「江戸の盗賊列伝」(雲霧編)④[小判の極印] | 跡部蛮の「おもしろ歴史学」

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仁左衛門と小猿は、三吉にむしり取られた分を取り返そうと、ふたたび盗みを企みます。


二人は黒装束に身を包み、両替町の両替商・島屋治兵衛方へ押しこんだのです。


ところが、千両箱に手を伸ばした瞬間、目を覚ました番頭に気づかれてしまいます。


仁左衛門は店の者三人を斬り払い、何とか逃げ切って、二人は五〇〇両ずつを手にします。


ここでも仁左衛門は「殺さず……」という掟に触れています。


しかし、悪いことは露見するものです。


両替商の治兵衛が店の印として小判に極印を押していたため、小猿が使った小判から足がつき、二人はお縄となって、これまでの悪事がすべて明るみに出ます。


そうして、品川鈴ヶ森(すずがもり)の刑場で獄門にかけられるのです。


一方、関所破りしたとはいえ、文蔵には義父を見舞うためという事情もあります。


そこで大岡越前は、文蔵夫婦は道に迷った挙句、盗賊に金を盗まれた被害者であり、決して関所破りしたわけではないと結論付けます。


つまり、情けある“大岡裁き”に文蔵夫婦が助けられたという落ちになっているのです。


 以上の『大岡政談』に載る話はまずフィクションと考えられていますが、実録小説という形をとってる以上、時代はずれていても登場する人物が実在することはよくあります。


 仁左衛門の話もそうです。


(つづく)




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