鈴木敏文の「統計心理学」 勝見明 | 想像と創造を膨らませるビジネスチューインガム

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鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む (日経ビジネス人文庫 (か3-2))/勝見 明
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セブンイレブン、いい気分。このフレーズ、かなり有名ですが、この本を読んで単純に出てきたキャッチフレーズではないな、と思いました(この本にはこのフレーズのことは出ていません、念の為)。


鈴木敏文という人がかなりの経営のプロだというのは伝え聞いて知っていましたが、正直この本を読むまでは自分の中でかなり情報が少なく、知らないのも同然でした。


この本は鈴木敏文氏の経営に対する考え方の一端をうかがいしることができるインタビューものです。それが、まとめられて金言集として書き綴られているのですが、「なるほど」と思うことや、目からウロコのことが多かったです。


そもそも僕の中ではコンビニというのはそれほど攻めの経営という感じがなく、どちらかというとある程度の来客予想に対してある程度の品揃えをして回るような、そんな印象を持っていました。


当たり前ですが、実際は違いますね。この本を読むとよくわかりますし、コンビニは非常に面白い、そしてその分難しいスタイルなのだな、と強く関心を持ちました。



鈴木氏の金言の中で僕が考えさせられるな、と思ったものをいくつか紹介すると・・・



・「売り手市場」の経験で「買い手市場」を乗り切ろうとするから無理がある。


 これは完売でよろこんでいるのは売り手発想で、買えなかったお客様のことを考えなければいけない。その人たちは二度と来店しないお客様になるかも知れないのだから。



・ABC分析の本当のようなウソ


 Aランクのある商品も来客頻度によってはただ飽きられる商品になってしまうことがある。これは過去のデータでそこから未来が自動的に創出されることはない。



 あまり詳しく書くと、この本を読む面白みもなくなるので、後は金言だけを少々・・・



・こんなはずじゃなかったと思うのは、ただの勘違い


・売上上位の商品を置いておくと、やがて全体の売上が下がり始める


・今は過去の経験則より”思いつき"の方が大切な時代


・売り手にとって「非合理」な陳列の方が売上が増える


・現場主義には「本当のようなウソ」がある


・「冷やし中華」がなぜ、冬でも売れるのか?


・数字のつじつまが合いすぎるのは逆におかしいと思え



などなど。興味をそそられるだけでなく、なるほど納得なことが多いです。



それにしても今は当たり前の専用トラックによる他社商品同士の共同運送も、コンビニが出来た当時は70台ぐらいが個別に運んでいたとか。そのままの状態だったら絶対に今のようにコンビニは発展しなかったでしょうね。今では当たり前になっている非常識なことをやる、これはなかなか凄いことです。


セブンイレブンのドミナント戦略はいわばそうした配送メリットなどを高めるためにやむを得ず行ってきたところがあるのは確かなのですが、それは確かに戦略になっている。背に腹代えられなくてもメリットがきちんと生まれて、結果うまくいっているんですから。


こうしたドミナント戦略は結果、あちこちで目にするような印象を与えて安心を生むといいます。そういわれてみれば僕の家の近くにもセブンは割と近いところにあり、なんとなく利用しやすい印象があります。そして本にも書かれていますが、安心を印象づけるために、身なりがきちんとした人を雇う、あいさつをきちんとするというのが、確かにセブンイレブンにはあります。


人は見かけで判断してはいけない、といいますが、モノを買うという行為の中ではやはりその部分は実は大きいのかな、とも思います。


コンビニとは業態が違うから、といって読まず嫌いはちょっと損かな、と思える一冊です。モノを売りたいと思っている人は必読です。