◆前回のあらすじ◆
前回——強盗と、携帯の紛失。
彼女の思い出が、丸ごと消えた。
テレビ電話に映った「霧」の正体は、借り物の古い携帯のぼやけたレンズだった。
【また、パロパロ認定】
事件続きの中でも、彼女には楽しみがあった。
日本で一緒に働いていた友達との、再会である。
日程が決まった。
みんな、遠くから集まってくれるという。
彼女は私に、頼み事をしてきた。
マンションを、取ってほしい、と。
彼女が元気になるなら。
私は、2泊分の予約をしてあげた。
とても、喜んでいた。
みんなと会うには、何かとお金も要るだろう。
そう思って、少しだけ、お小遣いも送金した。
集まる友達も、私のことをみんな知っていて、とても喜んでくれたそうだ。
翌日、ふと思いついた。
日本から、Grabで、彼女たちに食事を送ろう。
彼女は喜んで、ピザとチキンを頼んだ。
みんなでテキーラもどうか、という話も出たが、結局、ワインに落ち着いたらしい。
友達の携帯を借りて、彼女も電話をくれた。
2時間ほど、話した。
久しぶりに、嬉しい時間だった。
——ところが。
最後にもう一度Grabを開いたとき、配達先の住所が、なぜかニノイ・アキノ国際空港になっていることに気づいた。
正確には、配達が始まる前だった。
慌てて、彼女と一緒に、宛先を直した。
事なきを得た形である。
もし本当に空港に届いていたら、どんな顔で受け取りに行けばいいのか、想像もつかない。
翌日の日中、彼女から「ランドリーに行ってくる」と電話があった。
——やっぱり、かわいいな。
たったそれだけの報告に、私はそう思ってしまう。
そしてこの一連の出来事——海の向こうから、Grabでピザを送るという行為——が、友達の間で話題になったらしい。
「なんで、そんなことができるんだ」
そして、また、認定されてしまった。
パロパロ、と。
幕間で書いた、あの呼び名である。
花から花へ飛び回る男、という意味だったはずのその言葉が、今度は違う意味で私に戻ってきた。
海の向こうから、なんでもかんでも世話を焼く、身軽な男。
同じ「パロパロ」でも、意味はずいぶん、様変わりしたものだ。
◆次回予告◆
フィリピン編 第9話——決まっていた渡航が、私の仕事の都合で流れる。
そして、お金に切羽詰まった彼女が、ついに復職を決める。
そこで持ちかけられた、ある「相談」。
この物語は全4部+続章の実録エッセイです。
日本編(第3部)は結末が有料。フィリピン編は、いまのところ無料で公開しています。
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