藤原不比等は、日本最古の法律・大宝律令制定の中心人物です。
右大臣として平城京(奈良市)遷都を主導した政治家でもあります。
以上、彼が「古代国家ニッポン」を創った男の一人といわれるゆえんです。
その不比等は、斉明天皇4年(658)に藤原鎌足(前号で詳述)の次男として生まれました。
しかし、彼が史料にその名を現すのは32歳のとき。
『日本書紀』によりますと、持統天皇3年(689)2月14日に任命された判事(裁判官)の一人に「藤原朝臣史」の名がみえます。
ここからは、「史」で「ふひと」と読み、もともとの彼の名が史であったことのほか、30過ぎになるまで世に埋もれた存在だった事実が浮かび上がってきます。
つまり、父鎌足の政治的地盤を引き継いだとはいえず、いわば、「2代目」の恩恵にほとんど預かっていないのです。
そのことはつまり、父鎌足があくまで個人的に天智天皇の信頼を得ていたに過ぎず、朝廷での政治的基盤を確立していなかったことを意味します。
それでは、32歳でようやく裁判官になった不比等がどうやって朝廷で力をつけていったのでしょうか。
(つづく)
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