32歳でようやく裁判官になった藤原不比等がどうやって朝廷で力をつけていったのでしょう。
まず彼が天智天皇の隠し子だという説があります。
不比等の母、車持国子君(くるまもちのくにこのきみ)の娘与志古(よしこ)は、天智天皇の胤を宿した後に鎌足に下げ渡されたという伝承があります。
『竹取物語』で、かぐや姫に求婚する車持皇子のモデルが不比等だとされるのは、この天皇落胤説にもとづいています。
しかし、これを史実とするだけの確実な証拠がありません。
次は、県犬養橘宿禰三千代(あがたのいぬかいたちばなすくねのみちよ)を娶ったことによる妻のおかげ説です。
彼女は、天武天皇から持統・文武・元明の歴代天皇に女官として仕え、天皇家の信任厚い妻のコネを利用したとされる考え方です。
確かに不比等は娘の宮子を文武天皇の夫人(ぶにん=妻)とすることに成功し、その宮子が首皇子(おびとのおうじ=のちの聖武天皇)を産んで、不比等はその外祖父となりました。
また、もう一人の娘(安宿媛=あすかべひめ)がその聖武に嫁ぎ、臣下の娘で初めて皇后になったのです。
こうした婚姻戦略に妻三千代のコネが大きくものを言ったのは間違いないありません。
(つづく)
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