◆前回のあらすじ◆
幕間のあらすじ——Z、A、Mのすべてを消した男は、羽を畳もうと決めた。
理由はただ一つ、たった一人の女性のためだった。
最終部の舞台は、意外にも地元の、通い慣れた店である。
【泥酔の男、記憶のない出会い】
2026年、春。
会議の日だった。
会議の日というのは、つまり飲む日である。
私はその夜、泥酔していた。
どのくらい泥酔していたかというと、その夜のことをほぼ覚えていないくらいである。
ただ、LINEを交換した記憶だけは、うっすらとある。
翌朝スマホを見ると、案の定、知らないLINEの友達が増えていた。
地元の店の、新しい子らしい。
Zの店まで90分、Aの街まで4時間走った男の物語の最終部は、家の近所の、通い慣れた地元の店から始まる。
遠くへ遠くへ行った男の答えが、いちばん近いところにあったというのは、出来の悪い寓話のようだが、事実だから仕方ない。
その店に、当時の私の指名はいなかった。
初対面の新人と何を話したのか、何一つ覚えていないまま、LINEだけはきっちり交換していた。
偉い、私。
Aの時、交換し忘れて遠い街まで二度も往復した男の、これが学習の成果である。
素面の脳が忘れても、体が覚えていた。
顔は、なんとなく覚えていた。
写真つきのメッセージがすぐに来て、それでようやく像がはっきりした。
友達は「かわいかったじゃん」と言った。
私はといえば——正直、そこまで何も思わなかった。
もう一回くらい会ってみたいな。
その程度だった。
そこから、すぐにLINEのやり取りが始まった。
おはよう、いま何してる、寒いですね。
ひらがなの多い、たわいのない交換である。
Zは5分で沸騰した。
Aは30分で圧倒された。
Gは、ぬるかった。
この物語で一番温度の低い始まりが、一番遠くまで行くことになる。
◆次回予告◆
第2話「chan」——地元の店で10年、kuya(お兄さん)以外の呼ばれ方をしたことがなかった男が、来日2日目のGから受け取った、二文字。
フォローしておくと続きを見逃しません。
この物語は全4部の実録エッセイです。全話無料で公開しています。
▼noteで続きを読む
https://note.com/sansokume
