『理由なき反抗』を観ました。
酔い潰れて警察署に連れ込まれた高校生ジム。ジムのひがみっぽい態度は家庭内の、母の尻に敷かれっぱなしである父の不甲斐なさが理由の一つだった。署にはジム同様に補導された、家庭環境に馴染めないジュディやジョンの姿もあった。
釈放されたジムは、翌朝にジュディに声を掛ける。ジュディは不良グループの一員で、ジムはリーダー格であるバズに目を付けられる。
バズの挑発に乗せられたジムは決闘を申し込まれる。崖っぷちに向かって車を走らせ、先に飛び降りた方が負けというチキンレースだ。
そんな危険な挑戦を受けるかどうか、曖昧な答えばかりで相談に乗ってくれない父を尻目に、ジムは決闘の場に向かい……といったお話。
子供の反抗とは甘えと同義語であると考える大人は少なくありません。一般的な大人が大人になるまでには、誰しもが反抗期を通過していたはずなのに、ガキのワガママと決め付けてしまうのは、そんな時期があった事を忘れている大人の横暴なんでしょうかね。
そんな荒くれる不良少年たちの、粗暴に見えて実は繊細な彼らの苦悩を描いた作品です。
タイトルとして“理由なき反抗”と銘打ってはいるものの、彼らには彼らなりの、そして若かりし頃の我々にも反抗したくなる理由はあるんですよ。
本作はジムを演じるジェームズ・ディーンさん=ジミーの印象を一言で表す作品になっていると思います。
ディーンさんと言えば永遠の不良少年というイメージがありますからね。実際、素行もあまり良くなかったようだし。
優等生でありたい気持ちはあっても、少しワルぶって振る舞いたい欲は、男の子なら誰しもが持っていたはずです。そこから大人になった元不良少年が、過去の過ちや若気の至りを恥じたり反省する事も少なくありません。
そういう意味において、もしジミーが一般的な寿命を全うするくらいに生きていたなら、本作(や当時の素行)を誇りに思ったまま死んで行く事はなかったかもしれません。
でも、ジミーは24歳という若さで、年老いて守りに入るような生き方をしないまま亡くなってしまった。それ故、本作やディーンさんの印象が更新される事はなく、反抗期真っ盛りの男の子の永遠の憧れとして生き続けるのです。
…とは言え、今時にジミーに憧れる若者なんていないだろうけどね…。
本作の主役はジム、ジュディ、ジョン=プレイトーの3人。
親に厳しくされる者や甘やかされる者、そうしてくれる親すらいない者と、それぞれが家庭環境に問題を抱えています。
そんな共通の悩みを抱く3人が寄り合い、ジムとジュディは愛し合い、プレイトーはジムに父性を見い出します(ジムはプレイトーを弟くらいに見ていたと思いますが)。
中でも、親のいないプレイトーは厳しくも甘やかされもしてもらえず、最も苦しい境遇にあると言っても過言ではありません。
それ故、プレイトーは3人で家族をやりたかったんじゃないかと。ジムとジュディの関係を妬む事もないどころか、むしろ二人の関係を発展する事を願っているようにも見えるしね。
しかし、そんな夢も一瞬。好かれる事はあっても愛される事がなかったプレイトーの結末は哀しすぎますね。
不良グループのリーダー格であるバズは、新顔であるジムにしつこく絡みます。
けど、それは目障りから起こる憎悪の感情ではなく、どこか自分と似たようなものを感じ取っていたのかもしれません。リーダーに祭り上げられている以上、面子を潰されるわけにも行かないから仕方ないというか。
対決前の、バズが本心をを吐露するシーンを見てしまうと、二人の関係が途中で終わってしまうのが残念です。
スーパー余談ですが、乃木坂46の楽曲に『ごめんねFingers crossed』という曲があります。
「“Fingers crossed”というのは”幸運を祈る”っていう意味がありまして…」と教えられた通り(笑)健気に答えるさくちゃんの言葉を信じないお前らよ、本作のチキンレース直前のシーンを見てみよ!
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Blu-ray版は映像特典満載。
本作のメイキングというより、ディーンさんに関して考察するドキュメントが多めかな。デニス・ホッパーさんの単独インタビューは驚きました…。