「残念だったな。もう、遅い」
「ッ…!」
気付いた時には、周囲は魔物で囲まれていた。その奥にいる男は、くつくつと不気味な笑みを漏らす。
「まさか、お前のような小僧がマスターだったとはな。知らせてくれて、礼を言うぞ、女」
「く…ッ!」
男の言葉に、セイルは悔しそうに歯噛みする。だが、いずれは知れたことだ。どうせ、姉の言うことに従う気など、毛頭ない。
「さぁ、ガイア・リードを渡せ」
「断る!」
手を差し出す男にきっぱりと言い放ち、シェオルは剣を抜く。後ろで、セイルの回復を終えたらしいレット、そして、ザグも、ガイアを構えるのがわかった。
「ほぉ、ガイア・リードを使わずに、私に勝とうというのか?」
「ンなの、やってみなきゃわかンねェだろ!」
言い放つが早いか、シェオルは手近な敵に斬り込んでいく。狼のような魔獣は、飛びかかってきたところを払いのけ、次いで、レットの援護射撃で吹き飛んできた魔物を袈裟斬りに伏す。
ザグも負けてはおらず、”レオル=アルマ”を振るうと、それだけで周囲の敵を弾き飛ばし、一掃する。
「ほぉ…」
三人の動きに、男は、本当にそう思っているのかどうか怪しい感嘆の声を漏らす。だが、深くかぶったフードの間から、嘲笑のような笑みが見えたような気がした。
「何がおかしい!」
余裕たっぷりの男の反応に、思わず叫ぶシェオル。だが、今度は、男は声を上げて笑った。
「貴様等が、あまりに未熟だからだ」
「何…?!」
「シェオル!」
挑発に乗って、飛び出そうととしたのを止めたのは、この中でも一番冷静なレットだった。次いで、ザグも、目で、やめておけ、と訴えてくる。
「この男、ただ者じゃない。ちょっと前に、噂になったろ? 黒い悪魔の話」
「え…?」
唐突に聞かされたフレーズに、思わずシェオルは聞き返してしまう。だが、彼も、自警団に身をおく姉を持ち、自分もその手伝いをする傍ら、名前だけは知っていた。本名不明の指名手配犯、通称、黒い悪魔。
「なるほど。名前は通っていると見える」
そう言い、男は、すっと手を前に差し出した。
「さぁ、わかったのなら、ガイア・リードを渡せ。さもなくば、村にさらなる被害を与えることになるぞ?」
明らかに楽しんでいる口調で、黒い悪魔が笑う。だが、何と言われても、ガイア・リードは渡せない。それに、
「村も、村人も、これ以上、傷つけさせてたまるか!!」
叫んで、シェオルは、魔物の群を越え、一直線に男の元へ走り込む。
「シェオル!」
勢い余った幼なじみを救うべく、レットとザグも、それぞれのガイアで、魔獣達を退けながら、シェオルの後を追う。
だが、