王子様とお姫様。 11 | 気まぐれ図書館

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 ゆっくりと姫を見下ろし、俺はようやく一息をついた。


 始めから、狙いは彼女だった。


 アズリー=アズラエル。


 名前も、任務を受けた時に聞いていて知っていた。もちろん、素性も。

 だが、いざ、任務の日、彼女は、雨の中、ボロボロになって俺の前に現れた。


 正直、拍子抜けだった。


 敵対勢力の有能な殺し屋と聞いていた女が、いかにも命からがら逃げてきました、という風体で自分の目の前にいたのだから。


 状況は、正直こちらに有利だった。

 相手からは、まるで殺気が感じられない。本気の彼女なら、果たして、相討ちに出来たかどうか。

 だが、俺は、おもしろいゲームを思いついてしまった。


 殺す前に、彼女のことを調べてみよう。


 幼い頃から殺人兵器として育てられた女だ。日常生活、というものをどう過ごすのか、少し興味が惹かれた。


 それだけのはずだった。


 お互い、語れない事情があったから、詮索無用という彼女の申し出はありがたかった。それをそっくり利用して、王子と姫なんて馬鹿げた茶番を演じてみせた。


 なのに、日が経つに連れ、アズリーは普通の女の顔を見せ始めた。


 これが、本当に暗殺者なのか?


 演技している俺とは違い、警戒心を完全に捨て去った女。ある意味、興味深かった。

 俺が、夜、こっそり別の任務をこなしていることも気付かない。週1回仕事と言って出ていく時も、普通に見送っていた。本当は、この任務の報告をしに、本部へ戻っていたというのに。


 俺は、結局どうしたかったんだろう?


 自問してももう遅い。だが、敵対組織の幹部のエルミナを始末できて、結果オーライだろう。


「姫…」


 思わず、声に出していた。彼女も、こんなことにならなければ、あの生活を、続けられたかもしれないのに。


「…行くか」


 破かれた服の代わりに、アズリーの着ていたコートを羽織り、俺はエルミナの銃を手にする。


 夜は、今始まったばかりだ。