王子様とお姫様。 12 | 気まぐれ図書館

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 血と、硝煙の匂い。


 そんなもの、もうとっくに慣れたものだ。あの、物語のような生活にはなかった、現実。


 それを、まざまざと見せつけられ、帰る場所は、ただ一つ。


「よくやったな、金狼(ゼムファング)、いや、シルエシカ」

「どっちでも良いさ」


 不敵な笑みを浮かべる男を前に、俺は吐き捨てるように言った。


 何気なく自分の手を見てみれば、当然ながら、そこには何もない。だが、妙な現実感を伴っているようで、吐き気がした。


「だが、まさか、あそこで殺されることになろうとはな。お前でなければ、成しえなかっただろう」

「やめろよ。不死の体なんて、冗談じゃないぜ。あんたのせいだろ、ウォン老師」


 満足げに言う男を睨みつければ、相手は素知らぬ顔。全く、誰のせいだ、と、今度は胸中で悪態をついた。


 ここ“ウロボロス”は、アズリーのいた組織“ブラック・ヘブン”とは同業者。だが、その決定的な違いは、ウォン博士を味方にしていることだった。

 当然ながら、不死の力に対抗できる者は“ブラック・ヘブン”の中にはいない。


『人は、決まった時間があるから、精一杯生きようって思えるんだよ。不死なんて、意味ない』


 唐突に、姫の言葉を思い出す。


 ならば、あの夜死んでいった“ブラック・ヘブン”の人間達は、意味があったというのだろうか?


「シルエシカ」


 しん、としてしまった部屋の中に、響く静かな声。それは、彼の養父であり、この組織“ウロボロス”のボスのもの。


「次の任務に、赴いてもらうぞ」

「あぁ、そうだな…」


 気のない返事をしてみせてから、すっと席を立つ。俺からしてみれば、ここまでは予定通りだ。うまくいきすぎて、思わず笑みがこぼれる程に。


「俺の腕を持ってすれば、軽いもんさ。こんなこともね」

「何…?」


 ゼロスが言い終わるが早いか、背後に現れた、黒服に身を包んだ女性。油断していたこともあって、彼が振り向く暇もなく、脳天に銃が撃ち込まれた。


「ひぃ…ッ!」


 彼にとっては予想外の展開に、情けない悲鳴を上げるウォン老師。


 その間に、彼女はゼロスに埋め込まれていた結晶体を割っていた。


「さぁ、懺悔の時間だぜ? ウォン老師」


 言って、俺は銃を構える。幾度となく見てきた、目で、助けてくれと懇願する姿。


 だが、俺には、そんなもの、通用するはずもない。


「無駄だ。誰のせいで、何年殺し屋をやってきたと思ってる?」


 言う俺の隣に、先刻の女性が立つ。その姿に、ウォン老師は思いのほか狼狽した。


「アズリー=アズラエル…」

「さよなら、ウォン老師」


 2人同時に、そう言って。


 俺は、躊躇なく引き金を引いた。