『ラスト サムライ』を観ました。
1876年。
かつて参加していた南北戦争の体験を忘れられず、酒浸りの生活を送るオールグレンは、日本で大臣を務める大村より、兵隊を養成する教官として雇われる。
来日したオールグレンが素人の兵隊を訓練をする中、出撃の命令が下る。相手は勝元を筆頭とする反政府の一派。オールグレンは孤軍奮闘するが、勝元に捕らわれてしまう。
勝元らの集落に連行されたオールグレンは、先の戦闘で自分が殺した男の妻たかの家で暮らす事になる。
勝元との交流に始まり、日本の文化や風習を見知りしながら、オールグレンは“サムライ”の何たるかを感じ始める。
しかし、近代化を推し量る日本には、侍のいない時代が到来しつつあり……といったお話。
外国が作る日本の時代劇って事で眉をひそめがちですが、普通に面白いと感じます。
日本人だからって、劇中のような生き方を真似をするほど若くもなければ時代錯誤でもないけど、日本人として襟元を正したくなるような作品です。せめて、“恥”とか“名誉”なんて言葉は、常に頭の片隅に置いておきたくなります。そんな当たり前を教えてくれるのが“洋画”というね。
主観ながら、トム・クルーズさんが主演している映画は必ず面白い事が確約されていますが、その作品群の中で好きな作品として上位にランキングしたい作品です。
特に近年は”侍”、いや、正確には“サムライ”という言葉が神格気味に美化されている風潮があります。
侍=戦士だ!と短絡的に結び付けちゃってるんだろうけど、その実態としては、無礼討ちや切捨御免なんてものが許されるような(無礼を放置しておくと罰せられたそうな)、人の命を最も軽んじていた身分の者でもあります。
“サムライ・ジャパン”という呼び方に浮かれている人たちには、わざわざこの辺を説く必要はありません。
現代のような法治国家に至るには、廃刀令のような、当時としては革命に近い法が立案されるのも仕方ありません。
侍の絶滅を意味するそれに抵抗するのは、やはり侍です。
おそらく反対した大半は、真っ先に自身の保身(や打算)ありきだったんでしょうが、本作に登場する侍たちのように、貴い志を持つ者もマイノリティとして存在していたんでしょう。
ただ剣を振り回すだけでなく、武士道という精神論を重んじる根っからの侍、愚直で純粋な者たちの絶滅がもう少し遅かったら……今の混沌たる日本を見ていると、そう思わざるを得なくなります。
主演のみならず製作まで担当しているあたり、トム・クルーズさんの並々ならぬ気合いや思い入れが伝わってきますね。監督であるエドワード・ズウィックさん共々、時代考証やそれに伴う下調べとか、かなりの勉強をした事が想像できます。
日本人の習わしを尊び、武士道を理解しようとする謙虚な姿は、役であるオールグレンと似通っていて好印象です。
日本を舞台にした作品という事で、どうしても日本人は過敏に反応してしまいますよね。この場合の過敏とは、どうにかして重箱の隅を突っつくための、血眼になっての間違い探し。
“日本にはそんな風習ない!”とか“日本史の時系列的に矛盾している!”とか、いつもの&よくあるヤツですね。チラッと見ただけで、まぁいるわいるわ。
“あの時代に忍者はいない!”とか、“勝元盛次なんて人はいない!”とか、呆れるのを通り越して、ツッコミ初心者のようで微笑ましいですよ。右に倣ってそう言いたがる付和雷同な連中って、時代劇の全てがノンフィクションだと思っているんじゃない(笑)?
本作は昔の日本を舞台にした冒険活劇であって、実話に基づいたお話ではありません。
そもそも“事実に基づいた映画”という時点で事実ではない事が分からない人が多すぎるんですよね、やれやれ。
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↑のBlu-ray版は映像特典てんこ盛りです。
特にヒストリーチャンネルで放送されたらしいドキュメント、『歴史とハリウッド』は劇中における日本の時代背景について言及する内容。
他には戦争もの等、過去の時代を描く作品の映像ソフトには、当時の状況を解説してくれる副読本的なコンテンツを収録してくれるとありがたいですね。