一方、細川藤孝と吉田兼見は従兄弟どうしです。
藤孝が五月一二日から京の兼見邸に逗留していたことも確認できます。藤孝は京の兼見邸で二泊し、一四日の朝になって、わざわざ安土へ向ったことになります。
吉田兼見は光秀の敗死後、その関係を印象付ける日記の記述をすべて書き換えた人物。
「別本」というのは奇跡的に残っていた書き換え前の原本をいいます。
その兼見はかねてより、本能寺の変の黒幕の一人とされてきました。
藤孝は京の兼見邸で彼と二日間何やらじっくり話し合い、その兼見の話を光秀に伝えるため、わざわざ安土の光秀を訪ねたのではないでしょうか。
兼見との密談で二人は何を話し合ったのか――その内容について史料は何も語りませんが、そこで光秀の動機に繋がる何かが話し合われたのではないかと想像を逞しくしています。
(つづく)
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