『大魔神』を観ました。
時は戦国時代。
村に響き渡る地鳴り――それは狼谷に閉じ込められた魔神・阿羅羯磨[アラカツマ]によるものだと信じる村人たちは、魔神封じの儀式を始める。
その頃、領主である花房家の城で、かつては花房に仕えていた左馬之助が謀反を起こす。混乱の中、忠実な家臣である小源太は、幼い忠文[タダフミ]と小笹[コザサ]を連れ、叔母であり巫女である信夫[シノブ]の元へ身を寄せる。
それから10年後――領主となった左馬之助は暴虐の限りを尽くし、砦の建築のため領民に苦役を課していた。
花房家の再興を諦めない忠文と小源太だったが、左馬之助の手に落ち、明朝に処刑される事になる。
それを知った小笹が、魔神に命を捧げる決意をしたその時……といったお話。
“圧政に苦しむ民”と聞くと、反抗の意思を持つが有志が増え、圧倒的多数の民衆の力で悪政を滅ぼすというシチュエーションを想像しがちです。
しかし本作の場合は、為政者側との力の差がありすぎるためか、領民はおとなしく従う事しかできません。反逆者があっけなく返り討ちに遭うシーンもありましたしね。
“だからって大魔神にすがるのは他力本願だ”と感じる人も多いでしょうが、どう抗っても勝ち目がない勝負は確実にあります。
非力な者が集まって勝利できるのは、絵空事の中だけの話です。だからこそ、本作のような作品にカタルシスを求めてしまうんですよ。
そんな悪人どもに天誅を下すのが、我らが大魔神。
覚醒(?)した日にゃ、問答無用&情け無用で悪人どもを懲らしめる姿は、ここまでの領民たちの苦しみを覆す、カタルシスの極みです。
人間の抵抗なんて、魔神様にとっちゃ虫がたかるも同然、それらに目もくれず、悪の枢軸を目指して進む姿は実に心強く、それだけでもう勝利確定の気分です。
…のはずなんですが、諸悪の根源たる左馬之助を殺しても、大魔神は暴れるのを止めてくれない(笑)。弱い側の心強い味方と信頼しがちですが、そこまで優しくはないんです。
たとえ不条理からの脱却であっても、犠牲なくして勝利はあり得ないという説くのであれば、易々と魔神様にすがるのも気が引けますね…。
本作は1966年の作品ですが、この頃の俳優の声量は、現代の俳優のそれに比べると段違いに大きい。大魔神に襲われる際の男の悲鳴なんて、真に迫るものがありますよ。恐怖感を増すというかね。
芝居に関しても、今の目で見ればオーバーリアクションに見えがちですが、こういった荒唐無稽な作品には、このくらいで丁度いいんです。
悪役を演じる俳優も、誰がどう見ても悪役にしか見えないのが分かりやすい(笑)。外国人どころか、日本人が見ても見分けが付くような面構えがいいんですよ。
総じて古い日本映画とは、見分けや聞き分けがしやすいという意味で、役に個性を感じます。セリフが聞き取りにくい事が多いのが難点だけど。
…にしても、若かりし頃の藤巻潤さん、カッコ良いな~。
大魔神は巨大な武人の姿をしていますが、この大きさが絶妙なんですよね。
多くの怪獣映画における怪獣やウルトラマンやらは数10メートルである事に対し、大魔神は5メートル前後。この大きさが絶妙で、突飛すぎない大きさがリアルに思えます。
おおよそ火の見櫓[ヤグラ]と同じくらいの目線で、そこにいる人間をギロリと睨み付ける目ヂカラの強さ!
もちろん特撮シーンもありますが、↑の通り、大魔神は意外に小さいので、その比較対象となる建築物等のミニチュアを、かなり大きいスケールで作り込まなければならないのも大変そうです。
大魔神が破壊の限りを尽くすシーンを見れば一目瞭然ですが、建物の柱や屋根瓦など、スゲー細かく作ってるんですよね。発泡スチロール丸出し(笑)に見える物が皆無なのも、特撮班の技術と努力の賜物でしょう。
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俺ッチが買ったのは↑の2作品を集めた物だったんですが……うひ、今やこんなに高騰してんのかよ。1600円くらいで買えたのに。
まぁ、国内版が安心・安全だと思うので、買うとすれば↑↑のBlu-ray版が良いと思います。