私はいったい何のために乙女ゲームをするのだろう。
結婚出産を経て完全に恋愛市場から撤退した私。
今リアルの恋愛をしたいですか?と聞かれたら、否。不倫ダメとかそれ以前の問題として、もうそんな体力はない。恋愛ほど面倒で情緒が揺さぶられ疲れるものは、ない。
だから、リアルの恋愛の代わりに乙女ゲームをしているのかと問われれば、半分合っていて半分間違い。正確には恋愛のいい部分だけを抽出して楽しみたくて、乙女ゲームをしているのです。
その意味でリアルを追求した乙女ゲームは、私の求めているものとは違うのかも知れない。
 
そんなことをツラツラと考えさせられました、囚われのパルマよ。
何がリアルだバーカ、あんなイケメン、ガラス越しにだって会えるわけないだろターコ
と言われれば、はいおっしゃる通り。
 
しかし、ネオロマ生まれネオロマ育ちの私にとっては、囚われのパルマは「うっわリアル…」と驚愕せざるを得なかったのです。
 
確かに設定は突飛。といっても、現代日本であって、宇宙とか戦国時代ってわけではない。
やることも、宇宙の女王目指すわけでも怨霊倒すわけでもなく、(監視はともかく)面会して差し入れしてメッセージ送って…って至って現実的。
私はSwitchでプレイしたのですが、これスマホでやったら、メッセージのやり取りとか没入感すごいだろうな。本当に生きてる相手とやりとりしてると勘違いしそう。
そして、3Dのグラフィック。これが最近のゲームなんだね。。面会の時の、ちょっとした目の動きとか微妙な表情変化とかがリアルすぎて、目が離せない。喜怒哀楽の数パターンの漫画絵がパチパチ切り替わるだけのネオロマに慣れた私には大変なカルチャーショック。
 
このリアリティゆえか、プレイ時の心の動きが、現実の心の動きに近くなっちゃうんだよね。。
結果、ストーリー全般通して仄暗い罪悪感を感じ続けてしまったのです。
 
いや、誤解のないように言っておくと、非常に萌えました。
まずさ、当たり前だけど、ハルトの顔がイケメンすぎるじゃない。近づいてきた時の、青い目がうるうるきらきらするの、あれは反則だよ…。
こちらから告白した後、突然自分の頬ひっぱたいたのは可愛すぎて悶えたし、「会いたい…」のメッセージとか割と素で送ってました。
 
でもさ、そもそも設定がさ、罪悪感をそそるのよ。
刑事施設でもないのに、若い健康な男の子を1年以上独房に監禁して、しかも24時間無断で監視ってヤバくない…?人権問題…?こんなことしていいの…?(よくないに決まっている)
ってか監視って!そんな当たり前のようにタブレットで監視って!留守中のペット見守るんじゃないんだから!うっかり鼻ほじってるのとか見ちゃったらどうすんだ!(でも見ちゃう)
 
と、驚愕の設定に慄きながらの初面会。
見た目は、いかにも傷つきやすそうな薄幸の美青年。
うわ、フード被ってるよ!初対面の人に「うるさい」とか言ってるよ!ATフィールド全開だよ!!…まあそうだよね、記憶なくして1年以上監禁されてたら、そりゃ多少腐るよね、かわいそうにね…
と、庇護者目線、例えていうなら少年事件の弁護人モードに陥ってしまう。
こんな心持ちで気軽に「疲れた…」とかメッセージ送れません。だってハルトに悪くて…。
 
つついたら喘ぐミニゲームに至っては、なんかもう悪いことしてる気しかしなくて、数回しかできませんでした。
 
部屋でコントする守護聖とか、シュールな場面にはそれなり立ち会ってきたので、大概何でも大丈夫と思っていましたが、3Dの破壊力は凄かった。
メモリアル面会で、ロックにはまって熱く歌いだした時は、びっくり。でもすぐに「えっあっでもこれ引いたりちゃかしたり笑ったりしちゃダメな奴だ…傷ついちゃう…!」と思い、居住まいをただす。
別のメモリアル面会で、ガラス越しに妄想遊園地ごっこ始めた時も、「こ、これは…でもそうだよね、お外出たいよね…付き合ってあげなければ…」と謎の覚悟を決めてしまう。
そして、「好きなものが見つかってよかったね」「楽しめてよかったね」と、母性本能を刺激されまくる。
 
母性本能をくすぐられたが最後、私は一応リアル母なので、ハルトが絵とか手作りアクセサリーとか送ってくれても、若干子どもから手作りプレゼントもらうみたいな感覚に陥ってしまい、違う違うそうじゃないと私の中のマーチンさんが歌い出す。
 
かと思えば、実はアメリカ帰りの優秀な研究員だと分かった瞬間、「なんだ、優良物件じゃん…」という、忘れかけていた仄暗い値踏みの心が自分の中に生まれてしまう。まだまだ私もただの女だった。
嫌な話だが、現実世界では恋愛対象の男の人のスペックは当然気になり、こっそり値踏みしてしまうもの。それと同じ後ろ暗い気持ちが巻き起こったのです。
何と!ゲームのキャラクターに対して!リアルすぎるが故の弊害!
 
ガラス越しにおでこくっつけて熱測るシーンでは、もう爆発してしまった。
「えっ絶対この面会監視されてるよね?大丈夫?ハルト人の感情見えるんだよね?次看守さんに会った時気まずくない?そんなこと気にならないくらいおでこくっつけたいの?ってかさ、アクリルガラス越しに熱測れるかな?そんなに熱伝導率高いかな?ハルトは化学屋だからそんなこたぁわかってやってるのよね?あと、実は最初から気になってたんだけど、しきり板に穴空いてないと、向こう側の声聞こえなくない?」
などと、おでこをゲーム画面にくっつけるという人生初の体験を前に動揺しすぎて、どーでもいいことが気になり出してしまった。すごいリアルな感情の動き!

いやね、イケメンが念じたら惑星に建物が建つとか、女子高生が怨霊倒すとかに比べたら、アクリルガラスに穴が空いてないとか、どーということもないレベルの話しですよ?
 
ただ、実は私、昔仕事で、拘置所とかで、収容者の人とリアルの面会したり差し入れしたりしてたのもあって、ハルトがリアルすぎるが故に、こっちの心もすごく現実的に反応して、妙なところが気になっちゃうんですよ!!
 
ちなみに、面会室のアクリル板は、だいたい真ん中に小さい穴が何個もあいてました。でも、穴があいていても、ぼそぼそしゃべってると声聞こえないんだよね…。
真ん中に穴のないアクリル板もありましたが、その場合は、スピーカーで向こうの声が聞こえるようになってました。これは割と聞き取りやすかった。パルマの面会室も、この仕様(という設定)なのかな?
ハルトが「こっちは寒い/暑い」とかいうのあったじゃない?あれねー、本当にアクリル板のあっち側は冷房なしで暑くて、こっち側は冷房ありで涼しいとかってなると、アクリル板が曇るんだよね…。その曇りがさ、あちらの世界とこちらの世界の隔絶を妙に浮き彫りにするんだよね。あちらに申し訳ないような気になって、いたたまれなくなるんだよね…。

アクリル板越しにヤク中のおじさんからナンパなのかセクハラなのかわからんこともされたっけな…。私がほれっぽいのは二次元限定だし、少なくともあーたが好みでないことだけは確かだよ!!

ってか、皆さんコロナでアクリル板遭遇率が劇的に上がったのでご存知と思いますが、アクリル板って飛沫とか飛んでて結構汚いのよ。絶対手とかおでことかつけたくない感じあるよね。
現実のアクリル板なんてそんなもんよ…。

まあ、そもそもゲームだし、ハルトは刑事施設に入る人(例えば風呂は週数回)よりはだいぶマシな暮らし向きなんだけど、なんか記憶が蘇って、かわいそうっていうか、こうどことなく後ろ暗い気分になっちゃうんだよね…。

 
と、リアルすぎるが故に罪悪感その他もやもやに苛まれ続けた囚われのパルマですが、全くリアリティのない部分もある。このアンバランスが何とも言えず、モヤモヤする。
 
主人公はあなた!とのことで、ちゃんと攻略サイトは見ないで、正直に選択肢選んでいったのですが、失敗しない。突然「完」とか出ない。もう新鮮!これが最大のモヤモヤポイントなのです。

囚われのパルマは「選択肢に正解がない」というのがウリなようですが、それって最高にリアルじゃない気がする。
コミュニケーションって常に相手があって成り立つものだから、自分の思うがままに行動して、それを相手が全部受け入れて好きになってくれるなんて、ありえないじゃない?
あの全肯定男ユエですら、さすがに女王候補としての責任感みたいなのは必要でしょ。
自分の上位に立てそうな女しか好きになれないという、それどーかと思うよみたいな歪みを抱えたロレンツォの方が、よっぽど現実味を感じちゃうのよ。
 
他人は変えられない、変えられるのは自分だけ。
普段の生活でも、円滑なコミュニケーションのために、相手の好きそうなタイプに合わせて多少はキャラ変えて演じるよね。上司には上司向けの、後輩には後輩向けの、義母には義母向けの…少なくとも私はそうしてる。
だから、正直な私の物言いに合わせて、本当にそこにいるかのような超リアルな「ハルト」が変化するっていうのがさ、最高にリアルじゃないんだよね。何なんだろうね、この矛盾。
 
この矛盾を解消しようと頭を巡らせる。
好き勝手振る舞って、それでもハルトから好かれるのだとしたら、それはたぶん私が好きというよりも、この特殊な状況・環境に呑まれてるだけじゃないかな、そこに漬け込んで申し訳ないね…と、やっぱり罪悪感に苛まれる。
いやそういうゲームなんだから、素直に楽しめばいいんだけどさ、何なんだろうね。
 
リアリティを感じるには、突飛な舞台装置があった方が、むしろリアリティが浮き立って感じやすいのかな。
十二国記とか、王だ麒麟だ半獣だってファンタジー中のファンタジーだけど、そこで語られる人間の本質みたいなのはすっごくリアルだしね。
 
…と、乙女ゲームにおけるリアリティの追及って、最高に矛盾した概念なんだなってしみじみと思わされました。
色んな意味で初体験だった、さすがに売れてるゲームは一味違うね。
 
あと、個人的に増やして欲しいのは政木さんルート。政木さん、粘着質で常軌を逸している(褒めている)。リアル刑事施設で政木さんに面会するゲームは、個人的にかなりくるかもしれない!カプコンだから逆転裁判風味でもいいかもね!(逆転裁判やったことない)
 
そして、こんだけグダグダツラツラ言っておいてですが、当然、アオイもチアキもプレイするよ!
あーたーのーしーみー!