『断崖』を観ました。
ふとしたきっかけでジョンと知り合い、恋に落ちたリナ。
二人は駆け落ち同然に結婚。世界各国を旅行した後に家を買い、新婚生活が始まった。
しかし、羽振りが良さそうに見えたジョンは実は無職であり、借金まみれであると知り愕然とするリナ。
そんな生活を脱して真面目に稼ごうと、ジョンは友人のビーキーと組んで、断崖のある海岸線の土地開発に手を出そうとする。
しかし計画は頓挫し、借金を中止するために2人がパリへ向かっている矢先、リナはビーキーが殺された事件を警察から知らされる。
まさか下手人はジョン? そして自分も夫であるジョンに殺されるのでは…? リナの疑心と不安は頂点に達しようとして……といったお話。
全てを見てはいないけど、個人的にアルフレッド・ヒッチコックさんの作品は、総じて面白いと感じています。
…が、本作はチト微妙ですね。
ヒッチさんの作風として、スリル&サスペンス描写が真っ先に挙げられますから、観るからにはそこに期待しちゃう。けど本作には、そんなドキドキ&ハラハラ感が希薄なんです。
↑の粗筋を一読してもらう通り、夫に狙われる妻の話なんですが、1時間以上も過ぎないとそんな展開に移らないんですよ。そこまで何をしていたかと言えば、まるでコメディのようなダメな男女のやりとりばかり(笑)。
ようやくリナが疑心暗鬼に囚われ始め、お話も佳境に入り、そこからクライマックスに至るものの、破綻があるわけじゃないけど、オチは今一つパンチに欠ける感じ。ヒッチさんの作品に求めるのはそういうんじゃないんよ…。
リナとジョンがダメすぎるバカップルみたいで、コメディとして作ってはいないんだろうけど笑ってしまいますね、失笑として(笑)。
その、ダメな原因はジョン。これは演じているケイリー・グラントさんに依存するものですが、背も高くハンサムというルックス面で多くの女性は惹かれると思いますが、中身がヤバすぎです。
女性遍歴は星の数、粋な伊達男に見えるファッションは借金やギャンブルで固められたもので、ウソを付いたり他人の大事な物を売り払ったり、それというのも無職が原因ながら、本人に労働の意志は全くないってんだから、もうどこから手を付ければ良いのやら。グラントさんが、こんなクズの役で出演しているのが、本作最大の衝撃ですよ(笑)。
リナもリナで、そこまで困った男に見切りを付けないんだから、底抜けのお人好しですよね。
そんなダメ夫婦のやり取りが続く前半は、見るのが苦痛に感じる人も少なくないと思います。よその夫婦の噂話が好き、かつ感情移入してキレ気味になってしまう人は盛り上がれるんじゃないかな?
金の工面に必死なジョンを描く前半ですが、リナがビーキーの訃報を知るあたりから後半戦に突入。まずはビーキー、そして次は自分が?と、リナが疑心暗鬼に捕らわれる様を描かれます。
↑の通り、立派にクズなジョンですが、呆れはするけど憎めるほどのキャラではないんですよね。なるほど、グラントさんというキャスティングのおかげってのもあるんですが。
ジョンはリナを殺してしまうのか?と臭わせる演出が続き、この辺はヒッチさんのお家芸をまぁまぁ楽しめます。
*****************
*****************
*****************
Blu-ray版は吹き替え音声や映像特典は一切ありませんが、評論家による解説が載ったリーフレットが封入特典として付属します。
本作は1941年=80年も前の作品って事で、著作権が切れたパブリックドメインDVD(BD)として扱われるのかな? 機能としてもチャプター選択と字幕のON/OFFくらいしかないんだから、もっと安くしても良いと思うんだよ。
映像に関しては、フィルムキズの除去等はやっていませんが、画質としてはそれなりにシャープで、一応はBlu-ray製品を名乗ってもいいかな?くらいのレベルです。