『マイノリティ・リポート』を観ました。
2054年。ワシントンではプリコグと呼ばれる3人の予知能力者の力により、犯罪が起きる前に犯人を捕らえるシステムを導入、犯罪発生率を激減させていた。
その執行者たる犯罪予防局のチーフであるジョンは、システムの正当性を調査するためにやって来た司法省のウィットワーを尻目に、今日も八面六臂の活躍で未来の犯罪者を逮捕する。
その陰でジョンは、息子を失った喪失感を過酷な仕事やドラッグで紛らわせていた。
そんな中、プリコグの1人が一つの未来予知をする。その映像には何者かを銃殺するジョンの姿が…。
一夜にして指名手配となったジョンは、システム開発者の1人であるハイネマンを尋ねる。プリコグ3人全員が同じ予知をするわけではなく、1人だけの少数意見=マイノリティ・リポートは削除される事を知る。
ジョンはプリコグの1人であるアガサを連れ出し、真実を追い求めるが……といったお話。
監督はスティーブン・スピルバーグさん、主演はトム・クルーズさんと来れば、絶対につまらなくならない保証すら感じさせるタッグですよね。
の、ハズなんですが……ストーリー(と言うよりテーマ)やビジュアルとか、いかにも映画的なのは分かるんです。けど、観終えてみると、あまりスッキリしないというか、カタルシス的なものを感じないんですよねぇ。
その一因となっているのは146分=約2時間半という長尺のせいかな? 2時間以内にキュッと収められる内容だったんじゃないかと思います。
ちなみに本作を観るのは生涯で3度目ですが、今やデジタルツールに囲まれながら管理される社会の恐怖云々なんて事よりも、犯人捜しのスリラーものとして、ようやく楽しめるようになりました。
始めはピンと来ない作品も、何回か観ていれば新しい発見も見い出せて面白く感じるものだなぁと実感。
本作は2002年の作品、今から20年近い前の作品ですが、SF的な、もしくはIT技術の描写には現在の基準で見ても目を見張るものがあります。
網膜認証によるセキュリティや、車の自動運転、オンラインによる情報の管理・伝達あたりは、そろそろ時代が追い付いていますが、手の動きのジェスチャーでオペレーションできるディスプレイももう実現化できそうですよね。
このディスプレイに関しては、公開当時はあのハンドジェスチャーがカッコイイと思ったものですが、改めて見直すと、消費カロリーがムダに高いだけで非効率的に思えますが…。
そんな先見の明を見い出していた本作には、まさかプリコグが映画製作に絡んでいたんでしょうか(笑)?
さらに20年後には、とっくに古い技術となっている描写がさらに増えるんでしょうね。
トム・クルーズさんはハッキリ言うまでもなく、永遠に正義のヒーローを演じられるイメージを持つスターの1人です。他にはジャッキー・チェンさんや古谷徹さんあたりですかね。
そんなトムさんが主役という時点で錯覚しがちですが、確度が高いとは言え、プリコグニション=予知能力という曖昧な超能力で見えたに過ぎない未来に則って、まだ犯罪に至っていない人を逮捕してしまうんだから、これを生粋の正義のヒーローと断言できる人は多くないと思うんですよ。
冒頭のエピソード、妻と間男の浮気真っ最中の現場に居合わせた夫が、二人の殺害を試みるところをジョン達が踏み込むわけですが、妻と間男はさて置かれ、夫はソッコー逮捕されてしまいます。
――この時点で不条理劇の臭いがしませんか?
さらに、超能力という人間臭い、極めてアナログなものをデジタル技術で管理するってのも、実にアンビバレントなシステムです。
現実とは少しズレた道徳観念が正義となってしまう世界が『ミステリーゾーン』的とも呼べる作品です。
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Blu-ray版は映像特典ギュウ詰めで、本編よりも長いパターンです。
そーいや、DVD版では吹き替え音声が2種類収録されていたんですよね、須賀貴匡さんと水樹奈々さんがジョンとアガサをそれぞれ担当したバージョンで。
ダブルキャストみたいで面白い企画だと思ったんだけど、こちらにはそのバージョンは含んでいません。