『JFK』を観ました。
まずは206分=3時間半という長丁場を乗り切った事を褒めてやって下さい(笑)。当然のごとく、セルフのインターミッションは挟みましたがね。
余談ながら、俺ッチが洋画に興味を持つようになって初めて映画館で観た作品なんですがね、劇場公開版でも189分もある上に、立ち見(!)で最後まで鑑賞した若かりし頃の自分に拍手です(笑)。
1963年11月22日、ダラス州でジョン・フィッツジェラルド・ケネディ大統領が暗殺される。
ルイジアナ州ニューオーリンズの地方検事であるギャリソンは、この報せに、多くのアメリカ国民と共に大きな衝撃を受ける。
犯人とされるオズワルドについて興味を持ったギャリソンは、調査を続けるうちに、単なる暗殺事件ではない、大きな組織ぐるみの計画的な陰謀である事に気付き……といったお話。
…と、いつもながらの粗筋の紹介ですが、何しろ話の規模が大きすぎて、ざっくりとしか綴れません(笑)。
何しろ、一国の大統領が公衆の面前で殺されるという陰謀ですからね、1人を尋問すれば10人の関連者が浮かび上がると言ったように、どんどん話の規模が大きくなり、一地方検事に過ぎないギャリソンの最終的な敵はアメリカという国にまで大きくなってしまいます。
これだけ話のスケールがデカくなれば、そりゃ3時間くらいの映画になりますよ(笑)。
だからと言って単に長いだけではなく、実話が基になっているだけあって、当時のアメリカに起きた数々の事件が多面的に、必然を以て重なり合っていく過程は興味深く、現実的に思えるので、見応えは確実にあると思います。
地道な捜査の中でギャリソンは関係者への尋問を続けますが、当人ですら背後の背後に誰がいるのか分からない、それほどに話がデカい陰謀に巻き込まれている自覚を持つ容疑者は、容易く口を割りません。
下手な告白が命の危険を招く事を熟知しているからでしょう、ある容疑者は、それでもなお質問を続けるギャリソンに言います。
「あんた、無邪気だな」
これ、全編を通してのギャリソンの行動原理なんですよね。
これを言われた時点では、まだ捜査の序盤だったから心配ない段階だったけど、後半では自分や家族にすら危険が迫ります。
まずは真実を知りたいという欲求(や好奇)に端を発しているものの、母国の正義を守りたいという義務感が根っこにあるからこそ、ああまで事件に固執し、国のスキャンダルを暴露するという偉業を成し遂げたわけですからね。
怖れ知らずの好奇心とは、やはり無邪気だからこそのものなんでしょうね。
フィクションと言えば、ギャリソンが仕事にかまけて家族をないがしろにするという黄金シチュエーション……ま~邪魔です(笑)。
91年の、約30年前の作品(つーか作風)ですからね、「あなたは仕事ばかりに夢中で家族を愛してないの?」とか、もう分かった分かったって感じ。
男のキャラだけで成立できるけど、オマケ程度でも女性キャラの登場を余儀なくされるのが映画というエンターテインメント。差別がどうとかとか始まっちゃうし。
「この(女性)キャラ、別に要らなくない?」と思わせるような、つまり無駄な役を入れざるを得なかった作品って、映画史上においてスゲー多いですから…。
相手が誰であろうと機械のように捜査を続けるギャリソンですが、妻子がある事で、密かながらにも怖れの感情を吐露するような、人間的な側面も持ち合わせている事を描きたかったんでしょう。
でも……やっぱり蛇足です(笑)。
再確認させられるのがキャストの豪華さ。
ケビン・コスナーさんを始め、今でこそ名が通っている人たちがワンサと出演していますが、その知名度が上がったのは本作への出演に始まっての事だと感じます。
90年代を代表するゲイリー・オールドマンさんやケビン・ベーコンさん、日本では缶コーヒーのCMでお馴染みとなっているトミー・リー・ジョーンズさん等々のブレイクは、本作より始まっている気がするのは俺ッチだけですかね?
そして主役を演じたケビンさんの、90年代の大活躍っぷりは目覚ましいものでしたが、日本での本格的なブレイクは、後の『ボディガード』(←無性に懐かしい!)になるのかな?
個人的には、これとは逆に『ボディガード』でケビンさんのキャリアがピーク→あとは下降の一途を辿っているように感じますが…。
って事で、ケビンさんの代表作は、本作のジム・ギャリソン役だと思っています。
余談ながら、野暮ったい眼鏡で美貌を封印し、芝居で勝負する姿が『アラバマ物語』におけるグレゴリー・ペックさんを連想しますね。
俺ッチは常々、政治とエンターテインメントは関連していてはいけない者同士の関係にあると思ってます。
なので、映画というエンターテインメント=娯楽の中に、現実の権化たる政治を持ち込むのは邪道だと考える反面、映画が政治を変えるのはアリじゃないかと考えます。
俺ッチのようにノンポリな人間が、僅かながらも政治に目を向ける、いいきっかけにはなりますからね。
にしても、つくづくアメリカ映画とは世界一のエンターテインメントだと感じます。
自国の汚点を明け透けに描いた作品を(多分な予算を以て)作れるだけでなく、それを世界に公開できるんですしね。よっぽど寛容なのか開き直っているのかはビミョーなところですが(笑)。
ドイツも『ヒトラー ~最期の12日間~』なんて作品を作れちゃうんだし、自国の歴史と向き合うかのような映画を世界に発信できる感覚は、欧米は進んでいますね。
真実を明らかにした実話として、映画という形で世界に発信すれば、ある意味、一種の償いになるのになぁと、この辺の感覚が遅れまくっている国に住む身としては感心すると共に、羨ましくも思うわけです。
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繰り返しますが、206分です。
ここまで長いのに、映像特典として未公開シーンとか含んでいるんだから、真の完全版は何分になるんだろ(笑)。
映画館に観に行くような感覚、もしくは緊張感が削がれるという理由で、再生したらブッ続けで最後まで見るのをモットーにする人もいるんでしょうがね、苦にならない程度にホドホドに…。