観た、OO7『ドクター・ノオ』 | Joon's blog

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『ドクター・ノオ』を観ました。

 

妨害電波によるミサイル事故を調査していたストラングウェイズとの通信が途絶えた事から、MI6はOO7ことジェームズ・ボンドをジャマイカに派遣する。

同じく事件を調査していたCIAのライターと合流したボンドは、ストラングウェイズがクラブ・キーという小島から持ち帰った石が放射能を帯びている事に気付く。そこは現地人が恐れて寄りたがらない、とある中国人が所有する謎の島だった。

クラブ・キーに着いたボンドは貝殻を収集するハニーと出会うが、島の監視網に引っ掛かってしまう。

ボンドたちを捕らえたのは島の所有者であるドクター・ノオ。例の妨害電波はここから発せられたものであるだけでなく、それがドクター・ノオという一個人の意思ではない事を知ったボンドは……といったお話。

要約すると、妨害電波の発信源を調べるために行動するスパイの話です。

 

後にOO7シリーズとして長く続く、記念すべき第1作。

そしてスパイという職業が世に周知されるようになったのはOO7シリーズによるものだと思います。

ちなみに、“OO7”の読みは“ダブルオーセブン”ね。

シニア層であれば“ゼロゼロセブン”と呼んじゃうんでしょうが、日本での初公開時は『007は殺しの番号』というタイトルだったらしく、そこに起因するのかもしれませんね。

そんな世代からすれば、「“ドクター・ノオ”って何じゃい、“007は殺しの番号”じゃろ!」とでも言いたくなるのかな?

後年でいうところの、「“ジェダイの帰還”じゃねぇよ、“ジェダイの復讐”だろうが!」ってのと似たようなものです(笑)。

 

自分の行動一つが国家間の問題に発展する可能性を秘め、さらには世界危機にすら発展しかねない……本作を観れば、スパイがそれほどまでにハードな職業である事が伺えます。

そんな責任重大な任務を任されている割に、性格はかなり軽薄なのがボンドというキャラの魅力であり、OO7シリーズを飽きさせない理由の一つだと思います。

任務をキチンとこなしながらも、いつでもユーモアを忘れないのは自信やゆとりがある表れで、つまり仕事がデキる人間である証なんですよ。

そういう意味において、ジョークもロクに言えないダニエル・クレイグ版ボンドには違和感しかなく、もはやボンドというキャラが破綻しているんですよね。

常に緊張感が走っているような、一片の笑いもないくらいにシリアスな作風であれば、その時点でOO7シリーズと認められないんですよ。

 

OO7(の“OO”)とは殺しを許された者に与えられるコードネーム、いわば殺人許可証です。

そんなセリフを裏付けるようにボンドが人を殺すシーンはいくつかありますが、それが最後の手段ではなく、下手すれば楽しんでいるように見える事もしばしば。

冷酷なだけでなく、残忍さをも秘めているボンドは本作の見どころです。中でも、自分を迎えに来た車の運転手が偽物である事を知った時の薄笑いにはゾッとさせられます。

例えば見張りに発見された際、ちょっとした格闘の末に相手の意識を失わせるシチュエーションは多くの映画で見られる定番ですが、この人が気が付いちゃったらソッコー報告されちゃうじゃん?と心配になりませんか(笑)?

が、本作におけるボンドはキチンと先行きを考え、しっかり殺すんだから効率的、かつ冷酷です。後のシリーズではこれが抑えられ気味なのはチト惜しいですね。

 

本作最大級の見どころと言えば、ハニーの初登場シーンです。

水着を着た女性が歌を口ずさみながら砂浜に上がってくる、たったそれだけのシーンなのにスゲー画ヂカラを感じるんですよ。

今でこそ水着と言えばビキニが定番だけど、この頃はある程度のスタイルを持つ人でなければ着なかったでしょうから、公開当時に映画館でこれを観た人の衝撃は計り知れません。

今回の鑑賞で思ったのは、ビキニだけではなく腰にデカいナイフを提げているのも、ハニーというキャラを表すいい演出になっているんだなと。

貝を採取するための物でありながら、ハニーは過去に性被害を受けた経験があるらしく、そこから自分を護るためのツールとして肌身離さず身に着けているんだろうなという想像もできます。

 

今作の敵はドクター・ノオ。

両手が義手になっていますが、それぞれの作品における最終的な敵は何かしら身体に障害を抱えているという今後のシリーズの定番は今作より始まっているようです。

そんなドクター・ノオから、今回の事件は巨大な組織スペクターの意思が働いている事が示唆されます。それまでは何を言われても既知であるが故に動じなかったボンドが、初めて冷静を欠く良いシーンです。

その実態は何も分からないまま終わるのは、続編への可能性を持たせる、今なら匂わせとして受け取られるんでしょう。

後のシリーズでは、これが叶わなかった組織もいくつかあるんですよね、ヤヌスとかクォンタムとか…。

 

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Blu-ray版は映像特典満載で嬉しいですね。本編のダイジェストは要らないかな。