『シビル・ウォー アメリカ最後の日』を観てきました。
19もの州が離脱したアメリカで内戦が勃発。政府軍はテキサスとカリフォルニアが手を組んだ西部勢力に圧されていた。
ジャーナリストのリーは勝利の確信をぶち上げる大統領への取材を敢行するため、仲間のジョエルや先輩のサミー、戦場カメラマンを志望するジェシーらと共にニューヨークからワシントンDCを目指す。
その道中、危険な目に遭いながらも戦禍に巻き込まれる人々を写し続けるリーたち。ワシントンDCが目と鼻の先にまで迫った時、リーたちは政府軍が降伏したという報せを聞き……といったお話。
公開前から話題になっていたように、アメリカで内戦が起きるという設定がインパクト大です。
天災やテロのみならず、宇宙人や怪獣により大きな被害を被る事は多々あるものの(笑)、戦争としてアメリカ本土が戦場になるなんて映画であっても珍しいですからね。
ふた昔前なら"ありそうでない"シチュエーションでしたが、現代であれば”なさそうでありそう”と思えるのは、うっすら程度ながらも最近のアメリカにそんな雰囲気を感じるからなんでしょうかね。うまく行っていないのはどの国も同じでしょうが、イージーに銃器が流通する国だからこそ、あれだけの戦闘に発展するのは当然でしょう。
ネットで苦言を呈する程度で気を静められる日本(人)は、まだマシな方なのかねぇ(笑)。
そんな混乱のさなかにあるアメリカを旅するリーたち一行。
その道中には車どころか人の姿すら見えず、そこかしこで銃声が聞こえ、煙が上がり、死体が転がっているような悪夢めいた光景が続きます(この辺は『28日後…』を思い出す)。
今さらその程度でうろたえる事もないリーたちベテラン勢に対し、まだ若いジェシーには刺激が強すぎ、そんな地獄絵図に神経が参ってしまいます。
この子は中盤くらいで死んじゃうのかなとすら思いましたが(笑)、過酷な状況下でな経験を積み、ワシントンDCにまで辿り着いた頃にはベテランと肩を並べられるほどの成長を見せます。
苛烈を極める戦闘の中にいる兵士らに交じりながらカメラを向けるジェシーはもはやハイな状態で、すぐそこにある危険と隣り合わせになりながらに見せる嬉々とした表情はゾッとします。
――ここで思ったのは、なるほど、本作は現代アメリカを舞台にした『地獄の黙示録』なんだと。家に帰って劇場プログラムを読んだら、リーを演じるキルステン・ダンストさんもこのタイトルを挙げていたので、ほぼ正解かと。
過酷な状況に順応するうちに道徳観が麻痺して行き、どんどん人間性を失ってゆく姿はまさにそれ。
自分の気分を優先するためなら人を殺す事に1ミリの抵抗も感じない例の兵士を、『地獄の~』におけるキルゴア大佐と結び付けると分かりやすいかな?
余計な情報をゴッソリ削ぎ落として109分という尺に収めたのは潔いですね。
おそらく多くの人が気になるであろう内戦の勃発が決定的となる原因は特に言及されません。大統領の人物像や政策もある程度しか語られず、開戦に至るヒント程度のものしかないんですよね。
こういうのを克明に教えてくれないと気になりすぎて前に進めない人もいるんでしょうが、それをやり始めたら2時間半~3時間くらいの大作になってしまい、作品の趣旨も少しズレてくるんじゃないかな。
ちなみに本作はPG12作品。
とは言え、人間に銃弾が当たってブシャーッと噴血したり、四肢が千切れたり内蔵が露出すると言った、いかにもエンターテインメント的な描写は皆無です。
だったらPG12じゃなくてもいいんじゃない?という考えに及びそうですが、本作を見た大人は18禁でもいいくらいじゃないかと思うんじゃないかな? 誇張気味のグロ(orゴア)描写より、年端も行かない子供には限りなく現実に近い画を見せる方がよろしくないと思うのでね。
本作の劇場プログラムは1000円と、チトお高め。↑の、右下のバーコードの上にある値札はデザインなのでご安心を(笑)。
プログラムの中のコラムにありますが、もし本作のようにアメリカで内戦が起きた場合、他国の有事に関わっている余裕なんてないでしょうから、同盟国の安全保障なんて後回しになる可能性もあるでしょう。
日本人にとっては、所詮は国内のイザコザ、対岸の火事のように楽観的に眺めてはいられないんだろうなぁ。