王子様とお姫様。 2 | 気まぐれ図書館

気まぐれ図書館

気ままに綴っていきます。
主に、サイト更新関連かと。
社会人しながら、専門で小説の勉強中です^^

 もう、それは、いつのまにか習慣と化していた。

「おはよ、姫」

 その声と同時に、目を覚ます彼女。そんな朝。

「おはよ、王子」

 そして、お決まりの返事。

 俺達が出会って、数カ月の時が流れた。
 けれど、俺達は、お互い、名前を知らない。過去も、何もかも。 そういうフリをしている。

 知らない方が良いこともある、それは、俺の口癖。

 人間知られたくないことの一つや二つある、それは、姫のモットー。

 そうして、俺達の奇妙な同居生活が始まった。




 元はと言えば、姫の言葉がきっかけだった。

『助けてくれたのは感謝してる。でも、語りたくないことだってあるの』

 そう言った、姫を俺は思わず凝視してしまった。まさか、そっちから申し出てくれるなんてな。

『なら、俺も何も聞かない。その代わり、俺も、何も言わない。これで、フェアだろ?』

 正直、吃驚(びっくり)したのだろう。

 隠されたなら知りたくなるのが人の道理、なんて言い方もするが、少なくとも、それはお互いにメリットがあった。
 そして、俺は、さらに言葉を続ける。

『けれど、俺は、君に興味があるんだ。行くとこがないなら、ここに匿われてみないか?』

 そんなことを、さらっと言ってのけた。

 素性もわからない、自分だってどんな目に遭うかわからない、そんな女を、自ら匿おうだなんて、普通ならあり得ない。

 そう、普通なら。

 だが、彼女にとって、それがありがたい申し出だったのは事実で、きっと、ここを出たとして、他にあてもなく、何も聞かないでいてくれるなら、と、それを受けたのは姫の方。

 どうせ、何も言わないのなら、名前も聞かない、と言い出したのは、俺の方だった。たまには、こんな生活も悪くない、そう思っている自分がいて、胸中で苦笑した。 それが、今の俺達の日常。