観た、『ハンコック』  | Joon's blog

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『ハンコック』を観ました。


超人的なパワーと不死身の身体を持ち、街の犯罪者を次々に退治するハンコック……ではあるが、常に酒瓶を片手に酔い潰れ、手段を選ばないやり方に市民はブーイングの嵐。
ある日、プレゼンテーターのレイは命を救われた事をきっかけに、ハンコックのイメージアップを図ろうと画策。
刑務所に入る事で前非を悔いる演出を手始めに、ガサツな性格を改善するためのレイの指導の甲斐あって、ハンコックの好感度も徐々に上がり、市民に受け入れられるようになった。
息子のアーロンにも気に入られ、ハンコックはレイの家族とも親密になって行く。しかし、妻のメアリーはハンコックと距離を置きたがり……といったお話。

超人的な力を以て活躍するスーパーヒーローを描いた作品は多々あります。
しかし、そればかりでネタも尽きてくれば変化球を投げたくもなるだろうし、本来のあるべき姿ではない、ヒーローらしからぬヒーローを描きたくもなるんでしょう。
本作はそんな落ちこぼれ、というか、不良っぽいヒーローを描いた作品です。

主人公ハンコックは、いわゆるスーパーヒーロー的な力を秘めていて、その力で街の悪人を退治するものの、やり方がハチャメチャで、犯人退治のために器物損壊の限りを尽くします。
となれば市民が黙っちゃいないのは当たり前ですが、迷惑を掛けた事に対してのブーイングやクレームばかりで、悪人を退治した事への賛辞が皆無なんですよね。
ハンコックと顔を合わせた老若男女の全てが、まるで合言葉のように“クズ”と罵るんだから、なかなか狂った世界ですよ(笑)。親切心として取った行動を迷惑行為と捉え、1%の落ち度を99%どころか100%にまで膨らましてしまう現代的なイデオロギーにも見えますね。
確かにチンピラのようなナリをしていますが、どのみち文句を言われるのを覚悟の上で悪人退治という社会貢献をしているんだから、実はハンコックはこの時点で既にヒーローなんですよ。

そんなハンコックを評価するマイノリティ……どころか、オンリーワンの存在がレイ。
ハンコックのダーティーなイメージをクリーンにしようと応援をしますが、純粋に友情の一環として協力するのがいいですね。
ハンコックのやさぐれた態度の裏には寂しさがあるからだと見抜いたのもレイでした。何しろ、ハンコックはほとんど笑いませんしね。
自分に似た人も周囲にいないし、たまに近付いて来る人は興味本位の怖いもの見たさでしかなく、ハンコックは常に孤独であり、寂しがってもいるんでしょう。たとえ今から退治する悪人であっても必要以上に会話をするのは、孤独を紛らわせたいからとも思えますね。
そんなハンコックをビジネスに利用する事もなく、打算のない友情を築くレイ、ええ人やなぁ…。
その甲斐あって、中盤の頃にはハンコックが能動的にレイの家にやってくるシーンが多くなりますが、気を許すようになった表れにも見え、地味にほっこりするシーンなんですよ。

真人間に近付き、市民にも愛されるようになったハンコック。
彼に対し懐疑的だったレイの妻メアリーの心も解れ、いつしかハンコックとも心が通い始め……るという展開にはならず、ここから新たな問題が発生するのが面白いですね。なんつー意表の付き方だよと。


本作は2008年の作品です。
この頃にも漫画=アメコミを発祥とするスーパーヒーローが活躍する作品がポツポツ作られていましたが、本作もそんな流れの中で作られた作品の一つなんでしょう。
そこから現代に至るまで、ハリウッド映画のアメコミヒーロー作品は異常なまでに流行し、過熱しています。
であれば、本作もスーパーヒーロー作品だし、それに乗っかって続編行っとく?となりそうなものですが、10年以上も経っているって事で、どうやらそれはなさそうだし、やらなくて正解です。
何しろ本作は、本作だけでやるべき事をやりきっていますからね。キチンとお話にケリを付けた上で綺麗に終わっていますから、これ以上の蛇足は見苦しくなると思います。
ああいう終わり方は続編を臭わせると捉える人もいますが、作品が終わってからも劇中のキャラたちが生き続けている事を示唆する余韻なんですから、下世話な深読みは無粋です。

ところで本作には、映画史レベルでの見どころがありまして。
「お前のその頭をケツの穴に突っ込んで黙らせるぞ?」といった旨の、グシャグシャと能書きを垂れる相手を止めさせる際に使う決まり文句って、よく見ますよね。
特にアメリカ映画に散見され、真面目に捉えれば意味不明の一言で片付いちゃうけど(笑)、これを聞いておとなしくなるキャラも多く、脅し文句としてはまぁまぁ効き目があるようです。
…が、それでも喋るのを止めなかったらどうすればいいのか? 例の意味不明のセリフで黙らせられるのか?

本作にはその答えがありますが、これは必見。そういう事なの?と。

まさに有言実行、小学生なら大喜びするシーンだと思います。幼心を忘れ(られ)ない俺ッチは声を出して笑ってしまいました(笑)。
 

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Blu-ray版の映像特典は多めで、劇場公開版とエクステンデッド版の2バージョンが収録されています。今回観たのはエクステンデッド版でししたが、何が違うのかはセルフサービスでお調べ願います。