「斎藤道三は二人いた!」になったのはなぜか?④[一文銭の計り売り] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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合戦や謀略にいくら長けていたとしても、それだけで国が治まるはずはありません。

 

道三には、洪水対策や道路の整備などといった民政上の施策にみるべきものがなかったことに加えて、『信長公記』によると、道三治世のもと「小科の者」でも牛裂きや釜茹での刑に処する恐怖政治が行われたと記されています。

 

道三も、家臣や領民の評判がよくなかったことを自覚していたはずです。

 

そこで、彼自身、油売り商人から美濃の実権を握るまでに成り上がった父の事蹟をわがものとして吹聴したのではないでしょうか。

 

 道三の父・新左衛門は後の世にまで語られる逸話を残しています。

 

 いわゆる一文銭の計り売りです。

 

 還俗して油売り商人の山崎屋庄五郎となった道三の父は、柄杓ですくった油を一文銭の穴から通し、「もし穴より外へ、少しにても懸りしならば、油を無償にて進ずべし」といって売り歩き、評判が評判を呼んだという話です。

 

(つづく)

 

【著者新刊情報】『江戸東京透視図絵』(五月書房新社。1900円+税)

編集者「町歩きの本をつくりましょう。町を歩きながら、歴史上の事件を“透かし見る”という企画です」

筆者「透かし見る?」

編集者「そうです。昔そこであった事件や出来事のワンシーンをイラストレーターの先生に描いてもらい、現実の写真と重ね合わせるんです。つまり、町の至る所に昔を透かし見るカーテンのようなものがあると考えてください」

筆者「それってつまり、“時をかけるカーテン”ですね。そのカーテンがタイムマシンの役割を果たしてくれるんですね!」

編集者「まあ、そんなところでしょうか……」

筆者「やります、やります。ぜひ書かせてください!」

という話になって誕生したのが本書。新しいタイプの町歩き本です。

 

【著者新刊情報】『明智光秀は二人いた!』(双葉社、1000円+税)

明智光秀はその前半生が経歴不詳といってもいいくらいの武将です。俗説で彩られた光秀の前半生と史料的に裏付けできる光秀の後半生とでは大きな矛盾が生じてしまっています。そこでこんな仮説をたててみました。われわれは、誰もが知る光秀(仮に「光秀B」とします)の前半生をまったく別の人物(仮に「光秀A」とします)の前半生と取り違えてしまったのではなかろうかと。この仮説に基づき、可能な限り史料にあたって推論した過程と結論を提示したのが本書です。 したがいまして、同姓同名の光秀が二人いたというわけではありません。最近では斎藤道三について「父と子の二代にわたる事績が子一人だけの事績として誤って後世に伝わった」という説が主流になっています。そう、斎藤道三も「二人いた!」ということになるのです。

【著者新刊情報】『超真説 世界史から解読する日本史の謎』(ビジネス社、1600円+税)

 日本史が世界史の一部であることはいうまでもありません。そこで大真面目に「世界史から日本史を読み解いてみよう」と考えました。その結果を最新刊に凝縮させました。 弥生・古墳時代から現在に至るまで、日本は東アジアはもとより、ヨーロッパやイスラム諸国からも影響を受けながら発展してきています。弥生時代の「倭国大乱」から明治新政府による「日韓併合」まで、日本史を国際関係や世界史の流れから読み解きました。

 

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