観た、『夜の大捜査線』 | Joon's blog

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『夜の大捜査線』を観ました。



ミシシッピ州のスパータという街で殺人事件が発生、駅にいたバージルが容疑者として署に連行される。
しかし、バージルはフィラデルフィアの殺人課の刑事である事が分かり、署長のギレスピーは渋い顔。
このスパータには黒人差別の風潮が根強く、黒人であるバージルに向けられる視線も例外ではなかった。
そんな街から早々に立ち去ろうとするバージルだったが、本署の命令に従い、渋々ながら捜査に協力する。
事あるごとに対立しながらも、その辣腕ぶりを目の当たりにし、徐々にバージルを認めるようになるギレスピー。
差別主義者の市民の妨害を受けながらも、バージル達は徐々に犯人を追い詰め……といったお話。

現在においても、ヘイトスピーチに始まる人種差別は一向になくなる気配はありませんが、世界規模での人種差別の代表と言えば黒人、今風に言えば有色人種ですね。
アメリカのミシシッピ州と聞いただけで人種差別の強い地域というイメージを持ってしまうのは、映画の影響でしょうかね、個人的にですが。

バージルは、殺人課のベテラン刑事。
そんな腕っこきの刑事が、大した事件も起こらない田舎町とは言え、捜査の陣頭指揮を執るとなれば、地元の人間とあっちゃ面白くない。
しかも、自分らが忌み嫌う黒人であればなおさらでしょう。
黒人差別を描いた作品の多くは黒人が白人に虐げられるのが定番ですが、本作の場合は白人よりも黒人の方が有能、つまりパワーバランスが黒人の方に傾いているのが本作の面白い点です。
バージルに対しギレスピーが憎しみを抱くのは、自分らには遠く及ばない知識を持っている嫉妬、
さらに見下すべき存在の黒人であるという屈辱のどちらか、いや、どちらもなんでしょうね。
いちいち的確、かつ理にかなっている事を言うんだから、ムカムカでストレスが溜まっている事でしょう(笑)。
ギレスピーのみならず、サブキャラの市民がバージルに向ける目つきも嫌な感じで、皆さんいい表情をしています。

白人にナメられるような隙を見せないバージルですが、その真骨頂であるのが、街の有力者であるエンディコットの温室のシーン。
黒人に殺人の容疑を掛けられ、ダブルで屈辱を味わわされたエンディコットがバージルの顔を引っぱたきますが、その後のバージルの対応に驚きました。
本来は同じ人間、お互い何をしても平等なはずですが、黒人が白人に対してああいう行動に走るのは、ありそうでないシチュエーション。
本作は67年の作品ですが、この頃の作品にしてはずいぶん思い切った演出に思えました。

終盤、ギレスピーの家でバージルと共に酔い潰れているシーンがありますが、ここは好きなシーンです。
顔を合わせればピリピリムードだった二人の間の溝が、完全に埋まってはいないけど(笑)浅くなってきているのが分かります。
一緒に飲むきっかけとなるシーンを省いているのが上手いですね。

犯人はまぁまぁ意外性のある人物でしたが、そこに辿り着く直前あたりがややスピーディーで困惑気味。
妊娠させられた娘が割り込んできたおかげで、チト話が複雑になってしまった感がありました。

いがみ合っていた二人が最終的に仲良くなってハッピーエンド、という展開はありがちですが、本作の場合はハッピーと呼べるほどの終わり方ではありません。かと言って、陰鬱な終わり方ではないけど。
バージルとギレスピーはお互いを認め合う関係になれたものの、もう会う事はないだろうと感じさせます。
本作には続編・続々編が存在する事だけは知っていますが、この二人を出すような愚挙はしていないと思いたいですね。

 

ムダに日本語吹き替え音声が2種収録されています。メンドくせー吹替オタクの努力の賜物ですね(笑)。
映像特典は予告のみ、トップメニューのないガッカリ仕様です。
トップメニューから"本編を再生"を押すのって、いざ鑑賞!って感じでテンション上がる瞬間なんだけどなぁ。