惨状が、目の前に広がっている。慣れた光景とは言え、気持ちの良いものではなかった。
それは、彼女も同じようだ。
「終わったね…」
「あぁ」
思わず、呟くアズリー。そんな彼女に、俺も、頷くことしか出来なかった。
エルミナを殺した後、俺は、アズリーに麻酔銃を撃ち込んだ。全ては、彼女を殺した、と、ゼロス達に錯覚させるため。そして、その計画は、こうして実行した。
「エルミナに捕まった時は、正直どうしようかと思ったけれど。結果オーライだったね」
「あぁ。おかげで“ブラックヘブン”は壊滅」
「こっちも、首尾よく終わったしね」
そう言って、どこか悲しげな表情で、アズリーは微笑んでみせた。
俺達は、あの生活を続けながら、ひそかに、お互い恨みを持つ組織に復讐することを決めた。
“ブラックヘブン”を抜け出したかったアズリー。
不死の体に勝手に改造され、操られるままに人殺しをさせていた“ウロボロス”の唯一の殺し屋であった、俺。
アレウッドの闇組織の二大勢力は、今日、この瞬間に壊滅したことになる。
ただ、本当の意味で壊滅を迎えるのはこれからだった。
「次は、私達、だね…」
「あぁ…」
この作戦を実行しようと決めた時、約束をしたのだ。
組織の壊滅は、この街から、暗殺者を失くすことにある。それは、もちろんながら、俺達も含まれていた。
「これで、本当にサヨナラだな」
あの時は、お互い、生きていることを想定しての、別れのシーンを演じただけだ。だが、今度は違う。本当に、これがフィナーレだ。
「楽しかったよ、姫」
「うん、良い夢を見させてくれて、ありがとう、王子」
そう言って、笑い合い、お互い、銃を手にする。アズリーの銃は俺の腕の結晶を、俺の銃はアズリーの心臓を、今度こそ間違いなく捉えていた。
「また、地獄で逢えたら、その時は、また、王子、って呼ばせて」
「あぁ…」
そんなもの、あるわけないのに。
どこまでも夢見がちな姫に、思わず苦笑する。だが、それを信じてみるのも悪くない。
「さよなら、姫」
「さよなら、王子」
二人、短い言葉を交わして。
お互い、何のためらいもなく、同時に、引き金を引いた。