観た、『ハプニング』 | Joon's blog

Joon's blog

どんな傑作にも100点を、どんな駄作でも0点を与えないのが信念です

『ハプニング』を観ました。

 

フィラデルフィアで教師を務めるエリオットは、職員の緊急招集を受け、現在ニューヨークでは次々と集団自殺が起こっている事を知る。ニュースを見ると、テロリストによる有毒ガスが原因で、それが徐々に西側に迫りつつあるという。

エリオットは妻のアルマに連絡を付け、同僚のジュリアンと娘ジェスらと共に避難するため、西へ向かう電車に乗るが、電車は緊急停車し、乗客たちは近隣の町で一時を過ごす。

乗客や町の人々が一目散に避難する中、逃げ遅れながらもエリオットは車に乗せてくれる夫婦を見つけるが、置いてきた妻の元に向かいたいジュリアンと別れ、ジェスを預かり避難を急ぐ。

夫婦は植物学者で、この事件は植物の本能によるものだと説く。一連の出来事を鑑みて、エリオットはその説に一理を見い出し……といったお話。

 

映画に理解のない、特に若い人は、ホラー(orサスペンス)映画と聞いて見てみたけど、ちっとも怖かねぇ作品だと断言できるんでしょう。
そういう人たちは、刃物を突き立てられて血がブシャーッ!となるシーンに、この上ない恐怖を感じるんでしょうかね? 個人的には、犯人や犯行の理由が分からなかったり、倒そうと思っても倒せなかったり、解決方法が分からない方がよっぽど恐怖だと思うんですが…。

 

この集団自殺の原因は、最初はテロリストの仕業とされていましたが、この辺の安易な決めつけ方が昨今の報道の傾向を模しているようで、チト風刺的にも見えますね。まぁ、大抵はその通りなんだけど(笑)。

が、このテロリスト説ともう一人(?)、容疑者として挙げられたのは、なんと植物。

植物から散布される何かが人間の神経に作用し、人間の防御本能を失わせてしまうとの事。まぁ、頭をおかしくさせるスギ花粉と言えばイメージしやすいでしょう(笑)。

それ故、花粉を乗せる風が恐怖の対象になっているあたりが、ホラー映画という触れ込みで本作を見た人をガッカリさせてしまうんでしょうね。

映像では直接見せられない、目に見えないものが敵という事で、見えないものにビビっている姿が滑稽にすら見えてしまうのも仕方ありません。

ただ、風(や空気)を敵とするのは斬新ですね。姿なき殺人者とでもいうか。

 

とは言え、ホラー映画のセオリーでもあるドキッとさせるシーンは決して少なくなく、そんなものには動じなくない歳になってしまった俺ッチでも、心拍数が急上昇する箇所はいくつかありました。ジュリアンが車から見た光景とか、このまま気絶させてくれ…

ショッキングなシーンは引きの画で、かつ長めのカットで見せるのも、客観的に現場を見る定点カメラの視点のようで現実味を感じます。

殺す過程より、その後の、既に死んでいる状態も十分に怖いというか、イヤな気分にさせられますね。

 

本作の事件が人為的なものではなく、天然自然の仕業だとして、本作のホラー映画としての恐怖とは、“不可解”である点にあると思います。

そもそも、植物が人間に悪影響を及ぼす何かを発生(分泌?)させるのがおかしいとツッコむ人もいるでしょうが、その可能性はゼロではありません。

劇中でも言及していましたが、自然界には我々人間が分からない事象が多々あるんだから、これを自然界の警告と受け取るのも間違いではないでしょう。

科学的な根拠を考察せずに世界が滅び行く様を描くあたり、根暗な中学生が考えた破滅論みたいな作品にも思えますが(笑)。

 

よく、“明日、世界が破滅するとしたら最後に何がしたい?”という質問がありますが、それを問われるような世界観ですね。エリオットやアルマの懺悔を見て、そう思いました。

これが戦争によるものであれば、そんな呑気な事を考える暇すらないだろうけど、本作ではその程度の悠長さがあるようで、実はない。

自分が生きる世界の終わりを肌で感じた時の境地とは、あんなものなのかもしれませんね。

 

M・ナイト・シャマランさん作品はネタバレ厳禁を常としているので、ラストについては語りませんが、近年の説明過多なテレビドラマに懐柔されてる人には肌に合わないであろう作品です。

本作にダメ出しをする人とは、キチンと犯人が分からないとモヤモヤしてキレ出すクチじゃないかと思います。

 

********************

********************

********************

映像特典はメイキングが多目に数種。

シャマランかんとくはPG13を目指していたけど、会社=フォックスはR15にしろとのお達しによりああいう作品になったようです。この作風を鑑みれば、過剰な残虐描写なんて不粋だと思うんだけどなぁ。

他に、ほっこりするのはギャグリールという、撮影時のおふざけ集。こういうホラー系の作品を撮っていると、反動としてハシャぎたくなるんでしょうね。