「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」の真相(前編)[佐久間信盛父子の弾劾] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 天下統一の半ばにして斃れたカリスマ武将、織田信長の性格をよく表す歌として必ず紹介されるのが、江戸時代の随筆『甲子夜話』に掲載される「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」でしょう。

 

 そんな彼の性格を象徴する話が譜代の家老である佐久間信盛父子の追放劇です。

 

 天正8年(1580)8月、信長は父子に19ヶ条に及ぶ弾劾状を送りつけ、高野山(和歌山県)へ追放しました。

 

 信長の側近が書いた『信長公記』に弾劾状が全文掲載され、第一条にこうあります(以下、意訳)。

 

 

「(佐久間)父子は五年間も天王寺砦(大阪市)の主将をつとめながら、その働きは善くも悪くもなく、世間でも不審に思っていたが、我々も思いあたることがある」

 

 天王寺砦は、信長に抵抗する大坂城の本願寺に睨みを効かせる役目を担い、信盛は本願寺戦争の司令官でした。

 

 ところが、戦線は膠着。

 

 この年の閏3月にようやく本願寺から信長へ誓紙が差し出され、門跡の顕如が紀州の鷺宮(和歌山市)へ退去する取り決めが交わされました。

 

 信盛が司令官になって本願寺の降伏まで五年かかったわけです。

 

 こうして本願寺という敵がいなくなり、必要がなくなったホトトギス(信盛)を「もう殺してしまえ」とばかりにあっさりと切り捨てたのです。

(つづく)

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