◆前回のあらすじ◆
前回——病院代を「必ず働いて返す」と言った彼女。
「お金目的だと思われたくない」という言葉と、消えない私の疑い。
そして、療養中の彼女は、まだ宙づりの状態だった。
【霧の正体】
第6話のあと、事態は落ち着くどころではなかった。
たくさんの事件が、立て続けに彼女を襲った。
一つは、おばあちゃんの形見のネックレスをめぐる問題。
詳しいことは、ここには書かない。
ただ、彼女にとって大切な、取り返しのつかない意味を持つものだった、とだけ記しておく。
そして、もう一つ——強盗である。
詳細は省く。
ただ、その被害の中に、彼女のスマートフォンも含まれていた。
家族の写真。
私との思い出。
彼女の生活の記録そのものが、すべて、その一台の中にあった。
それが、丸ごと消えた。
彼女は、また深い傷を負った。
私に、できることは少ない。
海の向こうから、励ますことしかできない。
何度も、何度も、それしかできない自分に、もどかしさを覚える。
そして、皮肉なことに、彼女が傷ついている、まさにその時に、私たちは連絡すら取れなくなった。
携帯が、手元にないのだから。
彼女は、友達の古い携帯を借りて、連絡をくれた。
警察に被害届を出しに行った、その後で、電話もくれた。
電話の向こうで、彼女は泣いていた。
ただ、そのテレビ電話の映像は、ひどく画質が悪かった。
全体に、白いもやがかかっているような映像だった。
——今日は、すごい霧だな。
その時の私は、その程度にしか思っていなかった。
彼女の住む場所の、その日の天気の話だと。
後になって知る。
霧ではなかった。
友達から借りた携帯が、あまりに古く、カメラのレンズがぼやけていただけだった。
その後に送られてくる写真も、全部、同じように白く霞んでいた。
新しい携帯を買う余裕すら、今の彼女にはない。
私が見ていたのは、天候ではなく、彼女の今の生活そのものだったのだ。
◆次回予告◆
フィリピン編 第8話——それでも、彼女には楽しみがあった。
日本で一緒に働いていた友達との再会。
この物語は全4部+続章の実録エッセイです。
日本編(第3部)は結末が有料。フィリピン編は、いまのところ無料で公開しています。
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