『富野に訊け!』を買いました。
いわゆる相談本で、答えてくれるのは富野由悠季さん。初代の『機動戦士ガンダム』の総監督を担当していた方です。
『ガンダム』が放送していた頃、一アニメ監督の相談本が発売されるような時代が来るとは、誰が想像できただろう…。
知る人は知ってるけど、富野さんは実に厳しい人です。
この本の帯を見る限り、かなりタカ的な発言をする人なのかな?と思われそうですが、あながち間違ってもいません。
相談者に対し、“単にあなたがだらしないだけ”“考えが甘い”“この相談に対する回答はありません”等々、取り付く島もありません(笑)。
ネット上における誹謗中傷や辛口コメンテーターなんて連中がチヤホヤされる昨今では、こういった人を罵る言動が受けてしまうんでしょうがね。
ただ、そんな厳しい言葉も中にはありますが、全ての回答には叱咤だけでなく激励もあります。相談=困り事に対し、親身になって現状打破の策を授けているんです。
「ガンダムを作ってただけのジジイに、そこまでデカい顔される筋合いはねぇ!」とか思っちゃう人も少なからずいるでしょう。
かつては自分も似たような事をやってきたからと、自分ら(の世代)がやってきたような無理難題を押し付ける。それを難しく感じていると「俺が若い頃には…」と、過去の武勇伝を偉そうに語り始めちゃうような年寄りにウンザリした経験、ありませんか?
昔の栄光にしがみついるだけの、前に進む事を放棄した老人にあーだこーだ言われるのが不愉快だし、そんな連中に反感を抱くようになるのは当然です。年上や年寄りに対しても警戒心を強めてしまいます。
けど、富野さんは御年70半ばにして、いまだ勉強を怠っていない点が尊敬に値します。
手っ取り早いところで、富野さんのインタビュー等を読んでいると稀に、あまり目にしない横文字とかがポンと出てきたり、IT関連も(それなりに)知っているし、“年寄りにはカンケーないから”の一言で済むような話題もよく知っています。
若者に勉強しろとか言いつつ、自らも老いてなお勉強をしている人の話であれば、もう少し耳を貸せますよね。
本著はアニメ専門誌『アニメージュ』に連載されているものを単行本化したもの。
そんな悩みをアニメ雑誌の一コーナーに投稿しちゃう?と思わせるような(笑)重い相談も中にはあるけど、多くは中高生=10代であれば悩んでしまうような内容。たまに、年齢にそぐわない相談をする、いい歳こいた相談者もいますが(笑)。
それに対し、冨野さんは遠慮なく答えていきます。
この場合の無遠慮とは、相手をボロクソに貶すという意味ではなく、実行するにはスゲー覚悟が必要な事や、やや難しい言葉を用いて打開策を提案します。
相手はガキだからと見下すのではなく、あくまで目線を合わせようとする姿勢が見えるんですよ。
けっこう多いじゃないですか、相手が苦悩しているのを逆手に取って自分にイニシアチブがあると曲解し、見下す事を前提に進んで相談に乗る連中。“教えてナントカ”とか“ナントカ知恵袋”とか(笑)。
それらに比べれば、遥かに親身になって考えてくれているのは一目瞭然です。
ただね~……個人的には、回答の全てを鵜呑みにして生きていくのは、若い人ほど不可能に近いんじゃないかと思うんです。
手っ取り早いところで、人間関係に関する相談であれば確実にケータイが登場するし、今時の中高生ならケータイを介したコミュニケーションは必須に近いでしょう。
「ケータイでしか繋がらない友達は真の友達とは呼べない!」とか、言うのは容易いけど、これを実行して気高い人間になれたとしても孤独確定です(笑)。
人間は一人で生きていけないという、人生の大前提を軽視する回答はハードル設定が高い気がします。
あくまで自分を磨くためにストイックに生きて行けるティーンなんて、まるで神童のようで、むしろイジメられるスキを与えているようなものかと。
自分が相談相手と同じ世代だったら?という想像が足りないのが、本著の短所です。
世の中、頼りになる相談相手は多々います。下手すれば年下にすらも。
そんな中の一人として、富野さんの意見に耳を傾けてみるのもアリなんじゃないでしょうか? 盲目的に信奉するのではなく、ね。
タイトルが、
![]() |
富野に訊け!! 〈怒りの赤〉篇
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と、
![]() |
富野に訊け!! 〈悟りの青〉篇
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の2種類ありますが、だからと言って『~<悟りの青>篇』の方が、やや回答がマイルドになっているかと思いきや、1ミリもブレていないので、ご安心を(笑)。
富野さんに叱られてみたい人は、ぜひ一読をおススメします。
少なくとも俺ッチは、ちょっぴり人生観が変わりましたよ。