『ダイナマイトどんどん』を観ました。
終戦から間もない昭和27年。北九州の警察署にヤクザの親分たちが呼び集められる。
ヤクザの抗争が絶えない事に頭を抱える署長は、この問題を民主的に解決する事を提案。その方法として、ヤクザの組同士による野球大会で勝負を付けようというのだ。
古くから因縁が深い岡源組と橋伝組との勝負は、街の人々も注目するカードだ。
岡源組の切り込み隊長と呼ばれる加助もやる気を出し、岡源組の岡源ダイナマイツは勝利を重ね決勝にまで行き着く。
しかし、加助とは反りが合わないながらもバッテリーを組んでいた銀次は橋伝組に弱みを握られ、橋伝カンニバルズに引き抜かれてしまい……といったお話。
要約すると、ヤクザ同士が野球で勝負をする話です。
戦争の代わりにルールを重んじるスポーツ(的な手段)で勝負をつけるという話はSF作品でよく見掛けます。『ロボ・ジョックス』とか『機動武闘伝Gガンダム』とかね。
それと似たような事をもっと昔に、ヤクザがドスをバットに代え、砂やほこりにまみれながら大真面目に野球に打ち込むという突飛な発想に脱帽です。もうそれだけでコメディ作品確定じゃないですか(笑)。
所々でホロリとさせるシーンもあるけど、基本的には深いテーマやメッセージもなく、純粋な娯楽作として老若男女で楽しめます。
最初から子供に向けていない事は分かるけど、過剰なエロやグロがないのが好印象です。
娯楽作の割に、尺がチト長め=142分もあるのが惜しいかな?
試合のシーンだけでなくクライマックスの大乱闘も冗長に感じたし、その辺をスリムにすれば2時間未満でちょうどいい尺に収まってたかも?
銀次目当てに橋伝組に殴り込みに行くシーンも、あんなに長くしないで良かったかな。
常にヤクザの小競り合いがある無秩序な街が一転、それまで幅を利かせていたヤクザが住民に媚びを売るような演説をするようになる始末。
住民もヤクザを野球選手と見なすようになり、
「あんたヤクザね、どこ守っちょるとね?」
なんて台詞が本作の世界観を象徴しています。
そして野球をやらないヤクザはモテないという、もう色々とヘンな世界です(笑)。
主演は菅原文太さん、さらに北大路欣也さんや金子信雄さんや田中邦衛さんらの名が連なっているのを見れば、ま~た東映のヤクザ映画かと思う人も少なくないはず。
まぁヤクザ映画に違いはないものの、ヤクザという無秩序な連中が野球という変えようのないルールに則って決着を付けようとするギャップが楽しい作品です。
それ故、キャストのコメディ芝居も面白く、特に主人公である加助を演じる文太さんは『トラック野郎』で培ったそれを如何なく発揮しています。そもそも、『仁義なき戦い』のようなテンションでできるお話じゃないしね(笑)。
特に注目すべきは橋伝組の兄貴分である花巻を演じる岸田森さんで、岸田さんってあんなコメディ芝居もできちゃう人だったんだ?と、いい意味でイメージが崩れましたね。
加助のライバルである銀次を演じるのが北大路さんというのも意外で、背広かチョンマゲ姿のイメージしかなかったものですから(笑)野球のユニフォーム姿が新鮮に見えます。ピッチングのフォームがダイナミック!
ピッチングのフォームと言えば、雇われピッチャーの作蔵を演じる田中邦衛さんのそれは独特すぎて吹き出してしまいます。
ガラの悪い人が健全な何かに熱中するというシチュエーションって、いかにも令和の漫画やドラマにありそうという意味で、割と本作はリメイクしやすいお話なのかもしれません。その際は野球のシーンに重きを置くようになるんだろうな。
が、本作を見知りしてしまうと、あれくらいに品のない言葉を発する方が劇としてのヤクザっぽさがあるので、現代の倫理規制を鑑みると、お上品なヤクザさんになっちゃうんだろうね。…うん、つまらなくなるの確定だ!
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今回、俺ッチが観たのはBSプレミアムで放送されたものだったんですが、そんな言葉やあんな言葉を無修正のまま製作者の意図を尊重して放送してくれて……何と粋な配慮!
古い作品を放送するのに、令和最新式のモラルを持ち込む事はないんだよな。


