『白い肌の異常な夜』を観ました。
南北戦争末期。
森に来ていたエミーは、負傷した北軍の兵士マクバニーと遭遇し、学校を兼ねた寄宿舎に連れて行く。
そこは生徒のみならず学園長や教師や家政婦まで、女性しかいない女子校だった。
敵であり負傷してもいるが、滅多に見る機会のない男が転がり込んできた事で、女たちはマクバニーを物珍しそうに見たり、心を浮き立たせたりしてる。
本来なら敵兵として警備兵に引き渡さねばならないが、滅多に見る機会のない男に興味以上の感情を抱く女たちは、マクバニーを匿う事にする。
女たちは抑えていた感情を隠しきれなくなり、マクバニーもそれらを受け入れ始めた時、それまでの宿舎の生活が徐々に狂い始め……といったお話。
↑の粗筋を読む限り、多数の女に囲まれた1人の男というシチュエーションに喜んじゃう深夜アニメファンもいそうですがね、そんな期待を抱きながら見るのはご法度です。まぁ、実写の時点で見ないだろうけど(笑)。
本作は恐怖映画としてカテゴライズされるような作品です。ホラーとはちょっと違うかな?
そんな映画も、観終えれば“怖かった”と過去形とした上で、ちょっとした満足感を得られるところですが、本作の場合は観終えた後で胸クソ悪くなるような作品です。それどころか、観ている最中にも気分が悪くな事もしばしば…。
今でこそ秀作にしか出演していないイメージのあるクリント・イーストウッドさんですが、師匠たる存在のドン・シーゲルさんの監督作品とは言え、本作をフィルモグラフィーに含むのは心中複雑かもしれません…。
マクバニーが放り込まれたのは女性群の中。
介抱される怪我人として謙虚に、紳士的に振る舞ってはいても、男日照りの環境下にある女たちに言い寄られれば、そりゃ食い散らかしたい気にもなってしまうでしょうね(笑)。
まずは男と女の関係に、そこからオスとメスになってしまうのは、本能的にも不可抗力なんでしょう。
そして他の誰かとも、自分と似たような事をしていると知った時に芽生えるもの――本作で描いているのは欲望と嫉妬です。
キャロルに気がある素振りを見せておいて、エドウィナとイチャついているところを見てしまえば、そりゃキャロルが妬くのは当然。マクバニーさんの正体は、二枚舌のスケコマシ野郎なんですよ(笑)。
まずはキャロルも嫉妬の感情が生まれた時から、寄宿舎内の生活がピリつき始め、お話は本格的に動き始めます。
エドウィナや園長の気持ちを知っていつつ、これを止めないマクバニーには、しかるべき天罰が下ります。
そうまでしなくても助かるであろうに、措置という形で過剰な罰を与える園長の嫉妬→怒りのほどが伺えます。
個人的に、本作のキーパーソンであるキャラはエミーです。
二人が出会った時、マクバニーは親が子供にするようなキスをしますが、エミーはそう思っていなかった事は一目瞭然。
キャロルと何をしていたのかも理解した上で、しっかり嫉妬すらする。
12歳という最年少ながら、マクバニーに向ける好意は子供じみた“Like”ではなく、女としての“Love”なんですよね。
たとえ子供であっても、女として男に向ける怒りがどれほど恐ろしいかを思い知らせるラストに慄然すると同時に、やっぱり気分が悪くなるんです…。
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映像特典は予告編のみですが、吹き替え音声が2種類収録されているのはマニアは大喜びですね。
ああいう連中は、メイキングやドキュメント的な映像特典よりも、そっちがあれば大満足なのかな。
大きなお世話ながら、ちょっと浮気性な男性に困っている女性の方々は、本作を一緒に見ると、ちょっとした薬になるかもしれませんよ? …いや、逃げられちゃうかな…。