本当は東海道を旅していなかった?「五三次の作者」安藤広重の謎③[御馬献上の儀式] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

跡部蛮の「おもしろ歴史学」

歴史ファンの皆さんとともに歴史ミステリーにチャレンジし、その謎を解き明かすページです(無断転載禁止)

 安藤広重が風景画家として名が売れ始めたころ、東海道を旅して例の53図の浮世絵(実際には起点の日本橋と終点の三条大橋を含むため計55図)を描いたというのが通説です。

 

 明治の浮世絵研究家である飯島虚心が記した歌川一門の伝記の「歌川広重」の項に、

 

「天保の初年、広重(が)幕府の内命を奉じ京師に至り、八朔御馬献上の式を拝観し、細かにその図を描きて上る」

 

 とあるからです。

 

 広重が幕府の命で朝廷に御馬を献上する一行に加わって上洛し、その際、東海道中をつぶさに観察して描いたというわけです。

 

 御馬献上の儀式は、毎年八朔の日(8月1日)に朝廷で行われる行事のために将軍家が関東一円から駿馬を選んで献上するもの。

 

 重要な行事です。

 

 また、『東海道五三次』のうち、「藤川宿」(愛知県岡崎市)では、馬と付き添いの武士らの一行に対し、町人らが下座するシーンが描かれ、これが御馬献上の一行を描いたものだとされています。

 

 つまり、「藤川宿」は、広重みずからその一員である御馬献上の一行が宿場を通る際の情景を描いたことになります。

(つづく)

[最新刊のお知らせ]

『超新説で読みとく信長・秀吉・家康の真実』

♯塗り替えられた戦国史の謎に迫ります!

 

※「辻大悟ノベルズ」からのお知らせ

別名のペンネーム(辻大悟)で書いた小説『キンカコ 八人のワンダラー』(kindle版)をリニューアルしました。

♯現在から見たキンカコ(近過去)の2000年が舞台。貸し渋りが横行する時代に、銀行へ不渡り手形を掴ませるチンケな詐欺を働いていた美人詐欺師と彼女を追う現職の刑事。その二人に大蔵官僚や病院の名物院長らを加えたワンダラーたち。その八名が国際犯罪組織の野望を打ち砕く痛快犯罪ミステリー小説。20年後、30年後の近未来に生きている自分たちのために、いま戦え!