南北朝争乱の英雄「二世物語」楠木正行編(最終回)[決戦四条畷] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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 『太平記』によりますと、正行は、吉野の後醍醐天皇の墓前で命をなげうつと誓い、吉野・如意輪堂の壁板にもその覚悟を示す歌を書き記したといいます。

 

 父正成が死を覚悟した「桜井の別れ」に似る話で、『太平記』の創作だと考えられますが、北朝軍の大軍を相手に正行が死を覚悟したのは事実でしょう。

 

 こうして河内国四条畷で両軍が激突します。

 

 正行は一時、北朝軍の本営に肉薄し、大将の高師直は上山六郎左衛門という武士に身代わりをさせ、難を逃れたといいます。

 

 しかし、正行はやがて力尽きて討ち死にします。

 

 北朝ではほっと胸を撫でおろしますが、師直が直義を出し抜く形で勝利をおさめたことで両者の対立はより激化します。

 

 そうしてジリ貧だった南朝が息を吹き返すのですから、正行は死後も南朝に尽くしたことになります。

 

 そんな彼に、足利義詮が敵ながら羨望の眼差しを送り、記事冒頭のような話が生まれたのかもしれません。

 

 

※来年の1月4日からブログ掲載をはじめます。

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以下お知らせ

【著者新刊情報】『江戸東京透視図絵』(五月書房新社。1900円+税)

編集者「町歩きの本をつくりましょう。町を歩きながら、歴史上の事件を“透かし見る”という企画です」

筆者「透かし見る?」

編集者「そうです。昔そこであった事件や出来事のワンシーンをイラストレーターの先生に描いてもらい、現実の写真と重ね合わせるんです。つまり、町の至る所に昔を透かし見るカーテンのようなものがあると考えてください」

筆者「それってつまり、“時をかけるカーテン”ですね。そのカーテンがタイムマシンの役割を果たしてくれるんですね!」

編集者「まあ、そんなところでしょうか……」

筆者「やります、やります。ぜひ書かせてください!」

という話になって誕生したのが本書。新しいタイプの町歩き本です。

 

【著者新刊情報】『明智光秀は二人いた!』(双葉社、1000円+税)

明智光秀はその前半生が経歴不詳といってもいいくらいの武将です。俗説で彩られた光秀の前半生と史料的に裏付けできる光秀の後半生とでは大きな矛盾が生じてしまっています。そこでこんな仮説をたててみました。われわれは、誰もが知る光秀(仮に「光秀B」とします)の前半生をまったく別の人物(仮に「光秀A」とします)の前半生と取り違えてしまったのではなかろうかと。この仮説に基づき、可能な限り史料にあたって推論した過程と結論を提示したのが本書です。 したがいまして、同姓同名の光秀が二人いたというわけではありません。最近では斎藤道三について「父と子の二代にわたる事績が子一人だけの事績として誤って後世に伝わった」という説が主流になっています。そう、斎藤道三も「二人いた!」ということになるのです。

【著者新刊情報】『超真説 世界史から解読する日本史の謎』(ビジネス社、1600円+税)

 日本史が世界史の一部であることはいうまでもありません。そこで大真面目に「世界史から日本史を読み解いてみよう」と考えました。その結果を最新刊に凝縮させました。 弥生・古墳時代から現在に至るまで、日本は東アジアはもとより、ヨーロッパやイスラム諸国からも影響を受けながら発展してきています。弥生時代の「倭国大乱」から明治新政府による「日韓併合」まで、日本史を国際関係や世界史の流れから読み解きました。