5/16に芦屋ルナホールで、讀賣読書サロンの吉村萬壱さんの講演会へ行って来ました。
今年、8回目の作家講演会となります。
吉村さんは、怪作『クチュクチュバーン』でマニアの間では、
知る人ぞ知る芥川賞作家だが、今まで座談会へ行く機会は一度あったけど、
本格的な講演を聞くのは、今回が初めてだ。
芦屋サロンは、基本、年二回あるうちの両方とも出来る限り参加するようにしてるけど、
今回がたぶん最も参加者が少なくて、空席が目立った。
印象に残ったのは、講演内容よりも、今回の讀賣新聞掲載の掌編(原稿用紙10枚)そのものだった。イジメ問題を扱ったお涙頂戴路線かな、と思わせて、
どんどん予想外な展開になる。
最初に設定された条件が、どんどん違うシチュエーションを生んでいく。
これは、ある意味、『クチュクチュバーン』的な変化で、
どうなる、どうなると読者も巻き込んで行く感じがする。
今回の掌編は、YouTubeのある歌手がファンの話に涙ながらに共感するイベント風景を観て、
「涙って、そんなに次から次と出るものかな」と感じて、
思いついたのだそうだ。
なんとなく、吉村さんの発想法が分かった気がした。
曰く、
「完全な善と悪は、人間には存在せず、違うのは状況だ。
人間を悪にするのは、状況じゃないかな」
「小説の面白さは、1行で様々なことが楽しめること。
怒られているときに、膝小僧とか全く違うものを観て、発見するのがリアリティでもあるし、
ステレオタイプになることを避けられる」
「小説を書く際に、心がけているのは本当のことを書こう、と。
汚いものの中に、本当に美しいものがある」
大きな収穫ではなかったけど、少し疑問が解けた講演会でした。