観た、『西部開拓史』 | Joon's blog

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どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

ふと西部劇が観たくなったものでね。

“西部劇の大作”という触れ込みしか知らない状態で、『西部開拓史』をチョイス&観ました。

 

アメリカ西部に夢を抱いた時代。

東部での農業を捨てて一念発起し、開拓者になるべく西部に向かうプレコット一家。その娘だったリリスとイーブの姉妹は、それぞれ愛する男と家庭を持ち、やがて晩年を迎える……といったお話。

 

…と、粗筋が雑ですが、アメリカ西部の開拓を主題にした、全5話からなるオムニバス形式を採った作品です。

開拓者一家であるプレコット一家の姉妹、リリスとイーブの少女時代から晩年までを描いていますが、伝記のような感じではなく、二人と周辺の人々を中心としたエピソード集になっています。

ガンマンたちのガンファイトを見せるようなアクション西部劇ではなく、アメリカ西部の開拓=フロンティア時代の始まりと終わりを描いた、ちょっとした歴史モノです。アメリカの爺さん世代が、古き良き時代に思いを馳せたがりそうな(笑)。

余談ながら、“西部開拓史”という邦題の言葉選びが端的で明快ですね。これは名訳。

 

本作に関して知っている事と言えば、3台の映写機を使って三つの画面を横に並べて投影するというシネラマ形式という上映形態を採っていたようです。

1:2.88という画角も、なるほど約3台分ですもんね。

それ故、劇場公開していた際は画面の繋ぎ部が少々ズレていた事もあったようですが、ここは映像ソフト化しても修正しきれないようなので、元々が

シネラマ作品だったと大目に見てあげましょう。

3台のモニターを使って一つの画面を構成するという意味で、否応なしにもアーケードゲームにあった『ダライアス』を思い出します(『ギャラクシアン3』の方が近いかな?)。

 

出演者が豪華なのも見どころです。

正直、俺ッチの世代では思い入れはないけど、名前くらいは知っている人たちがワンサと出演している時点で、オールスター映画っぽさがあるのもいいんです。

そんなスター俳優のほとんどが男優で、実質的な主人公であるリリスとイーブを演じたデビー・レイノルズさんとキャロル・ベイカーさんの取り巻きに近い扱いに甘んじているのは意外ですね。このくらいの時代であれば、俺が主役じゃなきゃイヤだと駄々をこねる人も多そうだし?

 

シネラマに加え出演者も豪華という大作感が付いて回りますが、いざ作品を観てみれば一大叙事詩とでも言いたげな、序曲や休憩どころかエンディング後には退場曲まで含んでいる(!)んだから、長い時間を映画に身を委ねていたい気分の時に観るにはもってこいです。

逆に、そうではない人にとっては、ただただ苦痛に感じてしまうでしょう。

まずは一枚絵を見せたままの序曲があり、その後にはオープニングクレジットが始まり、ようやく画面内で動くものが映るまで7分以上も掛かるってんだから、ちょっとした苦行です(笑)。

とは言え、本作の尺は165分。この頃は2時間半を超えれば休憩を挟む作品が多かったんだなぁ。パッと思い付くところでは『トラ!トラ!トラ!』とか『ナバロンの要塞』にはインターミッションがあったしね。

このくらいの尺ならノンストップで続く昨今の作品を考えると、時間を惜しむ人が増えたんだなぁと感じます。

 

姉妹が主役という事で、有事の際には猫の手にも足らない華奢な女子の色恋模様を描いた作品と思いがちですが、そこは開拓者一家の一員だけあって、実にアクティブ。

1番目のエピソードでの筏による川下りも、自ら操舵するわ川に落ちたところで泳げるわ、サバイバル力が高く、実に逞しいんだから農家出身も伊達じゃないってものです。

それでいてキチンと乙女な部分も持ち合わせているのもいいですね。イーブの晩年はちょっと切なくなったな。

 

4番目のエピソード、西部に鉄道を敷設させようとする鉄道会社は、先住民であるインディアンと協定を結び、ひたすら作業を進めますが、ライバル会社に負けじとインディアンを裏切ります。

これに怒ったインディアンは作業現場にバッファローの大群を放ちますが、これがド迫力を通り越して、しっかり恐怖です。

あれだけの巨体を持つ何百というバッファローの群れが一方向を駆け抜ける姿は、まさに激流のごとし。人々や施設がその流れに飲み込まれて行く画には、ただただ唖然。

よくあんな画が撮れたなと思うと同時に、本作の見どころの一つです。これぞ古い映画の魅力ってものよ。

 

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Blu-ray版には吹替版はありません。こういう長尺&キャラが多い作品こそ、吹き替え版があって欲しいと思うんですがね。

映像特典としてシネラマの勃興と衰退を語るドキュメントがありますが、本作とはさほど関係ないので、まぁ冷やかしに一度見ておく程度のものです。