 彼が亡くなった際、郡山城に蓄えられていた金銀は「金子五万六千枚余」と「銀子が二間(約3・6㍍)四方の部屋二棟いっぱいに積んであり、その数知らず」という状況で、このことから、金銀に貪欲だった一面が垣間見えます。

 

 さらに京の方広寺大仏殿建立に使う木材を大坂へ送るため、秀長が山奉行に命じたところ、その奉行が秀長に黙って過分に代金を支払い、その上前を懐にしたために木材が高騰。

 

 この横領事件が秀吉の耳に達し、秀長は天下の面目を失ってしまったといいます。

 

 不正はあくまで部下がしたことですが、秀長が本当に耳にしていなかったかどうかは不明です。

 

 ただし、いずれの情報も、秀長が寺領を削減した奈良興福寺・多聞院英俊の日記がネタ元で、恨みがあるはずですから、そこは割り引いて考える必要があるでしょう。

 

 

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