観てきた、『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声』を観てきました。

 

西暦200年。将軍アカシウス率いるローマ帝国の大艦隊がアフリカ北部のヌミディアに押し寄せる。

応戦も虚しくヌミディアは敗北。生き残ったヌミディア兵は捕虜となり、その中には先の戦いで妻を殺されたハンノの姿もあった。

奴隷商人マクリヌスの目に留まったハンノは、闘技場で闘う剣闘士=グラディエーターとして育成させられるべくローマに連れて行かれる。

ローマは残虐な双子の皇帝ゲタとカラカラにより統治され、元老院が口を挟めない状況に市民の不満も膨らんでいる。

ついに闘技場に出されたハンノたち。人間だけではなく猛獣にも果敢に立ち向かうハンノは大衆の喝采を浴びるように。

そんなハンノから何かを感じ取った前皇帝の姉であるルッシラは、過去の出来事を思い出し……といったお話。

 

『グラディエーター』の続編がどうこうという話が聞こえ始め、ホントにやるの?と話半分に受け流していたら、もう公開が間近だったというね。大作のはずなのにプロモーション期間=焦らす時間が短かった気がします。

前作は映画としては綺麗な終わり方だったけど、諸問題は解決できていませんでしたからね、やろうと思えば続きなんかいくらでも考えられるとは言え、ここでもまた次世代のお話=息子商法をやるのかとガッカリします。

この商法は、人間は歳を取るほどノスタルジーに弱くなる心理を付いた作戦なので、前作からのスパンを空けるほど容易く釣れちゃうんだよね。お得意の泣いた泣いたレビューも多くなるんでしょう(笑)。

 

そんな息子商法があからさまなのが宣伝で、どこもかしこも本作の紹介文には”ルシアス”という名があり、もう1行目からネタバレ上等というね。

↑にある俺ッチ謹製(?)の粗筋にある、“ハンノ”という名を出しているメディアって皆無なんですよ。

前作を見ている人なら「ハンノってまさか…?」と、見ていない人ならハンノの出自が徐々に明らかになる過程を楽しめるのに、色々と台無しだよ。海外ではどう紹介されていたんだろう?

そもそも、ルシアスの両親が確固たるものになってるのも無粋に思えます。

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前作のBlu-rayに収録されている、監督のリドリー・スコットさん&主演のラッセル・クロウさんの音声解説によれば、ルシアスの父親は曖昧にしたと言ってたのにさー…。

今作では当時のルッシラは囲えるくらいに愛人があり、もしかしたら兄のコモドゥスも……という言及がありましたが、この辺を謎解き要素に使っても良かった気がします。

 

ハンノが奴隷から剣闘士になる流れはお定まりのパターン。

前作のマキシマスは渋々闘っていましたが、ハンノに関しては闘志メラメラです。祖国や妻を奪ったローマに対する恨みつらみに満ち満ちていているせいか、防御よりも攻撃を大優先するような感じで白熱します。画面内の観客に混じって歓声を上げたくなるくらい。

ストイックで朴念仁のようなマキシマスに対し、人付き合いも良く冗談も解するハンノには好感が持てますね。

 

今作でローマを仕切っているのは双子の皇帝であるゲタとカラカラ。

日本人からするとチト吹き出しそうなネーミングですが(笑)、性格は残忍そのもの。すぐそこで殺し合いが行われていても目を輝かせてしまうくらいにハシャいでしまうような困った人たちです。

皇帝が二人という変わったシチュエーションなんだから、もっと性格の違いを出した方が良かったんじゃないかな? 二人とも似た性格なら一人で済むんだし。

皇族でも何でもない上に人格にも問題が多いあんな二人が、どうして皇帝の座に就けたのかもう少し説明が欲しかったなぁ。

 

キャスト面では、マクリヌスを演じたデンゼル・ワシントンさんが注目です。

ひと昔(ふた昔?)前では常に清い人を演じてきたデンゼルさんが、腹に一物あるような悪人寄りのキャラを演じるようになるとは、時代の流れを感じるね…

 

取るに足らないかもしれませんが、久々に凝ったタイトルデザインを観た気分。あれを見れば”英雄を呼ぶ声”なんてダッセー副題が実に無粋に思えます。

油絵調ビジュアルで前作をダイジェストするオープニングクレジットは一見の価値がありますよ。

 

ビジュアルに関しては、これこそ劇場で見るべき価値があります。目線の高さよりも数列前の席で、気持ち画面に近付いて観ると迫力が段違いですよ。

それに対してストーリーはというと、前作で見せた愛や友情、政的な謀略といった要素もあるにはあるけど、どうも薄いんですよね。闘技場にサメが出るなんて流行に乗ったミーハーな真似なんかしないでくれよ。

前作で叶えられなかったマキシマスの悲願を成就させようとするのはいいんですが、あってもいいけどなくても困らない程度の、蛇足気味に思える作品でした。結局、グラディエーターシリーズはマキシマスありきのお話なんだよね。

そして困った事に(笑)、リドリー監督には第3作の構想もあるそうです…。

 

…と、締めには劇場プログラムを紹介するのが当ブログの常ですが、本作に向ける最大の失望は、劇場プログラムが存在しない点です。売り切れじゃなくて、発売していないんですよ。ぶっちゃけありえない。

自分のお金で映画館に行くようになって数十年、プログラムの存在=鑑賞記録として、売り切れていたら再び足を運んででも、自分が観た作品のプログラムは必ず買ってきた俺ッチでしたが……このルーチンワークをブッ壊したのは、もはや罪!