『引き裂かれたカーテン』を観ました。
科学者が集まる学術会議に向かうマイケルとサラ。
結婚も控え仲睦まじい二人だったが、ある伝言を受けた時からマイケルの態度は一転。サラに帰国しろと言う。
納得できないサラは、マイケルが乗るドイツ行きの飛行機にこっそり搭乗する。
東ベルリンに着いたマイケルは、それまで研究していたミサイル技術を評価しないアメリカを捨てドイツへの亡命を発表する。
サラに売国奴となじられながらも、マイケルには真の目的があり……といったお話。
要約すると、ドイツに潜り込んで技術を盗もうとするスパイの話です。
アルフレッド・ヒッチコックさんの監督作品です。
この頃は主人公が国家間を行き来するような、まるで007を意識しているかのような作品が続きます。いわゆるスパイものですね。次作『トパーズ』も似たような感じだし。
主役はマイケルとサラのカップルで、唐突に絶縁(に近い)宣言するような薄情な男と、捨てられまいと必死で付いていく女の追いかけっこが前半で描かれます。
マイケルが何か極秘の任務を背負っているのは早めに分かりますが、それに気付けず、ひたすらマイケルを追うサラにはホンッット〜にイライラします。
愛する人に捨てられそうになっても一途に着いて行こうとする健気さを描きたいんだろうけど、お節介やら監視やら、ああまで行くとただただ邪魔で鬱陶しい女です。人のスマホを勝手に覗くタイプと見たよ(笑)。
ヒロインは必ず魅力的に見せるのもヒッチコックさんの作風ですが、ヒッチ作品群の中でもズバ抜けて煙ったいヒロインです。
サラの存在がなければ、もう少しスパイ映画としてピリッとした緊張感を出せただろうになぁ。
本がどうこうという暗号に始まるマイケルの意味深長な行動、そして“π”が表す意味とは…?といった感じの、いかにもスパイ映画って感じの雰囲気がいいんです。
でありながら、マイケルに任務を与える組織やら指令の内容は詳しく描かれません。
あればいいけど、なくても差し支えはない情報は潔くカットするのもヒッチコックさんらしい作風。おそらく最近の客は、こういうディテールを省略するとブーたれるんだろうね。
スパイ映画と聞くとOO7シリーズを連想する人は少なくないと思います。
あちらと違い、本作のスパイ=マイケルはもう少し凡人に近いというか、あまりヒーローヒーローしていません。唯一ある格闘シーンと言えばドイツの監視役グロメクと戦うところくらいで、これが泥臭いというか、手際が悪いところが生々しいんですよ。
ドイツ人に対しああいう殺し方をするのも、なかなかに意味深…。
後年、ヒッチコックさんは主演のポール・ニューマンさんのギャラが高すぎたとボヤいていたそうですが、あまりヒットしなかった恨み節なのかな(笑)? これに懲りて、以降の作品は大スターの起用は止めるようになったとか。
悪くはないけど、確かにニューマンさんにハマる役ではなかったかもね。
マイケルとサラがメインキャラですが、ヒッチコック作品には味があるというか、やけにインパクトを残すサブキャラも少なくありません。
本作で言うところのそれは、舞台女優のプリマドンナとアメリカに行きたがっている婆さん。
二人とも、まず見た目が強すぎる(笑)ところから始まり、マイケルとサラに少なからずの影響を与えます……が、正〜直、時間増しのための登場としか思えなくてね。
この二人とサラの出番を総カットすれば90〜100分くらいに収まったのでは?
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