今日は、週に一度、アレウッドの街に買い物に行く日だった。
俺達の生活費は、全て俺が担っている。
安定した生活。
それ故、危うさも秘めた生活。
きっと、彼女は気付いていない。
知らなくても良い事実がある、この世の中には、いくらでも。
そんなことを思っていると、
“次のニュースです”
不意に、目にとまった、店頭のテレビ。そこには、高名な学者の姿。
「王子?」
不意に、足を止めた俺に、姫が呼びかけてきたが、思わず無視して、テレビを見ていた。
“以前より問題になっておりました、不老不死の実験を重ねてきたウォン博士に対し、ついに倫理上の問題があるとして、宗教団体がウォン博士の実験を中止するよう、抗議活動を起こしました。なお、ウォン博士は、ラットでの実験で、不死についての研究を成功させており…”
「こんなことがまかり通るなんて、世も末だな」
「え…?」
不意に、俺はテレビを見ながらそんなことを呟く。
もちろん、俺達のことなんか知らずに、ニュースは報道を続けている。ウォン博士がどんな実験をしてきたのかを。
「いや、変なことを言ったな。悪い、忘れてくれ」
何だ、この感情は。
思わず自問しても、答えなどでない。
わかりきっていたはずなのに、自分の愚かさに、思わず歯噛みする。
そんな俺の胸中を知ってか知らずか、不意に、姫が口を開いた。
「人は、決まった時間があるから、精一杯生きようって思えるんだよ。不死なんて、意味ない」
俺に同調したつもりで言ってみたらしい台詞に、俺は、思わず驚いてしまった。不意に、胸に去来する寂寥感。
「そうだな、姫も、たまには良いことを言うな?」
「たまには、は、余計!」
自分の気持ちを誤魔化すように、茶化して言う俺の言葉に、姫は思わず怒鳴るように言うが、その後は、2人一緒に笑ってしまっていた。
「うちにはテレビがないからなぁ。あったら、姫も、もう少し教養を身につけてくれるんだろうけど。料理とか」
「もう、王子、しつこい!」
笑い合って、冗談を言って。
危ういけれど、少しずつ安定してきている。
何となく、そう思った。