『脱出』を観ました。72年版ね。
ダムの建設により、数カ月後には消えてしまう川でカヌー下りを楽しもうとする4人の男たち。
上流を見つけた男たちは二組に分かれて川下りを始める。文明社会を忘れ、大自然を楽しむ男たち。
翌朝、カヌーを降りてひと休みしようとするエドとボビーの前に二人の男が現れる。銃を突き付けながら因縁をつけてくる男たちの言われるがままにエドは縛り付けられ、ボビーが暴行を受ける。
そこにルイスとドリューのカヌーが遅れてやって来る。男の一人はルイスの弓矢に射抜かれ、もう一人は山中に逃げていく。殺した男の処置を巡り喧々諤々のやり取りをした結果、男の死体を埋めて隠匿する事に。
再びカヌーで下流を目指す4人は激流に遭遇。一艘のカヌーが損壊し、ルイスは骨折、ドリューは流されて行方が分からなくなるという最悪の事態に陥り……といったお話。
ダム建設のためになくなってしまう前に一度、カヌーで川遊びをしたいというオジサンたちのノスタルジーから始まる本作。都会暮らしからの解放を求め、大自然と戯れる姿は昨今流行り(もう廃れてるか)のキャンプみたいなものです。
左右を木々に挟まれながら流れる川の美しさは文明を忘れるにはもってこいですね。30分くらいはオジサンたちがハシャぐ姿ばかりですが、そんな光景を楽しむ時間と言ってもいいでしょう。
かなりの急流をカヌーを操舵する画は迫力満点で、主演の4人が吹き替えもなくカヌーを操舵する画も見どころです。
そうして呑気に進む中、原住民なのか山賊なのか、最初からこちらを敵視し、穏便に済ませるつもりなんか1ミリもなさそうなガラの悪い二人組に因縁を付けられるあたりから一気に緊張感が高まります。
エドは縛られ、ボビーは丸裸にさせられた挙げ句に暴行を受けます。…いや、胸クソ悪いのであまり言いたくないけど、暴行ではなく正確にはレイプです。
もうね、この二人組の目的が何なのか、どんな後ろ暗さを秘めているのかを明かさないのが不気味なんですよ。単なるホモでもないっぽいし。
↑のジャケットを見る限り主演はバート・レイノルズさん、しかも弓矢を持ってるし、さぁここから戦闘開始!と思いきや、殺されなかった一人が大勢の仲間を連れてリベンジに戻ってくる事もなく、戦闘シーンもほぼありません。
あくまで4人の目的は、無事に下流まで生還する事。
そのために、生き残った二人組の片割れと決着をつける事になりますが、彼らの試練はそこで終わりません。
明確ではないけど本作は3章で構成されていて、
1.大自然と戯れるオジサン4人
2.怪しい二人組に襲われながらの川下り
3.川下りから生還した、その後
といった感じ。
彼らはどうにか生還するも、警察(というか保安官)の追及を上手くかわすため、川下りの最中に起きたある秘密がバレないよう口裏を合わせます。
身体的な命は助かったけど、社会的な命が助かるかどうか……この辺は完全犯罪が成立するかどうかといった趣がありますね。
本作が公開された時点で、最も名が通っていたのはルイスを演じるバート・レイノルズさんでしょう。
まだトレードマークとも言える鼻ヒゲがないものの、ギラギラしたワイルドさは既に健在。後半はレイノルズさんの独擅場になると思いきや、出番はあるけど活躍はほぼゼロという意外性が面白いですね。
それどころか激痛に耐え兼ねて甲高い悲鳴を上げるような、レイノルズさんのタフなイメージを壊すかのような芝居が新鮮です。
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配信版は見当たらず。
Blu-ray版の映像特典は、主演の4人=ジョン・ボイトさん、バート・レイノルズさん、ネッド・ビーティさん、ロニー・コックスさんらの座談会が最大の見どころです。収録は2012年=公開から40年後に集まった4人が当時を振り返る、ちょっとした同窓会企画です(HD画質が嬉しい!)。
この4人は本作をきっかけに仲良くなったそうで、ちょいちょい顔を合わせているようです。今や存命なのはジョン・ボイトさんだけになってしまいましたが…。
どうでもいい話ながら、まだDVD全盛の頃、本作のジャケット裏に記載されているキャストが間違っていて、後に修正されたものが出回るようになりました。
何を隠そう、その間違いを指摘したのは俺ッチなのですよ。我ながら小っせ〜社会貢献だな〜…。